第20話「昼休み、二人だけの時間」
借り物競争で
「将来〇〇の妻または夫になりたい人」
という爆弾ワードを引き当てた乃愛。
僕――早見孝介は、
そのお題で乃愛に手を引かれ、
二人でゴールした。
競技が終わったあとも、
クラスメイトたちはずっと騒いでいた。
「白石さん、攻めすぎ!」
「早見、もう逃げられねぇな!」
「青春かよ……!」
乃愛は顔を真っ赤にして、
僕の袖をつまんでいた。
「孝介……ごめんね……
あんなお題、私もびっくりしたの……」
「いや、嬉しかったよ」
「っ……!」
乃愛はさらに赤くなった。
昼休みになると、
クラスメイトたちはテントの下でワイワイ騒ぎながら弁当を広げていた。
「早見ー! 一緒に食おうぜ!」
「白石さんも来いよー!」
そんな声を背に、
乃愛が僕の袖をそっと引いた。
「……孝介。
ちょっと、来てほしい場所があるの」
「どこ?」
「いいから……ね?」
乃愛は僕の手を軽く握り、
校舎裏の静かな場所へ連れていった。
校舎裏は、
体育祭の喧騒が嘘みたいに静かだった。
乃愛はお弁当を広げ、
少し照れながら言った。
「……孝介のために作ったの。
食べてくれる?」
「もちろん」
乃愛は嬉しそうに微笑み、
箸を持った。
「じゃあ……はい、あーん」
「……またか」
「だって、孝介の右腕、まだ完全じゃないでしょ?
はい、あーん」
「……あーん」
乃愛はくすっと笑った。
「孝介、かわいい」
「かわいくはないだろ」
「かわいいよ。
私だけが知ってる孝介のかわいさ」
そんなこと言われたら、
顔が熱くなるに決まっている。
食べ終わると、
乃愛は少しだけ真剣な表情になった。
「ねぇ孝介……
さっきのお題……
ほんとは、すごく恥ずかしかったの」
「だろうな」
「でもね……
“孝介じゃなきゃだめ”って思ったのは本当だよ」
乃愛は僕の左手をそっと握った。
「将来のことなんて、まだわからないけど……
私は……孝介と一緒にいたい」
胸が熱くなる。
「俺もだよ。
乃愛と一緒にいたい」
乃愛は嬉しそうに微笑んだ。
チャイムが鳴り、
昼休みが終わる。
「そろそろ戻らないとね」
乃愛は立ち上がり、
僕の手を離さずに言った。
「午後は……孝介のリレーだよね」
「ああ」
「絶対に応援するから。
誰よりも大きな声で」
「頼りにしてるよ」
乃愛は照れながら、
僕の肩にそっと頭を寄せた。
「……孝介、がんばってね」
その一言で、
午後のレースに向けて気持ちが一気に高まった。




