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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第一章 少年編
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第八話 帰り道


花火に大興奮したが、その分終わった後は妙に寂しい。


「終わったね、凄かったあ!」

暗闇の中でも笑っている山内さんが見えた。


「この場所、昇と釣りしてて見付けたんよ。」得意気に話す湊。


「昇君って釣りするや。」


……ん?


…昇君?


昇の名字は清水だ、他の男子を呼ぶときは名前で呼ぶのかな…。。


「清水君も水泳部だよね」

今度は名字…。わけがわからない。



花火に夢中で足の怪我を忘れていた。

「足は痛くない?家まで送ってくよ」

と、言いつつも帰りの体力が少し不安な湊。


「佐倉君は皆にも同じ様に優しくするん?」

暗闇には山内さんの声だけ。


「普通やで。皆にと言われても…誰でも同じことするんやないん?」


まだ普通の優しさと特別な優しさがわからない湊。


「そうなんや、昔から佐倉君は優しいけんねぇ。」


昔から?


春から同じクラスにはなったけど、それほど昔ではないと思うが…。


「帰りは混むけん商店街抜けたら近道や。行こか」

湊は自転車を取りに行く。


「乗りや。」

二人は海岸を走りながら自宅に向かう。


山内さんは不思議や、名前で呼んだり名字で呼んだり、男子には居ないなあ。など考えていた。


山内さんは一生懸命自転車をこぐ湊の後ろで汗や熱気に包まれながら申し訳なく思っていた。


「怪我してしもてごめんよ…。」

「私が怪我してなかったらこんな遠くまで来なくて良かったのに」


「山内さんは悪ないよ、僕が見せたかっただけやけん。」


湊のTシャツの端をしっかり握りしめる山内さんであった。


山内さんの自宅は湊の家から離れていた。


「佐倉君ちょっと待っといて。」

玄関に入るなり、


「ただいまーっ!」


「お母さん、冷たいジュースとタオル出して!」

「はよはよ!」

家での山内さんは意外と賑やかだ。知らない一面を知り湊は嬉しくなり自転車に乗ったまま笑っていた。


ジュースとタオルを持ってきた山内さんから


「なんで笑いよん?」

と首をかしげられた。


「なんでもないよ。」とまた笑っていた。

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