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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第二章 高校生編
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第十五話 怒りと嫉妬

鹿島行きの港に到着するまで弓道の話題で盛り上がった。

明るい性格だ、なるほど新古が気になるのは納得だな、とパンを齧る。


「話しって?」松沢さんが尋ねる。


「あのね、誤解なんよ。」

ストレートに素早く話さないとペースが狂ってしまう。


「松沢さんの事が気になる人から相談されて昨日呼んだんだ。」


「えっ?」みるみる表情が変わる松沢さん。


「どうゆうこと?私を好きって言ったよね?」


言ってない。

……いや、今それを言う空気じゃない。


「ごめんなさい。」

もはや言い訳はせず、謝るしかなかった。


「…。」

肩を震わせながら下を向く松沢さん。


泣かせてしまった…。と思っていたが、


「誰?」

泣き声ではない、明らかに怒りの声。


「佐倉君が好きな人、誰!」

泣いてない、ただ怒っていた。


「いや、僕の話ではなく松沢さんの事を気になる人から頼まれて…。」

場馴れしてない湊はしどろもどろ。


対してクリームパンを買って待ってくれた優しい松沢さんはもう別人と化していた。


「早く言って!」


「…。」


「言いなさい!」


「山内さん…。」

思わず口から出ていた。

はっ!とした時には手遅れだった。


「何組っ!」

これ以上はもうマズい…。

「松沢さん、僕は誰かと付き合いたいとかは今はないんよ。やっと弓道に夢中になれたから。」

一方的に尊敬する人物だからと説明するとなんとか納得してくれた。


湊はそう理解してまた駅に向かう。

松沢さんを改札まで見送り、湊は自転車で帰ろうとする。


改札前から


「私は佐倉君が好きやけん!」

大声で叫び、そのまま電車に乗り込む。同じ電車に乗る新古が見えた…。


鹿島と腰折れ山からの風はとてつもなく冷たかった。



「ただいまっ!」

早く新古に話さないとといつもより自転車で急ぎ帰宅する。

すぐに新古に電話をし、


「佐倉と言います。新古君の…」


「おれや。」

新古の声はすでにいつもと違っていた。

事情を伝えながら付き合ってないと丁寧に伝えた。


「ほうか、それはすまんかった。」

と新古が謝る。

「いや、松沢さんにも新古にも悪いことをしてしもた。」

ひたすら謝る湊。

もう二度と恋愛相談は受けないと決めた。


「色々ありがとうな、これからは自分で頑張ってみるよ。」

電話越しの新古の声は、 昇みたいに真っ直ぐだった。

後は新古が松沢さんと引っ付いてくれたら解決なのだから。


翌日、学校の休憩時間も道場でも湊に対する女子の視線は冷たかった。

気にしない様にしていても声は聴こえる…。

トイレに行くと男子たちからも

「おまえ、最低やな。」

噂が噂を呼び、女子をもて遊んだ男のレッテルが高校2年になるまでの3ヶ月続いた。


一騒動も落ち着き、高2になった。

新入生を迎え昨年の様に各部活が壇上でアピール合戦が始まる。

池田先輩の変わりに今年はガンちゃんが壇上に立っていた。

物怖じしない性格はこの場でも発揮し見事な射形からの的中で会場は大いに盛り上がる。


だが…。


男子弓道部員は1名。

女子の弓道部員は8人。


「宮下!練習前に毎日走ってこい!」

池田主将の怒りの矛先はガンちゃんに向けられていた。

壇上に立たなくて良かったと皆、思っていた…。

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