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第338話:VS.【神に似た者】ミカエル① / 〜Angel of Order〜


「ミカエル……!! 戦艦ラストアークはお前達には渡さないぞ!!」


「来たわね、ラムダ=エンシェント……! 此処まで案内ご苦労様♡ トネリコ=アルカンシェルから伝言よ――――『潔く死ぬといい、骨は拾ってあげる』だってさぁ! きゃははは、じゃあ殺すわね♡」



 ――――アルカ・ナディア氷界域、戦艦ラストアークの秘密基地。斜行式の昇降機エレベーターで地上に登り、外へと飛び出した俺たちを待ち構えていたのは【大天使アーク・エンジェル】ミカエル率いる機械天使ティタノマキナの大軍、その数3000機。


 対する俺たちの数は56名、少しでも腕に覚えがある者を引き連れての総数だ。まったく数が足りていない。一人で50機倒してもまだ倒し切れない程の戦力差だ。それを理解し、俺たちに押し勝てると判断したのか、ミカエルは此方こちらを見下したような勝ち誇った笑みを浮かべている。


 そして、ミカエルの思惑通り、この戦いは俺たちにとっては今まで以上に困難なものになるだろう。


 俺たちラストアーク騎士団側の勝利条件は『戦艦ラストアークの起動』、対するミカエル達の勝利条件は『戦艦ラストアークの奪取』だ。俺たちは、地上に上がった戦闘要員が全滅しても、格納庫で戦艦ラストアークの最終調整に当たるノアとホープを失っても敗北が決定する。


 ただの一機、ただの一機でも機械天使ティタノマキナを地下格納庫に通せばそこからは蹂躙の始まりだ。故に、俺たちにはもう一歩も退くことは許されない。ウリエルやラファエルの時のような手段は使えない。正真正銘の『背水の陣』と言うやつだ。



「全員、抜刀ッ!! ノアが戦艦ラストアークを起動させるまで一機たりとも格納庫に入れるな!!」


「ほぉら、量産型ザコども、皆殺しの時間よ! 手脚をもぎなさい、目玉をくり抜きなさい、はらわたを引き摺り出しなさい、心臓を握り潰しなさい! 自機あたしたちに歯向かう雑魚ザコどもに機械天使ティタノマキナの恐ろしさを思い知らせない!!」


「「総員――――戦闘開始ィィ!!」」



 そして、俺とミカエルの号令と共に戦艦ラストアークを巡る戦いが火蓋を切った。


 開戦と共に空からは光の雨が降り注ぐ。量産型の機械天使ティタノマキナウィングや、彼女たちが手にしたライフルから放たれる弾丸の雨だ。


 対するラストアーク騎士団も負けじと各々の武器やスキルを駆使して機械天使ティタノマキナたちに反撃を加えていく。



「まったく……おれはそろそろ魔力(MP)切れだぞ……! 喰らえ――――“血ノ雷撃(ブラッド・サンダー)”!!」


「お腹が空いたなら休んでてもいいのよ、ディアス? 代わりにわたしが戦っといてあげるから……!」


「フン、そういう訳にもいかんのさ、キルマリア伯母様。戦艦ラストアークにはおれの女が乗っているからなァ!! 機械天使ティタノマキナどもよ、悪いが今のおれは“やる気”にみなぎっている! この昂ぶる感情を静めるサンドバッグになってもらうぞ!」


御主人様ダーリン、量産型はうちたちが食い止める! 御主人様ダーリンはミカエルをお願い!!」


「ありがとう、リリィ!」



 戦局はまだ一進一退――――広範囲に攻撃をばら撒けるアケディアスやキルマリアたちが機械天使ティタノマキナにダメージを入れ、傷付いた天使を一点高火力を出せるルドルフたちが着実に仕留めていく。その繰り返しでラストアーク騎士団は敵の侵攻をなんとか食い止めていた。


 そして、地上と上空から絶え間なく入り乱れる攻撃を掻い潜りながら俺はミカエルの元へと単身向かう。最初から決めていた、ミカエルは俺が倒すと。



「お前の相手は俺だ、ミカエル! 二度とノアに歯向かえないように、俺たちの恐ろしさをたっぷりと理解わからせてやる!」


「ハァ!? 王都から泣きべそかいて逃げていった雑魚がなに寝言いってんの? やっば〜い、受けるんですけど〜(笑) 頭の中に汚いゴミでも詰まってんじゃない? ほらほらぁ、さっさと自分の身体に詰まったゴミを拾いなさいよ〜、きゃはははは♪」


「随分と相手を見下しているようだな、ミカエル? そんなに自己の性能に自身があるのか? 所詮は【黙示録の天使(アルマゲドン)】の“噛ませ犬”でしかないのに?」


「…………自機あたしの前で()()()を出すな、虫酸が走る。自機あたしは《大天使アーク・エンジェル》の“代表フラッグシップ”だ、あんなコスト度外視、制御不能の欠陥機と比べるな!」



 空中で俺と敵対したミカエル。彼女はあいも変わらず敵対者を軽視する発言をしている。これには流石の俺も呆れるしか無い。


 開発者のノアはミカエルについてこう言っていた――――ミカエルは【大天使アーク・エンジェル】の一号機であり、量産型である【天使エンジェル】の基礎になった存在だと。つまり、ミカエルは全ての機械天使ティタノマキナの“姉”とも言える存在だ。そして、その自負が彼女の自尊心を肥大化させてしまったともノアは語っていた。


 だが、後にノアが機械天使ティタノマキナの最高傑作である【黙示録の天使(アルマゲドン)】を開発した事でミカエルの立場は急変した。彼女は『機械天使ティタノマキナの頂点』から『【黙示録の天使(アルマゲドン)】の雛形プロトタイプ』にされてしまったのだ。


 それが、どれ程の精神的苦痛を生むかは想像にかたくない。


 それまで頂点トップに君臨していた者が地に引きずり降ろされるのだ、さぞ悔しい事だろう。そして、俺の思惑通り、【黙示録の天使(アルマゲドン)】の名を出した瞬間、ミカエルの表情から余裕の笑みは消えた。



「戦闘能力が劣っている事は認めるんだな? 哀れだな……喧嘩で勝てないから、“コスト”や“制御不能”なんて()()()()()()()()()()()()()優位性マウントを取ろうとするとは……小物すぎて呆れるぜ!」


「あぁ、ウザい、ウザい、ウザい!! 雑魚の分際で自機あたしを苛立たせるな! あんたは自機あたしに無様を晒して、自機あたしを気持ち良くさせていれば良いのよ!! 次元転送光輪【天使の輪(エンジェル・ハイロゥ)】――――起動ッッ!!」



 よほど【黙示録の天使(アルマゲドン)】と比べられるのがしゃくなのだろう。ミカエルは自身の周囲に浮かんでいた光輪を一斉に駆動して俺を“一つ目(モノ・アイ)”で凝視し始めてくる。


 目的としてはこれで十分に達成できた。ミカエルは『ラムダ=エンシェントの抹殺』に注力するだろう。これで、ミカエル自身が戦艦ラストアークへと向かう行為は遅延できた。後は俺がミカエルを倒すか。戦艦ラストアークの起動まで時間を稼げば良い。



「衛星軌道兵器【断罪剣モンサンミッシェル】――――起動! 死にさらせ――――“火刑カケイ”!!」



 俺を標的ターゲットとして認識したミカエルの攻撃は自身の左右に構えた“光輪エンジェル・ハイロゥ”から放たれる光線レーザーだ。


 次元転送光輪【天使の輪(エンジェル・ハイロゥ)】――――ミカエルの所有する兵装で、小型の転送装置とも言える戦輪せんりん。輪を回転させる事で中央部分を簡易的な転移陣ポータルにして、その孔から攻撃を繰り出すミカエルの基本武装だ。そして、ミカエルの“光輪エンジェル・ハイロゥ”は遥か空の彼方にあるある兵器と繋がっている。


 衛星軌道兵器【断罪剣モンサンミッシェル】――――地上から遥か離れた位置、衛星軌道上に浮かぶ兵器。本来であれば大気圏外から地上を一方的に攻撃するのに用いられる兵器らしいが、ミカエルは“光輪エンジェル・ハイロゥ”で攻撃を無理やり探り寄せているらしい。


 そんな“光輪エンジェル・ハイロゥ”から放たれた攻撃を【脅威観測ファントム・メナス】で見切って躱しつつ、俺は聖剣と魔剣を振り上げてミカエルとの距離を一気に詰める。



「なっ、自機あたしの攻撃を避けた……!?」

「当たるか、そんな見え見えの攻撃なんかに!」


「くっ――――“斬首ザンシュ”!!」

「遅い! “風車かざぐるま”!!」



 一気に距離を詰められた事に焦ったのか、ミカエルは自分の両脇に浮かんでいた“光輪エンジェル・ハイロゥ”を直接掴んで俺に向かって投擲してくる。簡易的な戦輪チャクラムとして使用したのだろう。


 だが、その攻撃もしっかりと軌道が視えている、恐れる必要は無い。俺はその場でくるりと一回転して下さい回転斬りでミカエルの投げ付けた“光輪エンジェル・ハイロゥ”を左右に弾き飛ばした。



「――――フッ、バ~カ♡ まんまと引っ掛かったな、間抜けめ……!!」


「ご、ご主人様! 弾き飛ばした戦輪の孔から機械天使ティタノマキナが……!!」


「なにッ……!?」



 その行動がミカエルの思惑通りだとも気付かずに。


 あと一歩でミカエルに届く、そう思っていた俺はe.l.f(エルフ).に呼び止められた。そして、慌てて左右を見ると、其処には弾き飛ばされたはずの“光輪エンジェル・ハイロゥ”の孔から出現したであろう機械天使ティタノマキナの姿があった。


 恐らくは俺に気付かれないように隠して配置した“光輪エンジェル・ハイロゥ”から量産型を通して、俺が弾いた光輪へと転移したのだろう。別の空間と繋がって光り輝く孔から上半身だけを露出した機械天使ティタノマキナは手にしたライフルを俺の方に構えていた。



 だが――――


固有ユニークスキル発動――――【抜刀術:一閃ストリクト・ルーチェス】!!」

「この声……まさか……!?」


 ――――“光輪エンジェル・ハイロゥ”から姿を見せていた二機の機械天使ティタノマキナは何をする間もなく、何者かの斬撃で首を斬り落とされて倒された。



「ツヴァイ……姉さん……!」

「心配かけてごめんなさい、ラムダ……!」



 そして、俺とミカエルの頭上に浮かぶのは、何処からか飛来した飛竜ワイバーンに跨がった一人の女騎士。


 ツヴァイ=エンシェント――――王都脱出以降、ずっと塞ぎ込んでいた筈の姉が、少しぎこちない笑みを浮かべながら帰って来たのだった。

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