第二十八話 国体地区予選後半
午後に入り天気が崩れ始めていた。
道場の屋根に当たる雨音が響いている。
昨年の国体出場した媛工が今年は最後の番となり、西方高校から媛商に続き三番手で北方高校となった。
北方女子は予選敗退が決まったが全員が雨の中、見守っている。
媛商は午前から早気が目立つ選手が居たが午後から悪目立ちし始め、的中数が減っていた。
西方高校はホームベースの強みもあり、午前のペースで試合運びをしている。
「北方高校お願いします。」
「はいっ!」
池田主将の礼の後に新古、宮下、菅沢、佐倉が入る。
媛工生らが後ろから
「頑張って。」と声をかけてきた。
その余裕な顔を青冷めさせたいと思った。
一番手、池田主将がゆっくり弓を起こす。が、
…カラン。
矢が落ちてしまう…。
二番手、動揺してしまった新古が外す。
三番手、宮下は我、関せず的中。
四番手、菅沢が弓を起こす。
湊が立位から的を見始める。
…雨音が消え始める…。
四番手の菅沢が的中した。
湊が弓を起こす。
その瞬間、心臓の音が消えた。
一粒一粒の雨粒が見える。
会。
胸の筋肉限界まで弦を伸ばし続ける。
離れ。
手の平を弓が周りきる頃には矢は的を射貫く。
意識すれば応援している人たちの会話と雨の音を聞き分けれる感覚。
残心。
思考は止まり、頭から指先まで血液の流れは感じる。
二本目、池田主将は気持ちを取り戻し的中。
新古、宮下、菅沢、佐倉も的中。
三本目、池田主将、宮下、新古的中。
二本外して最後の4本目。
新古、菅沢的中。
佐倉が弓を起こす、
このままずっとこの時間が止まれば…。
このメンバーと弓を引き続けたら…。
時間は湊だけ流れる。
会。
まだ、まだだ。
胸の筋肉が悲鳴を上げている。
伸び切った弦は高音を鳴らし始める。
離れ…。湊の矢が先に的に入った矢の付近に刺さる。
残心。ゆっくり音が聴こえ始める。
大粒の雨が道場の屋根に打ち付けていた。
道場に礼を行い、すれ違う媛工生に
「頑張って」と声を掛けた。




