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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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100/107

#100 動き始める会議

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


一年半+一日を掛け、ようやく話数が三桁の大台に乗りました。

昨日からの繰り返しになりますが、ここまでお読みくださった方には心より感謝を申し上げます。

今後も完結するか心が折れるまで書き続けて参りますので、お付き合いいただければ幸いです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

ついにシャファルノールに集まったマキューロの元老院。

ボォンクレェドは口を開かず、クレンとロガーメーポが険悪な空気で言い争う中、マベレムギリアは一言、呟いた。

"静まれ"。

「──黙して待て」


 加えてマベレムギリアが一言、静かに言い放つと、ヒリついた空気が一転、途端に凍りつく。

 僅かな静寂に包まれた後、再びクレンはクスクスと笑った。


「はーい。…怒られちゃいましたねぇ?ムータオヒカ卿」

「くっ…」

「乗せられるな、ムータオヒカ」

「ディアモス卿…」


 口をついて言い返そうとするロガーメーポを、刮目したボォンクレェドは短く制し、続けた。


「ソイツにまともに付き合っても益はないぞ」

「あ〜、ヒドいなぁ!もう長い付き合いなのにそんなこと言わないでくださいよぉ、ディアモス卿?」

「だから分かるんだ。──もう黙れ。マキュラ卿に二度、同じことを言わせるつもりか?」


 そう言うとボォンクレェドは、それ以上の対話を拒否することを示すように、再び目を瞑る。


「あ〜あ、つまんないの。ガガちゃん、早く来ないかなぁ…」

「ちっ…」


 腕を枕に、退屈そうに机に突っ伏すクレンの軽薄な言動に、ロガーメーポは舌打ちとしながらもボォンクレェドに倣い、自らも強く目を閉じた。


 誰一人として言葉を発さず、しばらく後──。


「…何のつもりか」


 マベレムギリアが、ふと呟いた。


「マキュラ卿?なにが──」


 聞き返そうとしたボォンクレェドは、途中で言葉を切り、出入り口に視線を移す。

 待ち人の足音が響くのに気が付いたからだ。

 ──ただしその足音は、一人のものではなかった。


「なに!?──どういうことだ!ジスタァム!!」


 元老院しか立ち入ることを許されない"議場"に、ガガーニムが他の誰かを引き連れて現れたことに気付いたボォンクレェドは、空間が震えるほどの大声で問う。


「ぐっ…!」


 その声量に耳を劈(つんざ)かれ、ロガーメーポが顔を顰める一方、クレンは──。


「やっぱり」


 誰にも見えない腕の中で、楽しそうに唇を歪める。


「いやはや…お呼び立てした身で遅れてしまい、面目次第もございませぬ」


 他国人四名を含む六名──シェリル、スウォル、リリニシア、レピ、リエネ、ラツンジパを引き連れ、ガガーニムが姿を現した。


「あやつら…!?」


 六人の内、先んじて面識のあるスウォルとリリニシアを見つけたロガーメーポは、驚きに目を見開く。


「…♪」


 クレンは突っ伏した姿勢から僅かに視線を上げ一行を──中でもリエネを見つめ、上機嫌に鼻を鳴らした。

 そんな中でボォンクレェドは、ガガーニムの姿を認めるやいなや立ち上がり、その胸倉に掴みかかる。


「貴様、どういうつもりだ!!」

「どうもなにも、ディアモス卿には言伝をお願いしたではありませんか」

「遅参のことを聞いているのではない!この神聖な場に何故、我ら五人以外の者を招き入れたのかと聞いているのだ!!」

「まずは落ち着いてくだされ、ディアモス卿。神聖な場を暴力で汚されるおつもりですかな?」


 体を大きく揺さぶられながらも飄々も答えるガガーニムを、ボォンクレェドは額に青筋を浮き立たせて、体が宙に浮くほど、その首元を締め上げた。


「貴様、ふざけたことを──」

「下がれ、ディアモス卿」

「!…マキュラ、卿…。しかし──」


 マベレムギリアに止められたボォンクレェドは一瞬、怯んだ様子を見せたが、尚も空中でガガーニムを揺すりながら、マベレムギリアにまで反論を試みる。


「ディアモス卿」


 対するマベレムギリアはただ、静かにもう一度、ボォンクレェドの名を繰り返した。


「くっ…!」

「あらディアモス卿、さっきご自身で仰ったこと、もうお忘れになりました?」


 言葉に詰まったボォンクレェドを、クレンがすかさず煽る。

 "マキュラ卿に二度、同じことを言わせるつもりか"。


「…けほっ」

「!…マキュラ卿、お体が…!」


 マベレムギリアが咳き込むと、ボォンクレェドは自らの言葉を噛み締めながらガガーニムを解放し、マベレムギリアに駆け寄った。


「よい。…ジスタム卿」

「…はい」


 マベレムギリアに名を呼ばれ、ガガーニムはボォンクレェドに対するものと違う、神妙な表情で答える。


「元老院の伝統に唾棄する狼藉、説明はしてくれるのであろうな」

「無論です。お呼び立てした目的──"本来の議題"を論ずるにあたり、彼らの存在が不可欠と判断いたしました」

「…」

「ふざけるな!」


 ガガーニムの主張にマベレムギリアが目を細めると同時に、ロガーメーポが声を上げた。


「判断だと?部外者を招き入れる判断を一人で下す権限が、貴様にあると言うのか!許してはなりませんぞマキュラ卿!」

「…」

「だから儂は最初から、このような若造を元老院に加えてはならぬと言っておったのだ!永きに渡り脈々と受け継がれる伝統の、重みも知らぬ青二才が…!!」


 ロガーメーポはガガーニムを責め立てる中、マベレムギリアは他の元老院を見回した後、ゆっくりと呟いた。


「決を採る。ムータオヒカ卿」


 マベレムギリアに名を呼ばれ、ロガーメーポは握った拳を円卓に叩き付けながら叫ぶ。


「言うまでもない!"非"である!!」

「ディアモス卿」


 続けて指名されたボォンクレェドはマベレムギリアの宣言に落ち着きを取り戻し、再び椅子に腰掛けながら答えた。


「同じく、"非"である」

「メジャルカ卿」

「私はねぇ…。"非"──」


 次に呼ばれたクレンは顔を上げ、ガガーニムや一行に目線をやり、彼らにだけ見えるように、ニヤリと口角を上げる。

 ガガーニムは表情を変えないまま、内心で"まさか"と冷や汗を流した。


「…ではないかなぁ。前例に囚われず新しいことに挑戦してかないとね。──"是"である」


 クレンの"裏切り"に一瞬、肝を冷やしたガガーニムだったが続く言葉に胸を撫で下ろし、鼻から安堵の息を吐く一方、ロガーメーポが再びクレンに噛みついた。


「何を言うメジャルカ卿!元老院ともあろうものが、伝統を軽んじるなど──」

「なぁんだ、ムータオヒカ卿もですかぁ?ディアモス卿と揃って、物忘れが深刻なようで心配ですねぇ」


 クレンは動じず、やはりニヤニヤと、楽しそうに言い返す。


「物忘れだと…?」

「採決で許されるのは、自らの見解を述べることだけ。"他者の見解に異議を申し立てること、これを許さず"。──大事な伝(・)統(・)、でしょう?あはは…」

「くっ…ぅ!!」

「然り。口を謹め、ムータオヒカ卿。」


 反論できず、悔しそうに歯噛みするロガーメーポを冷徹な眼差しで一瞥した後、マベレムギリアは最後に、ガガーニムに問う。


「──ジスタム卿」

「無論、"是である"」


 二人と二人で意見が割れ、行方を握るマベレムギリアに全員の視線が寄せられる。

 当のマベレムギリアが、その視線を感じながら出した答えは──。


「…マベレムギリア・マキュラ。"留保"とする」

「な…!?」

「マキュラ卿!?」

「へぇ…?」


 マベレムギリアの出した"決"にボォンクレェドは言葉を失い、ロガーメーポは思わず強い口調で呼び掛け、クレンは少し意外そうに目を丸くした。


「お…お待ちくださいマキュラ卿!確かにメジャルカ卿の仰られる通りですが──これは話が違いますぞ!」

「同意見です。採決において"留保"など、過去に例がありません。どうか再考を」


 自らが異を唱えることを正当化しながら食い下がるロガーメーポに、ボォンクレェドも同意した。


「ジスタム卿は"議題を論ずるにあたり不可欠"と述べた。その真偽を改めずして、答えは出せぬ。異議は認めぬ」

「…感謝いたします、マキュラ卿」


 一つ目の関門を潜り抜けたガガーニムが、マベレムギリアに深く頭を垂れる。

 ガガーニムに答えることなく、マベレムギリアは一行に目を向けた。


「それに…少々、興味がある。このニオイ──」

「!」


 鼻を鳴らすマベレムギリアに、スウォルは脳内で"またニオイか"と悪態をつきかけるが──彼女の視線が自分ではなく、更に奥に向けられていることに気が付いた。

 視線を追って振り替えると、その先にいたのは──ラツンジパ。


「え…お、俺?」


 他の面々からも視線を向けられ、自分を指差し困惑するラツンジパを見ながら、マベレムギリアは尋ねる。


「ルヴィニケンプの親族か」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は9月21日19時頃にXでの先行公開を、22日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

"ニオイ"という観点ながら、スウォルではなくラツンジパに興味を示し、ルヴィニケンプの名を出したマベレムギリア。

ラツンジパは困惑しながら、辿々しく問いに答える。


次回「勇者一行と元老院」

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