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第336話:戦艦ラストアーク


「うわ~、すっごい……! 前に見た旗艦アマテラスも凄かったけど、この戦艦ラストアークはもっと凄いや! 僕たちの文明じゃ絶対にこんなの作れっこないよ……!」


「驚いて貰えて何よりだぜ、ミリアリア! この戦艦ラストアークは史上最強の戦艦にして“空飛ぶ都市”だ! なんだったら、此処に一生住むことも出来るぜ? 住民税は取るけどな」


「嘘でしょ? 魔王城だってたらふく食糧を蓄えても三日もすれば枯渇するのよ! うちらを驚かせたくて話を盛ってるんじゃないでしょうね、エンゲージ?」


「まさか、此処には食糧生成プラント、水源すいげん濾過(ろか)システム、大気浄化機構と、必要な設備はだいたい揃っている。娯楽施設なんかも在るぜ! リリエット=ルージュ、てめぇのお望みの風俗施設もなぁ?」


「ちょっと、いきなり戦艦ラストアークの品位を下げるようなこと言わないで、ホープ! 風俗施設が在るのは艦内の治安を維持するための配慮であって、公序良俗こうじょりょうぞくを乱す為のものじゃ無いわ!」


「ハッハハッ、そうカリカリすんなよ、ノア。娯楽が無いと雰囲気ムードが悪くなるって言って施設の設計をしたのはお前だろ? 第一、戦艦ここには“奴隷”なんぞ乗ってないんだ、胸を張ってりゃ良い。あっ、自慢できるようなサイズの胸じゃねぇか、アッハハハハ!」


「〜〜〜〜ッ!! このギザギザ歯のサメ女! 自分だって貧相な体型の癖にぃぃ〜〜! それに私のカップは“C”よ、『手に吸い付くような触り心地の良い美乳』だってラムダさんから評価を貰っているんだから〜!」


「おい、やめろノア! 人前でそういう話をするな! あーっ、やめて、皆んなしてそんなゴミを見るような蔑んだ目で俺を見ないで〜〜(泣)」



 ――――戦艦ラストアーク内部、艦内移動用輸送列車(トラム)。ホープに案内されて艦首側からラストアークへと乗り込んだ俺たちは機体後方にある艦橋ブリッジへと向かっていた。道すがら、ホープとノアから聴かされた戦艦ラストアークの構造は俺たちにとっては想像もつかないような『空想的ファンタジー』なものだった。


 戦艦ラストアーク――――ノア=ラストアークが設計し、ホープ=エンゲージが建造に着手した超巨大戦艦。


 形状は艦首側が細く、船尾に向かうほどに上部と左右の幅が広がっていく流線的なデザインが特徴で、船尾近くの最高部分の階層フロア艦橋ブリッジになっている。言い方は悪いが、食べ物の『茄子』に似た形状をしているというのが俺の感想だ。個人的に気になったのは、艦外での活動スペースが()()()()()こと。つまり、戦艦ラストアークに於いては一部の例外を除いて、外気に晒される必要が無い事を意味している。


 それは逆に、外気に触れる場所に乗員が()()()()()()()事を示している。まぁ、なにせ空を飛ぶ戦艦なのだ、なるべく乗員に配慮した結果なのだろう。


 内部施設は多岐に渡る――――艦内での生活に必要な主要機関として機関室、重力制御室、食糧生成プラント、空気水源濾過プラント、医療デッキ、居住区画が軒を連ね、移動には現在俺たちが乗っている輸送列車トラムを使用する。


 居住区画は残念ながら個室では無く、四人一部屋になっているらしい。とは言え、最大乗員一万名に対して現状の乗員は300名超、スペース的には全くもって問題がない。その為、家族などの同居を希望する者を除けば皆、各々の個室として使うようになった。この先、さらに乗員が増えた際に相部屋については考えれば良いとのホープの判断だ。


 艦載武器はまさしく空飛ぶ要塞に相応しい――――艦首に設置されたのが“絶海砲ぜっかいほう”と呼ばれる主砲。各部には対空砲、対地砲がずらりと並び、艦橋ブリッジ前と機体左右には高火力砲が設置されている。また、副次戦力として無人戦闘機『ファイター』や強襲要塞トロイメライ、大量の機械兵ドロイドが船尾格納庫に収められている。


 また、防御性能も古代文明の戦艦としては随一で、非常に強力な障壁シールドが常に機体を守っているらしい。巨大な戦艦にも関わらず隠密ステスル性能も優秀であり、直接視認されない限りは如何なる索敵装置にも引っ掛からないそうだ。試しにとシャルロットが『千里眼』を使用した際、戦艦ラストアークの映像にもやが掛かっていたそうなので、この機能は俺たちの持つスキルにも影響を及ぼしていると推測出来る。


 個人的に珍しいと感じたのは艦内に『教会』が設置されていること。


 ノアの報告から古代文明では主だった宗教は軒並み駆逐されたと聞いている。これは度重なる【終末装置アル・フィーネ】の襲撃に疲弊した人類の多くが“神”に縋るようになり、手足を動かして復興に当たる現実主義者リアリストとの間に軋轢を生み、『神託戦争オラクル・ウォーズ』と呼ばれる宗教戦争が勃発し、多くの宗教が流血と共に消滅したからだと言う。


 それでも、たとえ古代文明では『神は存在しなかった』と決定付けられたとしても、ノアは戦艦ラストアークの中に教会の設置を進め、ホープもそれに倣ったのだと言う。その真意は不明だが、彼女たちはその件に関しては口を割りはしなかった。



「どうですかラムダさん、私の設計した戦艦ラストアークは? お気に召してくれたのなら幸いなのですが……」


「凄いよ、ノア! これがあれば女神アーカーシャにだって遅れは取らない! 流石は俺の“相棒パートナー”だ、ノアの事を誇りに思うよ!」


「ラムダさん……」


「おい、この戦艦の建造を実際に進めたのはオレだぜ? それに此処までてめぇ等を案内したのもオレだ!!」


「分かっているよ、ありがとうホープ」


「はぁ……なんか調子狂うな〜……! まぁ、いいや、もうすぐ艦橋ブリッジの真下まで着く。其処からは昇降機エレベーターに乗り換えて上の階層フロアまで行くからな!」



 俺たちの旅の新しい拠点となる戦艦ラストアーク。これさえ在れば俺とノアはきっと、女神アーカーシャの居る『世界の果て』まで向かう事が出来る。


 そう確信していた。



「ねぇ、ラムダ様! 部屋は勿論、わたしと同じ部屋にしますよね? まさか、目の不自由になった婚約者フィアンセと別居なんてしませんよね?」


「あ~、ずるいぞ、オリビアさん! 自分の身体を出汁ダシにしてラムダさんをひとり占めする気だ〜! 僕たちだってラムダさんと一緒がいい〜〜!」


「そうなのだ、オリビアお姉ちゃんズルいのだ!」


「あっ、そう言えば言い忘れてたんだけど〜……実はこの戦艦ラストアークって未完成なんだ……まだ飛べねぇんだけど……」


「なんですか? わたしは婚約者フィアンセなんですよ! ()()()()ラムダ様を貸し出ししてあげますので、それで我慢してください!」


「あら、おふざけは許しませんよ、オリビア? ラムダ卿にはグランティアーゼ王国再興の為に、わたくしとの間に世継ぎを作って貰う必要がありますのよ! それがラムダ卿が取るべき『責任』なのですから!」


「ヤベェ!? いつの間にかとんでもない責任の取らされ方をする事になってる!? コレット、お願いします、なんとかしてください!」


「じゃあ、オリビア様が週二で、他のお方が週一か隔週一で、ラムダ様を順番ローテーション輪姦まわしていくしかありませんね! 他の希望者も募っておきましょう……ルチア様はともかく、こっそりラムダ様を()()()()()していたシエラ様もきっと乗ってくるでしょうし……」


「あぁ〜〜っ、事態が悪化した〜〜(泣) しかもシエラさんと身体の関係を持ってた事もバレてるぅぅ〜〜(泣)」


「聴いてってか? まだ戦艦ラストアークは未完成なんだけど……! なにもう出発気分になってんだ!? まだ緊急事態、真っ只中なんだよ!」


「なんだよホープ、今はそれどころじゃ……んッ、戦艦ラストアークが……何だって……!?」


「だ・か・ら〜! 戦艦ラストアークはまだ飛べねぇんだよ! その調整をしてほしくてノアを呼んだんだ! 分かったら喧嘩してねぇで、もっと緊張感を持て馬鹿どもが!!」


「なっ……ななっ……なんだってぇぇーーーーッッ!?」



 戦艦ラストアークに到達して安堵した俺たちを待っていたのはさらなる緊急事態エマージェンシー。それは戦艦の“未完成”と言う想像もしていない出来事だった。

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