表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第二章 高校生編
PR
31/69

第二十話 殺気

湊の異変に気づいた山内さんが、顔を覗き込むように声を掛けた。


「ちょっと、顔色真っ白だよ? 大丈夫なの?」

周囲がその声に反応し始める。

視線が集まる気配を察して、湊は山内さんの腕を軽く引いた。


「外、行こ」

半ば連れ出すようにして廊下を抜け、武道館の外へ出る。

自販機前には松沢さんがじっと見ているが二人は気付かない…。


日陰のベンチに腰を下ろすと、さっきまでのざわつきが少し遠のいた。


「……ちょっとマシになったかも」

呼吸が落ち着くと、湊は三津浜焼きを口に運び始める。


「凄かったよ、佐倉君!」

山内さんは興奮したまま続ける。

「全部当たってるのに全然喜ばないけど弓道って喜んだら駄目なの?、ねぇ、聞いてる?」


「いや、食べてるから……」

口からそばを少しはみ出させながら、湊は返す。

それでも山内さんは止まらない。


「カッコ良かったよー。佐倉君の学校の弓道部女子たち、ざわついてたんだから!」

「もしかして告白とかされるんやないん?」


「ああ、もうされたよ」

何気なく出た一言だった。



「え……?」




山内さんの動きが止まる。


「ん?」


もぐもぐしながら湊は首をかしげる。



「いや……え?」

「ちょ、ちょっと、誰かと付き合ってたりするの?」 「告白されたん?!」「えっ!」

「いつ?」

矢継ぎ早の質問に、湊は首を振る。


「ああ、居ない居ない」

食べ終えながら、湊は少しだけ言葉を足した。


鹿島の件、その後のやり取りを簡単に話す。



「そうなんや……ふーん……」

山内さんは一瞬だけ視線を落とし、そして顔を上げた。


「ねぇねぇ」


「ん?」


「好きな人の名前に、私の名前出したん?」

 眼鏡のレンズが光っている…。


「いや、それはほら、尊敬する人って意味も含めてやん?」

言いながら、湊は自分の中の熱が少し上がるのを感じた。


「あはは、まだ試合中やけんね。問い詰めたりせんよ」

軽く笑って、山内さんは立ち上がる。


「昼からも頑張ってね!」

いつもの調子に戻っていた。


「うん」

湊も短く返し、武道館へと戻る。



武道館の入口。

そこに腕を組んで立つ松沢さんの姿があった。

視線は真っ直ぐ湊を射抜いている。


口の中で焦げたソースが苦かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ