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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第二章 高校生編
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第三十二話 クリームパン外交


文化祭当日は秋晴れであった。

涼しくなり自転車に乗りながら堀江海岸を進む。


好きだと伝えとからまだ返事も聞いていない。

文化祭で1日一緒にどんな風に過ごせば良いのか…。

ペダルを踏みながらボンヤリ考えていた。


北方駅に到着し、松山発北条行きワンマン電車の到着を待っていた。

普通に話しが出来るだろうか…。

試合が終わった帰り道、好きだと伝えたが逃げる様に帰ったのは、嫌だったのか…。


気持ちは焦るが文化祭に行く!と言ったのは何故かわからない…。

モヤモヤしながら到着を待っていた。


「北方駅~、北方駅、到着です。」

アナウンスが改札入口まで聴こえる。

電車の扉が開くと西方高校の制服姿の山内さんが飛び降りてきた。

「湊ーっ!」

手を振りながら笑顔である。


「お待たせ!ここが北方駅かあ。」

キョロキョロ見渡し、

「あ!ちょっと待ってて。」

と、駅前のパン屋に走り出す。


…さっき、湊と呼び捨てていた…。

最近は湊君だった、呼び捨てられたのは始めてだ。


「じゃあ、行こうか」

パン屋から出てきた山内さんの両手には大量のパンが入ったナイロン袋。


お土産かな?

「持つよ。」とナイロン袋を手にとり北方高校へ歩く二人。

一年生の時、通学路の歩道橋を渡り集荷場横を歩いた道が、今は山内さんと歩いているだけで嬉しかった。


しかし…告白した後の気持ちが知りたい…。何故こうも普通に話したり出来るのか。二人の温度が同じなことにはまだ気が付かないまま北方高校裏門へ到着する。


「あ!」と声を出したのは女子弓道部の部員。

二人が並んで歩いているのを見るなり校内に走り去って行く。


嫌な予感がしつつも校内に入る。


「ねぇねぇ、湊の道場見に行きたい!」

「ああ、ならこっちだよ。」

校門から道場に向かうまで体育館から武道場から女子らの視線が突き刺さる。

西方高校の制服は目立つんだろう。

そう思いながら道場に辿り着くと、

池田主将と鉢合わせた…。


マズい…。この人に睨まれたら走り込み確定だからである。

そんな湊を嘲笑うかの様に、

「池田さん、山内と申します」

と会釈をする。

「佐倉がお世話になってます、いつも池田主将の話ばかりしてますよ。憧れの先輩って。」


アナタ、ダレデスか…。


ポカンと口を開いていると、湊のナイロン袋からパン屋で買ったクリームパンを手渡す。

「これからも湊をよろしくお願いします。」と…。


「佐倉っ!」いつもの怒号が飛ぶ。

「良い子だ、大事にしろ。」

「今日は文化祭だ、お前たちも頑張れ!」


状況が理解できないまま、道場を案内していると女子弓道部員ら三人がこちらを見ていた。

なんとなく空気を感じ


「お汁粉食べたくない?」

と校舎に案内した。

途中、宮下と新古に出会う。

「あれー?西方の試合で来てたよね?」と宮下。

「噂の山内さんですか?」と新古。


「私、噂の人ですか?」とあっけらかんに笑う山内さん。

二人に挨拶した後はまたナイロン袋からクリームパンを手渡し

「湊をよろしくお願いします。」と軽く会釈をする。


宮下から「どんな関係なんよ?」

新古は「聴いてた話と違う…。」

二人がボソボソ話している。


面倒なのでお汁粉食べに行くと伝えると

「お汁粉は女子弓道部の出店だぞ…。大丈夫か?」と新古が不安そうに耳打ちしてきた。


新古と松沢さんが付き合い始めた今、そこまで警戒する必要もないだろう。


波乱はこれから待ち受けていた…。

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