その後のルイス視点
「ルイス、見て!とても綺麗!」
新たな世界に来て僕らは旅をする事にした。
サラサは湖の向こうに沈む夕陽に感動して無邪気に喜んでいる。
そんな彼女を見て自分が微笑んでいることを自覚しながら、幸せとはこういう事なのかもしれないと漠然と感じていた。
そう感じられる事がただ嬉しい。
「本当だね。サラサ、僕は今すごく幸せなのかもしれない。」
「かもしれない、なんて相変わらずね。ルイス、そこは素直に幸せでいいと思うよ。」
サラサは微笑みながら僕にそう言った。
あぁ、そうか、と思う。
僕が気付けなかった僕の事をサラサはよく気付く。
「うん。そうだね。僕は幸せなんだよ。」
サラサをぎゅっと抱きしめると、サラサが切なそうな顔をして僕の胸に顔を押し当てる。
「ふふっ、ルイス、ドキドキしてるね。」
「そりゃ、サラサに触れてればそうなるよ。」
「…うん。作り物なんて嘘みたい。」
サラサが寂しそうに呟くのを聞き逃すことはない。
「サラサ、確かにここはシミュレーションだけど、僕が感じてる事柄は本当だよ?サラサが感じてる事も。」
価値観が違いすぎていたせいかサラサは中々世界に馴染めない。
それでも、不安そうにすがりついてくる様子はとても嬉しいから、このままでもいいような気がしている。
「うん。理解はしてきてる。でも、まだ気持ちが追い付かないの。」
「ゆっくりでいいよ。見えてるモノが例え偽物でも、サラサの感情は本物だから。」
「ありがとう。ルイス。…本当は最初の記憶が…ううん、前回の記憶も、どんどん消えてきてて…自分が何なのか自信が無くなってきてるんだよね…。」
それは仕方ないよ。いつまでも覚えてるとどこまでも過去を引きずりそうだから、不自然にならないように少しずつサラサの記憶から消してるところだから。
絶対に言わないけどね。
「サラサはここにいるサラサだよ。確かに過去も大事かもしれないけど、未来の事を考えればいいんだよ。…僕と会った記憶は薄れてても覚えてるでしょ?」
でも、僕の事だけは覚えてて。それについては消さないよ。
「そうね、ルイスの事は覚えてる。最初は黒猫だった。…そういえば色んな事を愚痴った気がするけど、何を言ったか曖昧になってきてる…。」
「僕はそれなりにだけど覚えてるよ?」
あの頃のサラサは不安と絶望に押し潰されていたからね。
それがあまりにも自然で、作り物じゃない感情はこんなにも激しいんだって震えそうになるくらいに感動した。
でも、あの絶望の感情はいらないんだと思う。他にも心が震える感動はたくさんあるって知ったし。
「私、そんなに忘れっぽかったかな?なんだか不公平な気がする。」
「それはまだ記憶が馴染んで無いのに、リセットされたりしたからかもね。新しい事はどんどん増えてるし。…今が楽しいって事でいいと思うよ。」
それっぽいことを言って笑いかけると、サラサもつられたように笑う。
この子の笑顔はとても温かいと思う。
いつか、不必要な記憶はみんな消えて心からこの世界を楽しめる。
その日は近いと思ってる。
サラサが知らなくていいことはなるべく黙っていることにした。
前の世界から連れ出す時、知ってた方がいいと思って今の現実を伝えたけど、結果はただサラサを不安にさせただけだったから。
それにサラサは閉じ込められるのは嫌だって言ってた。
それなら、本当は閉じ込められてるのと大差ない現実なんて、あんまり思い出さない方が幸せだよね。
「ね、ルイス。ずっと側に居てくれる?そしたらきっと楽しいって思える。」
「もちろん。ずっと、どこまでも一緒だよ。」
初めて手に入れた僕だけの“人”なんだから。
こんなに温かいもの手放す訳ない。
そもそも僕の隣でしかサラサはサラサとして存在できなくしてあるし。
そろそろ1度サラサの現在までの記憶も保存しておかなきゃ。
「ルイス、約束ね。」
「うん。約束だよ。」
サラサは笑顔を浮かべている。僕もきっと同じような顔ができてる。
いつまでもどこまでも続いていく幸せをこの永遠の箱庭で。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
設定は他にも色々とあったのですが、詰め込みすぎると画面が文字だらけで真っ黒になるので、ひたすらに説明を削ってみました。
そのせいで分かりにくいところは多々あったとは思いますが、これはこれとしてもう手直しとかしないと思います。




