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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第二章 高校生編
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第四十五話 願掛け


しまなみ街道に入り、見る景色は新鮮だった。

橋を往来する地元の島民、すれ違うサイクリング者たちとハンドサイン。

橋の上からは大小の島々、漁船から大型船が往来する海。

同じ瀬戸内海の景色とは思えない。


…沙織にも見せたいな…。


いや、一緒に見たいな。か…。

と笑いながらペダルを漕ぐ。


汗は止まらない、でも橋の上は潮風が汗と共にモヤモヤした気持ちを吹き飛ばしてくれる。

そんな気がしてペダルを力強く踏んでいた。


途中、大三島に立ち寄り大山祇神社を参拝した。

旅の交通安全と大きな楠の木を見たかった。


「うわぁ…。」

圧巻だった、大楠には大きなしめ縄が巻かれており雄大な大楠は来訪した参拝者を出迎える様に佇んでいる。


「はよはよ、三回廻るんよ。」

近くの男女が楠を廻り始めていた。


なんだろう?


「三回目っと。」

女性が満足げに呟いている。


「願掛けだろ?」

男性が返答する。


「いーの。三回廻ると願いが叶うなら一緒に過ごせますよーに。って思うでしょ?」

女性の問いに返答しない男性。


以前の新古と松沢さんの会話に似ていると思い出し、クスっと笑ってしまった。


母さんにお守りをお土産にと購入して大三島を後にする。


リュックには試合の日に母さんから渡された交通安全のお守りがついていた。


大三島から生口島に渡り、島内を自転車で廻る。

町役場近くにはスーパーや体育館、全てが凝縮されて1ヵ所に集まっている。市役所の前に交差点が見えた。


渡った先に公衆電話がある。

「今夜ここから母さんに連絡しよう。」

小言を言われるかなと笑っていた。


交差点の先の電話。

渡る人、渡らない人。

繋がる人、繋がらない人。


ただ、一つの結果に結び付く。

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