第24話「お家デート とドキドキ」
テストまであと一週間。
放課後の廊下で、
白石乃愛が僕の袖をそっとつまんだ。
「ねぇ孝介……
今日、うちで一緒に勉強しない?」
「乃愛の家で?」
「う、うん……
お父さんとお母さん、今日は帰り遅いから……
静かに勉強できると思うの」
(……それ、絶対静かにならないやつだろ)
でも乃愛の瞳は真剣で、
少しだけ期待に揺れていた。
「いいよ。行こうか」
「っ……!
じゃ、じゃあ準備してくるね!」
乃愛は嬉しそうに走っていった。
白石家の玄関をくぐると、
ほんのり甘い香りがした。
「孝介、どうぞ。
リビングで勉強しよ?」
「お邪魔します」
乃愛はエプロンをつけて、
キッチンに向かった。
「お茶淹れるね。
孝介、座ってて」
「ありがとう」
乃愛は慣れた手つきでお茶を淹れ、
僕の前にそっと置いた。
「はい、どうぞ」
「乃愛って……
こういうの、すごく似合うよな」
「えっ……!
そ、そんなこと……」
乃愛は耳まで赤くなった。
二人でテーブルに向かい、
ノートを広げる。
「じゃあ、まず数学からやろっか」
「おう」
しばらくは真面目に勉強していた。
……が。
「孝介、ここわかる?」
乃愛が僕のノートを覗き込む。
距離が近い。
近すぎる。
髪が肩に触れる。
甘い香りがする。
(……集中できるわけないだろ)
「ここはね、こうやって……」
乃愛は僕の手を取って、
シャーペンの動きを導く。
「……乃愛」
「ん?」
「近い」
「っ……!」
乃愛は慌てて離れ、
顔を真っ赤にした。
「ご、ごめん……!
つい……」
「いや、嫌じゃないけど」
「っ……!」
乃愛はさらに赤くなり、
膝の上で手をぎゅっと握った。
一時間ほど勉強したあと、
乃愛が立ち上がった。
「ちょっと休憩しよ?
お菓子持ってくるね」
「助かる」
乃愛はクッキーと紅茶を持ってきて、
僕の隣に座った。
「ねぇ孝介……
今日、来てくれて嬉しい」
「俺も。
乃愛と一緒だと、勉強も楽しいよ」
「ほんと……?」
乃愛は嬉しそうに微笑み、
僕の肩にそっと寄りかかった。
「……孝介の隣、落ち着く」
「俺もだよ」
乃愛は照れながら、
僕の左手をそっと握った。
「ねぇ……
テスト終わったら、また一緒にどこか行こうね」
「行こう。どこでも」
乃愛は嬉しそうに笑った。
休憩を終えて勉強を再開すると、
乃愛は真剣な顔で問題を解き始めた。
「孝介、ここできたよ!」
「お、やるじゃん」
「えへへ……
孝介が教えてくれたからだよ」
乃愛は誇らしげに胸を張った。
その姿が可愛くて、
思わず頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
「っ……!
な、撫でられると……
嬉しいけど……恥ずかしい……」
乃愛は顔を赤くしながら、
僕の手にそっと触れた。
「……もっと撫でてほしいけど……
テスト勉強、終わってからね?」
「じゃあ、頑張らないとな」
「うん……!
二人でがんばろ?」
勉強を終え、
帰り支度をして玄関に向かう。
「今日はありがとう、孝介」
「こちらこそ。
また一緒に勉強しような」
乃愛は少しだけ迷ってから、
僕の袖をつまんだ。
「……ねぇ孝介」
「ん?」
「テスト終わったら……
“デート”しよ?」
「もちろん」
乃愛は嬉しそうに微笑み、
小さく言った。
「……大好き」
その声は、
勉強よりずっと心に響いた。




