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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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99/107

#99 集う、マキューロ元老院

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


本作は9月14日、本日を持って#1の公開からちょうど1年半を迎えました。

また、明日の更新では#100の公開を予定しております。

期間的にも話数的にも、ここまでお付き合いくださった方には心より感謝を申し上げます。

明日の更新より通常スケジュールに戻ります。

以後もぜひ、お付き合いいただけますと幸いです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

洞窟の外でレピとリリニシアが言葉を交わしている間、中ではリエネがクレンとのやり取り──"ヒトを離れ、魔物に近付いている"と聞かされたことを回想し、今後の動き方について思案。

再会を果たした一行の長い夜が終わった。

 リリニシアも寝静まり、数時間ほど経過した頃──。


「おはよーございまーす」

「…!」


 夜が明け、木々に遮られた朝日を岩に腰掛け見上げるレピの背後から、スウォルが目を擦りながら声を掛けた。

 これまで何度も耳にしてきたスウォルの挨拶にも関わらず、"魔物と化している"という情報が加わっただけで、レピに緊張が走る。


「レピさん?」

「…おはようございます。少し、うたた寝をしてしまっていたようです」


 レピが咄嗟に返事が遅れた理由と笑顔を作って答えると、スウォルは申し訳なさそうに眉尻を下げた。


「やっぱ疲れてるよな…。すいません、皆が着くまで待ってただけなのにすぐ寝ちゃって」

「リリニシア様も交代を提案してくださったのですが、僕が自分でお断りしたんです。気にしないでください」

「そう言ってもらえるとありがたいっす」

「僕たちとはぐれてから、体調を崩したりしていませんか?」


 笑い返しつつも気まずさを隠せていないスウォルに、レピが尋ねる。


「え、レピさんもっすか?」

「も?」

「いや、リエネさんも調子のこと聞いてきて」

「…そうですか、リエネさんが」

「心配してくれてたのは分かるけど、普通は俺よりもリリニシアじゃないっすか?心配なの。俺ってそんなに体、弱そうっすか?」


 "スウォルを相手に、リエネが何かを探っている"ことを直感しながら、レピは首を横に振った。


「普通ならそうかも知れませんが、僕たちはラツンジパから"スウォルくんが2日間も眠っていた"と聞いていますから…リエネさんだって心配するでしょう」

「あー…それでかぁ…」


 事実を語らずとも嘘は吐かずに納得させ、レピは質問を重ねる。


「実際のところはどうなんですか?」

「体調…は、別に悪くないと思うんすけど…」

「…スウォルくんにしては珍しく、歯切れが悪いですね?」


 腕を組んで考え込むスウォルに、レピは言外に続きを促した。


「うーん…。体調とは別だと思うんすけど、なんかやたらと眠くなるんすよねぇ…」

「眠く…」

「昨日だって、別に寝るつもりなかったんすよ。さっきも言った通り、俺たちは別に疲れてないし。なのに姉ちゃんと一緒になって、真っ先に寝ちまって…」

「ふむ…」


 申し訳なさそうに、しかしどこか釈然としない様子で、スウォルは唸る。


「姉ちゃん…だけじゃねぇけど、ここまで歩いてきて疲れてるだろうから分かるんすよ。俺はここで待ってただけなのに…って思うと、申し訳ねぇっつーか情けねぇっつーか」

「そんなことないですよ。僕はスウォルくんたちと離れたことで、お二人が大きな存在だったことを改めて痛感しました」


 戦力として、に限った話ではない。

 シェリルが"人に似た何か"に殴られ心が折れてしまった際に感じた、彼女の中での弟(スウォル)と幼馴染(リリニシア)という存在の大きさと何も出来なかった無力感。

 思い返し、噛み締めながらレピはスウォルを諭す。


「えー…そうっすかね…」


 スウォルが照れくさそうに頭を掻くのと同時に、木々の向こうから男の大きな声が響いた。


「なんだァ!?このニオイは!」

「!」


 瞬時に警戒態勢を取った二人の前に、まもなく木々の向こうから鼻を摘んで現れたのは──筋骨隆々、見上げる高さの大男だった。


「…あん?誰だお前ら?なんでジスタムの塒(ねぐら)にいやがる?」

「またニオイかよ…!」

「スウォルくん!」


 顔を背けながら小さく呟くスウォルを諌め、レピは咳払いしながら大男に向き直る。


「…レピ・エルトナと申します。貴方は──ボォンクレェド・ディアモス卿、でしょうか」


 元老院であるガガーニムを呼び捨てにしたことから対等以上の存在であること。

 まだ見ぬ男性の元老院二人の内、ロガーメーポの顔はスウォルが既に知っていることから推測し尋ねるレピを見下ろし、目を細めながら大男は頷いた。


「あぁそうだ。お前は…マキューロ人じゃねぇな」


 スウォルに目線を移しながら、ボォンクレェドは顔を顰める。

 隠す気もない排他性をぶつけられ、スウォルは不快感を表情ち滲ませながら頷いた。


「…ヤクノサニユっす」

「ヤクノサニユだ…?昔に会ったヤクノサニユ人は、そんな気味の悪ぃニオイさせちゃいなかったはずだ」

「んなこと言われても…自分じゃ分かんないんで」


 スウォルが"自らの認識を、正直に話している"と感じ取り、ボォンクレェドは質問を変える。


「なんでヤクノサニユ人がマキューロにいる?国境辺りならともかく、こんな奥地に」

「…それは」


 会議を前に、元老院であるボォンクレェドに実情を明かすべきか迷ってスウォルが口籠り、レピに視線を投げ掛ける。

 そんな二人の背後、洞窟から声が響いた。


「お二人は私の客です、ディアモス卿」

「…ジスタム。──いや、元老院として呼ばれたのなら、"同じ元老院"としてジスタム卿…とお呼びせねばならんかな?」

「どちらでも結構。なんならメジャルカ卿のように、"ガガちゃん"と呼んでくださっても構いませんぞ」

「ふん、気色の悪いことを」


 スウォル、レピとボォンクレェドの間に割って入るガガーニムの冗談を鼻で笑い飛ばしながら、表情は厳しいまま、ボォンクレェドは問いかける。


「何故ヤクノサニユ人がここにいる」

「それは議題に関わりますので、マキュラ卿がいらしてから。既にメジャルカ卿、ムータオヒカ卿はおいでです」

「なら今からだ。マキュラ卿も既に議(・)場(・)におられる」

「!」


 マキュラ卿──マベレムギリア・マキュラの到着を知らされ、ガガーニムの表情が一瞬、固まった。


「メジャルカとムータオヒカも呼びに行かせている。後はお前だ」

「…ディアモス卿が自ら、私を呼びに来ていただけたとは驚きましたな」

「ふん…。就任から間もない分際で招集など掛けたお前の顔を、改めて拝もうと思ってな」

「でしたらどうぞ、お気の済むまでご覧ください。前にお会いしてから、そう大きく変わってはいないはずですが」


 再び余裕を取り戻したガガーニムは、見せびらかすように顔の角度を少しずつ変えて見せる。


「そうだったか?元の顔を覚えておらん。興味がないものでな」

「"顔が見たい"と思う程度には、ご興味を持っていただけたようですな。光栄なことです」

「…共に来い。マキュラ卿がお待ちだ」


 打っても響かないと見たボォンクレェドは、舌打ちと共に話を打ち切った。

 しかしガガーニムは、首を横に振って応える。


「すぐに向かいますので、ディアモス卿はお先にご移動ください」

「なに?」

「お恥ずかしながら、つい先ほど起きたばかりでして。少々ばかりお時間をいただきたい」

「…はぁ?」


 虚を突かれ素っ頓狂な気の抜けた声を上げたボォンクレェドは、程なくして大層おかしそうに、大声で笑った。


「く…くはははっはっは…!呆れたぞ、お前が呼び出しておいて!」

「こればかりは返す言葉もありません。マキュラ卿がこんなにも早くおいでになるとは…正直、思っておりませんでした。どうかマキュラ卿やお二人に"お待たせして申し訳ない"とお伝え願えますか」

「笑わせてくれた礼だ、そのまま伝えてやろう。せいぜい"魔女"の怒りを買わんよう祈っておくことだな。ふはは…!」


 ボォンクレェドはスウォルとレピには目もくれず、笑い声と力強い足音を響かせながら立ち去った。

 僅かな静寂の後、レピが呟く。


「…あれが、ディアモス卿」

「えぇ。もうじき80になろうというのにあのお体。まったく、お元気なことだ」

「80かよ、アレで…。あのクソジジィとは大違いだな…」


 スウォルは杖を突き、咳き込む"クソジジィ"──同じ元老院のロガーメーポを思い浮かべた。


「スウォル殿、昨日も申しましたが、どうか言葉にはご注意くだされ」

「あ、すみません。…"議場"っつってましたけど、遠いんですか?」

「大した距離はありませんよ。だからと言ってダラダラする時間はありませんが。…さて、皆様を起こしましょう」


 ガガーニムの呼び掛けにスウォルとレピは頷き、共に洞窟に入って行った。



 それからしばらく後──。


「あの"お飾り"め…。自ら呼び出しておいて、ふざけたことを、やはりあやつは元老院に相応しいとは言えん…!」


 ガガーニムの塒(ねぐら)より深く広い洞窟──"議場"。

 切り出した石で作られた円卓を中心に、同じく石を切り出した椅子に腰掛けたボォンクレェドから先ほどのやり取りを聞かされ、ロガーメーポが憤りを露わにしていた。


「そう怒らなくていいじゃないですかぁ。何かご予定でもあったんですかぁ?」


 10代後半の姿をしたクレンは円卓に両肘を付き、ロガーメーポを嘲(あざけ)るようにクスクスと笑う。


「生憎、儂はメジャルカ卿ほど暇ではございませんのでな」

「そんなにお忙しいなら、元老院など降りちゃえばいいのに。ふふ…」

「メジャルカ卿は元老院という組織を随分と軽んじておられるようですな。貴殿こそお抜けになられては如何か」

「…」


 口調こそ穏やかなものの、敵意を隠すことなく、二人が互いに舌鋒(ぜっぽう)を向け合っている中、ボォンクレェドは一人、腕を組んで無言を貫く。

 そして──。


「静まれ」


 ただ一人、体を椅子にも地にも預けることなく浮遊しながら、小柄な老婆──"魔女"マベレムギリア・マキュラが一喝した。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は本日19時頃にXでの先行公開を、明日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

ついに集ったマキューロの元老院。

事実上の頂点、マベレムギリア・マキュラに一喝され、他の面々は──。


次回「動き始める会議」

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