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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第二章 高校生編
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第四十三話 すれ違い

夏になり湊は進路が決まらないまま、ずっと焦りを感じながら弓を引いていた。


宮下主将、通称ガンちゃんから

「夏の新人トーナメントは二年の人数不足で辞退。女子弓道部の応援には参加すること。」

池田元主将の口ぶりを真似る様に喋るのが可笑しかった。


湊は夏休み中にやりたいことがあった。

一人旅に出ようと思っていた。

スランプの時、皆に助けられ脱却出来た。

だが、人生は自分が道を切り開かないといけない。

自分を見つめ直したい。


練習後、湊はガンちゃんに相談する。

「新人トーナメント中の前後、7日間休ませてほしい。」

湊は言い訳を用意していた。


だが、ガンちゃんは理由も聴かず、

「わかった。でも道場には必ず帰ってこいよ。」

「何かあったらいつでも連絡してくれよな。」


彼女が居ないからと主将をやらされたガンちゃんだったが、部員への配慮は主将らしくなっていた。


だが、湊にとって最悪な結果は「理由」を伝えなかったことが、これからの沙織との関係に関わり始めていく。


夏休みに入り、湊は地元三津浜から今治方面に自転車を走らせていた。


目的地は尾道。


湊は一人旅が初めてとなる。

だが、地元を離れ自分が何をしたいか?ゆっくり考える旅にしたいと考えていた。


その頃、西方高校では新人トーナメントが開催されていた。

松沢さんの指導力は高く、女子団体は予選通過する勢いで午前を終えた。


応援に来ていたガンちゃんと新古は昼ご飯を食べに正門近くのお好み焼き屋へ向かっていた。


「今年の女子は強いぞ、松沢効果だろ。」と目を輝かせるガンちゃん。


「アメとムチやろ、使い方次第やろうな。俺はムチばっかやったわ…。」

頭を抱える新古を見ながら大声で笑うガンちゃん。


ふと、正門に立っている女子に新古が気が付く。

「山内さん?よね?」

制服姿の沙織を覚えていた。


「あ、お久しぶりです。」


「クリームパンくれた子やん!」

ガンちゃん声がでかい。


「あの、みなと…佐倉くんはどこに居ますか?」

暑い中、探していたのか額には大粒の汗。

手にはナイロン袋、マジックで肉そば入りと書かれている。


ガンちゃんは、

「湊は今日来てないよ。理由は知らないけど新人トーナメント前後は休ませてくれって。」


余計な話は控える新古。ただ話すきっかけになればと、

「あいつ最近は考え事してたよ。」

短く伝えた。


「…。」

黙って佇む沙織。

「そうですか…。ありがとうございました。」一礼して振り返る。


校門横のゴミ箱には肉そば入りと書かれたナイロン袋が捨てられていた。

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