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ギャルナースで、あげ〜⤴︎︎⤴︎︎  作者: 櫻木サヱ
病棟の大騒動

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15/15

限界ギリギリの病棟

朝六時五十分。


結衣は病院の自動ドアをくぐった。


「あー……」


思わず声が漏れる。


眠い。


とにかく眠い。


昨日の退勤は夜遅く。


家に帰ってシャワーを浴びて寝たら、もう朝だった。


「ギャルナース最大の敵は睡眠不足かもしれん……」


ぼそっと呟く。


だが病棟へ入った瞬間、眠気は吹き飛んだ。


ナースステーションが戦場になっていた。


電話。


ナースコール。


申し送り。


カルテ。


スタッフ全員が走っている。


「おはようございまーす♡」


結衣が言う。


「おはよう」


高木の返事は短かった。


その顔には疲労が滲んでいる。


結衣は少し驚いた。


高木はいつも冷静だった。


その高木ですら余裕がない。


状況は思った以上に深刻だった。


午前九時。


病棟はすでに大混乱だった。


ナースコール。


ピンポーン。


ピンポーン。


ピンポーン。


「誰か来てー!」


「検査搬送お願い!」


「点滴終わります!」


「先生呼んでください!」


あちこちから声が飛ぶ。


「分身したいんだけど!?」


結衣が叫ぶ。


佐藤が横を通る。


「無理だから走れ」


「ブラックすぎん!?」


「病院だからな」


正論だった。


さらに発熱患者が増えた。


隔離対応。


防護具。


消毒。


確認。


やることが終わらない。


結衣は廊下を走り続けた。


昼前。


事件が起きた。


杏奈が青ざめた顔で立っていた。


「結衣先輩……」


「どうした?」


「私……」


声が震えている。


結衣の顔が真剣になった。


「何があった?」


「薬の確認……間違えそうになりました……」


結衣は一瞬だけ息を飲んだ。


医療現場では重大な問題だ。


だが。


杏奈の目には涙が浮かんでいる。


結衣は責めなかった。


「患者さんには?」


「投与前に気付きました……」


「ならセーフ」


杏奈が顔を上げる。


「でも……」


「疲れてるんだよ」


結衣は優しく言った。


「今の病棟、みんなギリギリだから」


杏奈が俯く。


「私、向いてないのかな……」


その言葉を聞いた瞬間。


結衣は額を軽く小突いた。


「いたっ」


「バーカ」


杏奈が目を丸くする。


結衣は笑った。


「向いてない人は気付けないって」


「え?」


「気付いたから止まったんでしょ?」


杏奈は黙る。


「じゃあ大丈夫」


その言葉に杏奈の目が少し潤んだ。


「結衣先輩……」


「落ち込む暇あったら成長しよ♡」


杏奈が小さく笑った。


午後。


病棟はさらに忙しくなった。


救急搬送が二件。


発熱患者増加。


入院対応。


退院調整。


全員が走る。


全員が疲れている。


それでも止まれない。


午後四時。


結衣は患者の車椅子を押していた。


ふと鏡を見る。


そこに映った自分に驚く。


髪は乱れ。


目の下には薄くクマ。


頬も少しこけている。


「うわ」


思わず声が出た。


ギャルとしては大事件である。


「盛れてない……」


だが。


次の瞬間。


患者が言った。


「結衣さん」


「はい?」


「ありがとうね」


結衣は振り返る。


高齢の女性患者だった。


「最近忙しいのに、いつも笑ってるから安心するの」


結衣は固まった。


患者は続ける。


「結衣さんが来ると元気になるの」


胸が熱くなった。


疲れが少しだけ消える。


「えへへ♡」


結衣は笑った。


「それなら頑張れちゃいますね♡」


夕方。


スタッフルーム。


みんな無言だった。


疲労で喋る元気もない。


高木がコーヒーを飲む。


佐藤は椅子に沈む。


杏奈は机に突っ伏している。


結衣もソファに倒れ込んだ。


「終わった?」


杏奈が聞く。


「終わってない」


佐藤が即答。


「だよね」


全員ため息。


その時。


病棟電話が鳴った。


静寂が崩れる。


高木が受話器を取る。


そして。


表情が変わった。


「……わかったわ」


電話を切る。


嫌な予感。


結衣が聞く。


「どうしたんですか?」


高木は全員を見た。


「今夜、救急搬送が増える」


空気が凍る。


「さらに?」


杏奈が絶望した声を出す。


高木は頷いた。


「夜が本番よ」


誰も笑わない。


誰も喋らない。


病棟はもう限界だった。


だけど。


患者は待ってくれない。


結衣はゆっくり立ち上がる。


足は重い。


体もだるい。


それでも。


「よっしゃ」


拳を握る。


「まだやれる」


杏奈が驚く。


「先輩……」


結衣は笑った。


「ギャルなめんな♡」


その笑顔に、少しだけみんなの表情が和らいだ。


だがその夜。


病棟に本当の危機が訪れる。


誰も予想していなかった最大の急変が待っていた――。

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