第21話「体育祭本番-後半戦-」
昼休みが終わり、
いよいよ体育祭のクライマックス――
クラス対抗リレー
が始まろうとしていた。
校庭の空気が一気に引き締まる。
僕――早見孝介は、
アンカーとしてスタート位置の後方に立ち、
深呼吸をした。
(絶対に勝つ……)
そのとき。
「孝介!」
観客席から声が飛んだ。
白石乃愛が、
水色のリボンを揺らしながら手を振っていた。
「がんばって……!
誰よりも応援してるから!」
その声だけで、
胸が熱くなる。
「位置について――よーい……スタート!」
第一走者たちが一斉に走り出す。
僕のクラスは――
3位スタート。
「やばい、前のクラス速いぞ!」
「でもまだ大丈夫だ!」
第二走者にバトンが渡る。
順位は変わらず 3位。
第三走者が走り出す。
「いけー!」
「追いつけー!」
しかし――
2位との差が広がる。
(……このままじゃ厳しいな)
でも、焦りはなかった。
アンカーの僕がいる。
乃愛が応援してくれている。
それだけで十分だった。
「アンカー準備!」
僕はスタートラインに立ち、
深く息を吸った。
第三走者がこちらへ向かってくる。
「早見!! 頼んだ!!」
バトンが渡る。
その瞬間――
僕のクラスは2位。
1位とは約5メートル差。
(追いつける……!)
走り出した瞬間、
風が頬を切る。
足が地面を蹴るたびに、
世界が後ろへ流れていく。
観客席から声が飛ぶ。
「早見いけー!!」
「追いつけ!!」
そして――
「孝介ーーー!!
がんばってーーー!!」
乃愛の声だ。
その声が、
僕の背中を強く押した。
(乃愛……見ててくれ)
◆5 ラストスパート、僅差の勝負
残り半周。
差はまだ3メートル。
(まだいける……!)
残り100メートル。
差は2メートル。
(追いつく……!)
残り50メートル。
差は1メートル。
観客席がどよめく。
「早見が追いついた!!」
「いけーー!!」
乃愛の声が響く。
「孝介ーーー!!
大好きーーー!!
がんばってーーー!!」
(……っ!!)
最後の力を振り絞る。
残り10メートル。
肩が並ぶ。
残り5メートル。
僕は前へ体を倒し――
ゴールテープを切った。
「1位、2組ーーー!!」
アナウンスが響く。
クラスメイトたちが駆け寄ってくる。
「早見!! やった!!」
「お前すげぇよ!!」
「アンカー神!!」
僕は息を切らしながら笑った。
(……勝った)
そのとき。
「孝介!!」
乃愛が駆け寄ってきて、
僕の胸に飛び込んできた。
「すごかった……!
本当に……本当にかっこよかった……!」
「乃愛の声が聞こえたからだよ」
乃愛は顔を赤くしながら、
僕の胸にぎゅっとしがみついた。
◆7 閉会式、そして……
夕方。
閉会式が始まる。
「総合優勝は……2組!!」
僕たちのクラスが優勝した。
歓声が上がる。
乃愛は僕の隣で、
嬉しそうに拍手していた。
「孝介……
今日の孝介、ずっとかっこよかったよ」
「乃愛が応援してくれたからな」
乃愛は照れながら、
僕の左手をそっと握った。
「……来年も、再来年も……
ずっと一緒に体育祭、出ようね」
「もちろんだよ」
夕焼けの校庭で、
二人の影が寄り添うように伸びていた。




