第四十八話 旅の目的地
尾道に到着するなり
「腹が減った…。」しまなみの景色に気を取られ食べずのまま尾道までペダルを踏んでいた。到着した頃は昼過ぎていた。
「暑い…。腹が減った…。」
自転車を押しながら店をさがし始める。
ん?と湊の足が止まる。
この匂いは…。
店は湊が昇と通っていた三津浜焼きの佇まい。外まで聞こえる鉄板の音。そして焦げたソースの香り。
「三津浜焼き!!」
目を丸くしながら看板を見てまた驚いた。
「尾道焼き」
写真が貼ってあるが、どう見ても三津浜焼きにしか見えない。
店は繁盛しており、最後尾に並び待っている。
周りを見ていると観光客が往来しながら外国からの観光客もたくさん往来している。
異国に来た気分がしてきた。
それと街の雰囲気は古く新しい建物は見当たらない。でも三津浜商店街の様なシャッター街ではない。
不思議な街だ…。
キョロキョロしていると、店内へ呼ばれる。
尾道焼きは具に砂ずりが刻まれており見た目は三津浜焼きの様に見えるが、口に入れるとソースの甘さが違っていた。地元の工場で作られた甘めのソースは砂ずり入りの尾道焼きと相性が良い。何よりコリコリしながら熱々の鉄板で食べる尾道焼きは三津浜焼きと違った美味しさがあった。
…沙織と食べたいな…。
自分の中に居るもう一つの大事な存在を忘れられない。
例え振られたとしても好きな人に食べさせたい気持ちは変わらない。
空腹が満たされ、商店街を歩いてみた。
三津浜商店街より少し大きいくらいかな?いくつかシャッターは降りていたが、開いている店にはそれぞれ個性があった。
古いおもちゃ屋さんはただ古いだけではなく、見ても楽しめる飾り方。
外国の旅行者は写真を撮っている。
海の港ならではなのか、蒲鉾屋にじゃこ天ぷらは揚げたてを食べ歩きが出来る工夫がされている。
修学旅行なのか制服姿の中学生たちが並んで買っている。
「なんなんだ…この街…。」
一番驚いたのが店の店主が若い店主ばかりだった。
皆、引き継いだんだろうか…。
商店街を後にして有名なお寺に向かう。
途中、映画の舞台となった坂道を見ながら思う。
タイムリープ出来たら、もう一度小学生からやり直したい。
ガチャガチャのあの日に。
もし戻れたら、今ならもっと上手く話せるのかな。クスっと笑っていた。
千光寺までロープウェイを利用する途中、尾道の景色が拡がる。
しまなみと違い島が近くにあり、短い橋は車が往来していた。
見たことがない景色を今夜…
僕は誰に話すんだろう?
母さん?
松沢さん?
……。
…沙織に話したい…。
好きな気持ちは変わらない。
いつか話せれたら良いなあ。
自分の中で未消化なままロープウェイは千光寺に到着する。




