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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第九章:グランティアーゼの落涙

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第313話:希望を信じて足掻く者たち


『いいかい、ラムダ君! 君の仲間と王都の住民をできる限り教会に誘導するんだ! おじさんも上空の機械天使ティタノマキナを狙撃して時間を稼ぐ!』


「分かりました……やってみます!」


『もう時間がない……間もなく“落涙”が降ってくる。護り抜くんだ、君の大切な人を、君が剣を捧げた人を、君自身の誇りを!』



 ――――謎の人物の助言、教会に設置された『転移陣ポータル』での脱出。それだけが俺たちに残された“希望”であった。


 どうやら残された時間は少ないらしい。謎の人物はもうすぐ“落涙”が降ってくると言い、女神アーカーシャは『最終兵器』を動かそうとしている。その“落涙”と『最終兵器』に関係性があるのなら、よくない事が起こるのは確実だろう。


 その前にノアたちと王都から脱出しないと。



「ラムダ団長、ご無事ですか!? 王城前から吹き飛ばされてきた貴方を見て救援に来ました!」


「シャルロット親衛隊の……! 丁度よかった、貴女に伝言を頼みたい!」



 そんな切迫した俺の目の前に現れたのはクナイを両手に握ったメイド、シャルロット親衛隊の一人だ。アズラエルの攻撃で市街地まで吹き飛ばされた俺を案じて駆け付けてくれたらしい。



「教会に遠方へと続く『転移陣ポータル』が設置してあります! それを使って脱出を! 『転移陣ポータル』には封印がなされていますが、第六師団のルチア=ヘキサグラム卿なら解除できます!」


「教会の『転移陣ポータル』……封印の解除にはヘキサグラム卿の協力が必要……承知しました、ラムダ団長! 【ベルヴェルク】の誘導とヘキサグラム卿への協力の取り付け、市民の避難を行います!」



 俺はアズラエルとの戦闘で自由に動けない。いいや、アズラエルを食い止めて避難の時間を稼ぐ必要がある。それなら、親衛隊に避難誘導を任せる他は無いだろう。


 幸いなことに親衛隊は俺の指示をすぐさまに理解して、自身が取るべき行動を即座に把握してくれた。彼女なら迅速かつ効率的な働きができるだろう。



「み~つけた♡ ラムダ=エンシェント……亡機わたしとの死闘デートはまだ終わってないよ♡ ウフフ……次はあなたの胸に短剣ダガーを突き立ててあげる♡」


「アズラエル……可愛げの無い奴だな! 前に逢った時の無機質な感じの方が好みだったぜ……!!」



 そして、王都の建物を無意味に破壊しながらアズラエルは姿を現した。どうやら、彼女は俺を何処どこまでも追い掛ける気らしい。


 これがノアの言っていた“ヤンデレ”ってやつか。追われる立場にされると想像以上につらい。



「ラムダ団長に近付くな、機械天使ティタノマキナ!」


「駄目だ、貴女は自分の責務をまっとうして! あいつの相手は俺がする!」



 空中から地面へと降り立ったアズラエルは右手に握った大剣をブンブンと振り回しながら、ゆっくりと近付いてきている。決して油断をしている訳では無い、俺の反撃に即座に対応できるように警戒しながらの行動だろう。


 性格こそ歪みに歪んでいるが、行動自体は効率化された機械的なもの。流石は腐っても機械天使ティタノマキナの上位機種【大天使アーク・エンジェル】だ。【快楽園メル・モル】の地下礼拝堂で出会った時の“異質さ”は全くもって損なわれてはいない。


 それに加えて、母さんに意識を乗っ取られる直前に見せていた狂気っぷり、おぞましい程に不気味だ。



「その魔剣、面白い性能をしているわね、ラムダ=エンシェント? まるで生き物のよう……素材は【斬光流星撃墜剣メテオザンバー】かしら? 亡機わたしの新しい【ストームブリンガーMk.Ⅱ】とどっちが上かしら?」


「悪いが俺の魔剣は見世物じゃ無い。勝手に想像していろ、ストーカー天使が!」


「ラ、ラムダ団長……」


「早く行って! 俺は……俺にしか出来ない使命を果たす! 貴女は、貴女にしか出来ない使命を果たしてください!」


「…………ご武運を! 必ずや生きてご帰還を果たしてください。それが……シャルロットお嬢様の願いです!」



 アズラエルの目的はあくまでも『ラムダ=エンシェントの抹殺』なのだろう。彼女はノアたちの元に向かって走り出した親衛隊には眼も向けようとしていない。


 むしろ、俺との戦闘の妨げになる邪魔者が消え去ったことに喜びの笑みを浮かべているぐらいだった。



「さぁて、じゃあそろそろ殺すね♡ アハハハ……キャーッハッハッハ!!」



 そして、親衛隊が市街地の奥に消えた瞬間、アズラエルは脚部の推進器スラスターを全開にして突撃を開始してきた。



「魔剣駆動、妬き尽くせ――――“羨望嫉妬インヴィディア”!!」


「キャッハハハハ! 無駄よ、無駄、無駄無駄無〜駄♡ この【ストームブリンガーMk.Ⅱ】は魔力を掻き乱す嵐の具現! 貴方の攻撃なんてそよ風よ! さぁ、死にましょう、亡機わたしと一緒に死にましょう!」


「くっ……!」



 それに対して俺は魔剣に溜め込んだ魔力エナジーを斬撃にして放ちながら反撃を試みる。だが、アズラエルは大剣を大きく薙ぎ払って巻き起こした突風で、俺の攻撃を霧散させて消滅させてしまった。


 アーティファクト【ストームブリンガーMk.Ⅱ】――――俺が以前、アズラエルから奪取した大剣の進化版だろうか。詳しくは判らないが、どうやら剣圧に()()()()()()()()()()があるのだろう。


 その剣で攻撃を打ち破り、アズラエルはあっという間に俺へと距離を詰めて来た。



「くっ、魔剣起動――――」

「させない♡ 吹っ飛びなァ!!」

「――――つあァ!?」



 そのまま攻撃しようと大剣を振りかぶったアズラエルに対して、俺は魔剣を斬り上げの姿勢で構えて反撃カウンターを試みた。


 しかし、アズラエルは嘲笑あざわらうようにクスリ口角を釣り上げるとさらに加速、瞬きよりもはやく俺のふところに飛び込んできた。そして、アズラエルは強烈な蹴り上げを俺に喰らわせた。



「うっ……意識が……飛びそうだ……!」



 咄嗟に魔剣を盾にしてアズラエルの蹴りが直撃するのを防いだが、そのまま俺は強烈な勢いで市街地の建物を飛び越えるように吹き飛ばされてしまった。


 全身に走るにぶい痛みが身体の反応を遅らせて、意識を着実に蝕んでいく。このままではアズラエルの次弾には対応できないだろう。



「ラムダ=エンシェント……貴方を殺して、亡機わたし亡機わたしの存在意義を取り戻す! さぁ、殺してあげるわ♡ 愛しいお母さんの所に送ってあげる♡」



 それを察したのか、アズラエルは黒いウィングを広げて、俺に向けて大剣の切っ先を向けながら飛翔して来る。


 アズラエルの攻撃が直撃までの時間は数秒、回避する猶予も反撃する隙も無い。だが、防御も彼女には容易く崩されてしまうだろう。そのままアズラエルはケラケラと笑いながら突撃してくる。このままでは俺は串刺しにされてしまう。



 そう覚悟した時だった――――


「さぁ、終わりよ、ラムダ=エンシェン―――トッッ!?」

「これは……狙撃……!?」


 ――――アズラエルの頭部のバイザーに一発の銃弾が直撃した。



 放ったのは言うまでもない、先程まで俺に語り掛けていた男性だ。彼は俺が空中に放り出されたのを視て、咄嗟に狙撃を敢行したのだろう。


 そして、弾丸は飛び上がってきたアズラエルのバイザーに見事直撃、死を運ぶ天使はバイザーに隠した蒼い瞳を此方に覗かせながら突然の激痛に身体を仰け反らすのだった。



『あちゃー、流石に視えない相手を予測しての狙撃は無理か〜……! ごめんよ、ラムダ君……どうやらおじさんもまだ詰めが甘いみたいだ……!』


「くっ……これはさっきアーカーシャに閃光弾を見舞った狙撃手スナイパーの攻撃か……! 弾道より位置予測……測定完了……! 量産型、狙撃手スナイパーは此処より20キロメートル離れた台地に居る! 今すぐに叩き潰しなさい!」



 俺を案じて、城壁や建物に隠れて視えないアズラエルを相手に決死の狙撃を行ない、針の穴に糸を通すような射撃を通したのだろう。声の主は俺の想像する以上の狙撃手スナイパーのようだ。


 しかし、俺を救うために撃った弾丸でアズラエルを仕留めきる事が出来なかったせいで、彼の居場所はアズラエルにバレてしまったようだ。潜伏場所をアズラエルから知らされた上空の量産型が百機ほど、声の主が居ると思われる場所に先行していっているが見える。



『あーーっ、王都の上空うえに居た機体が此方に向かって来るわ! ちょっとどうするのよ、あんな数、吸血鬼ヴァンパイアであるわたしでも相手にしたくないわ!』


『分かっているよ、ここいらが潮時のようだね……! ラムダ君、悪いけどこれ以上は協力できない、後は君の腕に掛かっている! また後で合流しよう!』



 向かった量産型の数は百機、如何に声の主が優れた狙撃手スナイパーであったとしても多勢に無勢だろう。それを声の主も判断したのか、彼は即座に撤退を選択した。


 狙撃手スナイパーにとって潜伏場所が割れるのは最悪の事態だ。居場所が相手にバレた瞬間、敵は厄介な相手である狙撃手スナイパーを叩き潰そうと攻撃や包囲を仕掛けてくるだろう。今も、潜伏場所に向かっている量産型が絶え間なく射撃攻撃を行っている。


 そこまでの危険を負わせてしまったのは俺だ。


 それでも、声の主は自身の狙撃が不完全だった事を俺に詫びて、俺を激励しながら撤退していった。遭ったことも無い俺に対してそこまで世話を焼いてくれたのだ、彼には感謝と申し訳ない気持ちしかない。



「くっ……さっきの狙撃で計器センサーの調子が……!? これではラムダ=エンシェントを殺せないじゃない!」



 アズラエルは頭部を抑えながら屈辱に顔を歪めている。どうやら、狙撃で負った負傷ダメージのせいで駆体ボディを制御する機能に不具合が生じたようだ。


 彼女は空中でフラフラとしながら狼狽えている。今なら俺の攻撃を通すことができる。そう思った俺は魔剣を構えて反撃に移ろうとした。



 その時だった――――


「なっ、なんだ!? 空が一際、朱くなりだした……!」

「チッ、時間切れね……! 【月の瞳】が起動したか……」


 ――――王都を覆っていた朱く不気味な空はさらに禍々しい朱に染まりだし、王都の真上に位置するように浮かぶ月が朱く輝き始め出すのだった。

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