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ギャルナースで、あげ〜⤴︎︎⤴︎︎  作者: 櫻木サヱ
病棟の大騒動

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14/15

鳴りやまないナースコール

朝七時。


結衣はいつものように病院の更衣室で髪をまとめていた。


「よーし♡今日もあげ〜⤴︎⤴︎でいきますか!」


鏡の前で気合いを入れる。


しかし更衣室を出た瞬間、違和感を覚えた。


病棟全体が妙に慌ただしい。


看護師たちが走っている。


電話が鳴り続けている。


ナースステーションでは高木が険しい顔でカルテを確認していた。


「おはようございまーす♡」


結衣が声をかける。


高木は顔を上げた。


「結衣さん、今日は覚悟して」


「へ?」


「病棟、満床よ」


結衣は固まった。


「え?」


「救急も受け入れ中」


「え?」


「発熱患者も増加」


「え?」


「しかも人手不足」


「ええええええええ!?」


病棟中に響く大声。


佐藤が呆れたように言う。


「朝からうるさい」


「だって無理ゲーじゃん!?」


「だからみんな必死なんだよ」


結衣は周囲を見回した。


確かに空気が違う。


いつもより張り詰めている。


冗談を言う人もいない。


笑う余裕もない。


そこへナースコール。


ピンポーン。


ピンポーン。


ピンポーン。


一つ終わる前に次が鳴る。


「結衣さん!三〇五号室お願い!」


「はい!」


走る。


患者対応。


戻る。


また呼ばれる。


走る。


戻る。


また呼ばれる。


「なにこれぇぇぇ!?」


午前中だけで何十回ナースコールが鳴ったかわからない。


車椅子介助。


点滴交換。


検査搬送。


食事介助。


清潔ケア。


報告。


記録。


確認。


やることが終わらない。


「あげ〜⤴︎⤴︎とか言ってる場合じゃないんだけど!?」


結衣が叫ぶ。


杏奈が泣きそうな顔をしていた。


「結衣先輩ぃ……」


「どうした!?」


「点滴終わらないですぅ……」


「わかる!!」


二人で半泣きになる。


そこへ高木。


「泣いてる暇があったら動く!」


「はいぃぃぃ!」


即復活。


昼過ぎ。


ようやく休憩に入れると思った瞬間だった。


救急搬送。


病棟が一気に緊張する。


ストレッチャーが運ばれてくる。


医師たちが集まる。


「患者さん入ります!」


「バイタル!」


「酸素準備!」


怒号のような指示が飛び交う。


結衣も駆け寄った。


「私やります!」


患者は高齢男性。


呼吸状態が悪い。


苦しそうだ。


結衣はすぐ酸素を準備する。


「大丈夫ですよ!」


患者の手を握る。


震えている。


怖いのだ。


当然だ。


突然病院へ運ばれたのだから。


「ちゃんといますからね」


結衣は笑った。


患者も少しだけ落ち着く。


その姿を見ていた橘医師が言う。


「結衣さん」


「はい?」


「患者さん安心してる」


結衣は少し照れた。


「そりゃナースですから♡」


忙しい。


苦しい。


余裕もない。


だけど患者はもっと不安だ。


それだけは忘れたくなかった。


午後三時。


ナースステーション。


全員疲れていた。


高木も。


佐藤も。


杏奈も。


もちろん結衣も。


だが休めない。


ナースコールが鳴る。


電話が鳴る。


患者が呼ぶ。


病院は待ってくれない。


「看護師ってすごいなぁ……」


結衣がぽつりと呟く。


佐藤が聞き返した。


「今さら?」


「いやさ」


結衣はカルテを見つめる。


「学校の時はわかんなかったじゃん」


「まあな」


「命預かるって、こんな感じなんだね」


少しだけ真面目な声だった。


佐藤も頷く。


「そうだな」


その時。


再びナースコール。


ピンポーン。


結衣は立ち上がった。


「よし!」


「どこ行くんだよ」


「呼ばれてるし!」


「休憩中だぞ」


「患者さん待ってるじゃん!」


結衣は笑う。


疲れている。


足も痛い。


腰も痛い。


それでも。


患者のために動きたい。


そんな気持ちが自然に湧いてくる。


夕方。


窓の外が赤く染まる。


しかし病棟はまだ終わらない。


むしろここからが本番だった。


発熱患者が増える。


検査が増える。


入院が増える。


スタッフは限界に近い。


高木が全員を集めた。


「みんな聞いて」


病棟が静まる。


「今日が山場よ」


誰も喋らない。


「乗り切るわよ」


その一言で空気が変わった。


疲れていても。


辛くても。


みんな同じだった。


結衣は拳を握る。


「よっしゃ」


杏奈が見る。


「先輩?」


結衣はニッと笑った。


「病棟がピンチなんでしょ?」


「はい」


「じゃあギャルナースの出番じゃん♡」


杏奈が吹き出す。


佐藤も笑う。


高木まで少しだけ笑った。


病棟はまだ戦いの途中。


本当の大騒動はこれから始まる。


結衣はまだ知らない。


この数日後、自分たちが病棟最大の危機に直面することを――。

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