第九話 年末の街並み
十二月に入り、期末試験もなんとか赤点は免れた。
久しぶりの部活休み。 湊は弓道部の同級生たちと銀天街へ遊びに来ていた。
アーケードにはクリスマスソングが流れている。 店先には赤と緑の飾り付け。 カップルたちが笑いながら歩き、紙袋を抱えた学生たちが行き交っていた。
男子高校生だけで来る場所じゃないな……。
湊は少しだけ居心地の悪さを感じていた。
「田舎の男子校生が制服で歩く場所ちゃうやろ!」
宮下は通称ガンちゃん。大声で笑う、やかましい…。
その隣では新古がイヤホンもしていないのに尾崎豊を口ずさんでいた。 昔から妙に自分の世界へ入る癖がある。
田中は
「池田先輩の会って、やっぱ肩開いとるよな」
と、また弓道の話をしている。
湊も自然とその話へ混ざっていた。
無口な菅沢は耳を傾け歩いている。
結局、何をしていても頭の中には弓道がある。
それでも今日は楽しかった。
銀天街を抜け、松山市駅へ戻ろうとしていた時だった。
「あれ!? 湊!」
大きな声が響く。
振り返ると、丸坊主頭の昇が立っていた。 隣には制服を着た女子生徒がいる。
「久しぶりやな!」
昔から声が大きい。
「元気なんか?」
「元気だよ」
湊は笑う。
「彼女さん?」
そう聞くと、2人は少し照れ臭そうに顔を見合わせた。
「まぁな」
昔から変わらない笑い方だった。
ガンちゃんたちは
「うわ、良いなあ」と勝手に騒いでいる。
そのやり取りを見ながら、湊は少しだけ懐かしい気持ちになっていた。
すると昇が、ふと思い出したように言う。
「そういや山内さんが湊を見たって言ってたぞ」
湊は少しだけ足を止めた。
「懐かしいな」
自然と口から出る。
「元気そうだった?」
今度は昇が不思議そうな顔をした。
「会って話ししなかったんか?」
「西方高で湊見つけたって、めっちゃ喜んどったぞ」
冬の駅前を電車が通り過ぎる。
試合に出向いた時に居たのかな。声くらい掛けてくれたらよいのに。
「……そうなんや」
と小さく呟く。
アーケードの奥では、まだクリスマスソングが流れていた。




