1話 乱世のはじまり
それは何の前触れもなく始まった。
全世界を我が物にしようと目論む、圧倒的な魔力とカリスマを持つ魔族の頂点ーー魔王。
その魔王に次ぐと言われる幹部たちが率いる軍勢は、人間をはじめとする魔族に敵対する種族が暮らす多くの国々を制圧し、支配下に置いていた。
日に日に勢力を拡大し続ける魔族に対し、これ以上好き勝手させまいと、多くの冒険者ギルドが討伐隊を結成。その結果、支配されていたいくつもの国の奪還に成功した。
ーーしかし、その喜びも束の間。
魔王は新たな強力な軍隊を送り込んできた。
討伐隊達も臆することなく、さらなる精鋭部隊を次々に結成する。
国同士による領土の奪い合い。
信頼と裏切りによる陰謀。
人と魔による終わることのない拮抗した戦争は、いつしかこう呼ばれるようになった。
ーーー人魔戦国乱世ーーー
当時6歳だった私は、お母様からこの話を何度も聞かされていた。
大陸最大の国家ーーーソルセリア王国。
この国もまた、他人事では済まされない危うい状況に置かれていた。
古今東西あらゆる魔法を扱う魔導士が集う、大陸随一の魔法国家。
魔王が欲しがりそうなこの国を支配できれば、軍勢を無尽蔵に増やすことができる。
最悪の場合、難攻不落の要塞国家を築き上げることさえ可能だろう。
怖いーーーー……魔王がこの国へ攻めにくるのが。
もちろん、そんなソルセリア王国も黙ってはいなかった。
勇敢な魔法騎士たちの活躍と、外敵を滅するための強力な結界によって、侵攻を食い止めることに成功した。侵攻を命じられた魔王最高幹部もこれには迂闊に手が出せず、両者は互いの隙を窺いながら睨み合いを続けていた。
―――――……それが、今から10年前の出来事。
終わりの見えない乱世が続く中。
誰もが心のどこかで予感していた、ある恐ろしい出来事が起ころうとしていた。




