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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第二章 高校生編
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第五十三話 日常へ

尾道からの帰りに生口島で吉田さんにお土産と旅で見た食べ物や景色、進路で悩んでいたこと、沙織と再会したこと。

どこか祖父と話す様な感覚があった。

吉田さんは冷たいレモネードを入れ、湊の話を楽しそうに聴いていた。


「今度は嬢ちゃん連れて遊びに来いよ。」

そう言って渡したお守りを軽トラの鍵に着けていた。


吉田さんに見送られ、しまなみから今治まで走り抜けた。

行くときと違い、早く帰って母さんに旅の話をしたかった。

弓道部の皆にも会いたい。

弓を引きたい。

ペダルは行きよりも力強く漕いでいた。


予定より早く帰り翌日には道場へ向かう。

ガンちゃんは

「おかえり」「尾道?良かったか?」「はよ、弓を引け」とぶっきらぼうに言い放つ。

新古は

「財布落とした?アホやろ…。」と呆れている。

旅先での松沢さんと連絡したことを新古に伝えた。不必要な話かと思っていたが、

「俺らまた付き合い始めたんよ。」と…。


目を丸くしていると、

「お互い離れたら必要って分かったんやろかなあ?」


「松沢さんはずっと新古が必要やったんやろ?なら離れたお前が悪い。」


「それを言うな…。散々叱られたんやけん…。」

二人でまた苦笑い。


「恋愛は難しいな。」しみじみと二人で空を眺めていた。


沙織は勉強の合間に連絡してくる様になった。

僕も連絡はするが、あの旅から帰ってからは声を聴かなくても繋がっている感覚があった。

来年は沙織と生口島や尾道に行く計画している。


夏休みも終わろうとした夜、昇から連絡が入った。

「久しぶり~。元気にしてたか?」


「地元のスターから連絡とはありがたや。」

二人で笑う。

「俺、卒業したら東京の大学に行くわ。」

「東京来る機会があったら連絡してくれよ。」

ガチャン…。

相変わらずのせっかちな切り方にも慣れた。次はこちらから切ってやる。


自室の机に進路先を記載する紙が置いてある。

すでにやりたいことは決めている。

行政職員として街の活性化に取り組みたい。

いつか旅先で見た風景を地元で再現するのが夢になっている。

夏休みが終われば残りの高校生活も残りわずかだ。進路先も決めた今、弓道も仲間たちと楽しみながら過ごすつもりだ。

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