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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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94/96

#94 元老院のジスタム卿

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


本作は9月14日を持って、#1の公開からちょうど1年半を迎えます。

勝手に祝し一人で記念して、9月11日から15日までの期間に連日更新を行います。

お付き合いいただけますと幸いです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

ラツンジパと交代しリエネが洞窟内に入ってまもなく、入れ分かりでレピとガガーニムは外へと連れ発つ。

奇しくも洞窟内でシェリル、スウォル、リリニシア、リエネが、外ではレピとガガーニムが、それぞれ死亡したとされる元老院の前任者"ダヲジア卿"について言及していた。

「遺体が…見つかっていない…」


 外部に声が漏れないようガガーニムによって張られた風の膜の内側で、レピはガガーニムの言葉をそのまま繰り返した。


「はい。このシャファルノールでは、直近一年ほどの間に三人、男が行方をくらませています。ダヲジア卿はその内の一人です」

「…」

「そしてこの行方不明、民の間では"忘敬者(ぼうけいしゃ)の仕業では"、という噂が立っております」


 そこまで聞き、レピは合点が行った様子で大きく頷く。


「…なるほど。そんな中、元老院の一人までもがその()()()()()()()となれば、対立の激化は目に見えている…」

「如何にも。故に情報を伏せ、民に対しては"ダヲジア卿は亡くなられた"ということにしてあるのです」

「何故、そのような重大な秘密を僕や…スウォルくんたちに?」

「それは…」


 レピの問いに、ガガーニムは言いづらそうに顔を顰め、やがて覚悟を決めた様子で口を開いた。


「元老院に加入する為、私が行方不明に見せかけダヲジア卿を謀殺した。…そう疑っている者がいるのです」

「な…謀殺!?」

「無論、私ではありません。そもそも先に話した通り、本当に亡くなっているかも分からないのですが…」


 ガガーニムの説明を聞き、レピはハッと気付く。


「待ってください、"行方不明"という前提を知っているということは…その疑っている人物も元老院に?」

「…他でもない、ムータオヒカ卿。貴方が会いたがっておられるロガーメーポ・ムータオヒカ、その人です」


 ガガーニムは重々しく、その名をレピに告げた。


「なっ…」

「彼が我々に接触して来たのは、リリニシア様たちの話した通りです。その場で彼はダヲジア卿の名を出しました」

「…」

「そのつもりがあったか、単に私への嫌がらせの結果かは分かりませんが…彼の口振りは、お二人に"私が彼の失踪に関わっている"との疑念を抱かせるものでした。私は彼に嫌われておりますので」

「それで二人に?」


 ガガーニムはゆっくり、大きく頷き、続ける。


「繰り返しますが、私は何もしていません。しかしそれを立証できる、客観的な証拠は持ち合わせていないのです。──私は"潔白を証明できない以上、私に出来る形で誠実であるしかない"と考えました」

「…」


 レピは口を挟まず、黙ってガガーニムの言葉を聞いた。


「そこでお二人に、元老院しか知らぬ秘密を明かしました。もしお二人がその気になって民に流布すれば、マキューロは二つに分断され…ともすれば内戦の果て、致命の傷すら負いかねない、この秘密を」


 ふぅ、とガガーニムが一息吐くと、レピは頬に汗を垂らしながら自分たちを覆う風の膜を見回した。


「漏らさぬ為に魔術(ここ)までした理由が分かりました。…二人がムータオヒカ卿にいい印象を抱いていないのは、物言いで察しておりましたが…」

魔術()の中だから言いますが…"禁じられた魔法"の知識はともかく、人間性には期待せぬほうがよろしいでしょうな…」

「胸に留めておきます。──しかし、これで腑に落ちました。ジスタム卿、貴方は決して"善意の協力者"ではない」

「…」


 今度はガガーニムが、黙ってレピの言葉を待つ。


「貴方には貴方の"目的"があり、その為に僕達を利用しようとしている。──そうですね?」

「えぇ、そうです」

「二人や僕にその秘密を握らせたのも、マキューロの内乱(その先の結末)がゼオラジム陛下の目的と反する為、(おおやけ)にすることはない。…そう踏んでのことでしょう」

「そうです。もっとも、お二人が信用に足る人物だと考えているのも事実ですが」


 レピの指摘を、ガガーニムは即座に肯定した。


「目的は…潔白の証明、ですか」


 続けて問うレピに、ガガーニムは僅かな間の逡巡を挟み、答える。


「…そうなってくれるのに越したことはありませんが、そんなことは二の次です」

「では…元老院内での、立場の確立を?」

「それもどうでもいいこと。仮にダヲジア卿がご存命なのであれば…私は椅子をお返しするつもりです」


 ガガーニムの告白に、レピは目を見開いた。


「返す…?元老院の権力(椅子)を、自ら手放されるのですか?」

「えぇ。元より、今の私には荷が勝ちすぎる。相応しいのはダヲジア卿でしょう」

「…貴方は、自ら望んで元老院に加わられたのではないのですか?」

「ふぅ…。レピ殿にもお話しておきましょう。私が"忘敬のお飾り"として、元老院に招致された理由を」

「忘敬の…?」


 ガガーニムはため息交じりにそう言うと、スウォルもリリニシアにも話したその理由…"対立の激化を避ける為、忘敬寄りの思想を持つ自身の抜擢"を、ため息交じりに語って聞かせた。



 その頃、洞窟内でスウォルとリリニシアも、シェリルとリエネに"ダヲジア卿が遺体が見つかっておらず、生死不明"であること、"元老院内におけるガガーニムの立ち位置"を、把握している限りで共有していた。

 一通り聞き終え、リエネはボソリと呟く。


「"お飾り"、か…」

「あぁ、自分でもそう言ってた。その、忘敬者?側の不満が溜まりすぎて破裂する前に…ってことらしいな」

「ご自身の思想としては、あくまで中立的だと仰ってましたけれど…それでも従来の元老院と比べれば、大きく歩み寄ってるのでしょう」


 二人の補足を聞き、シェリルは納得した様子で頷いた。


「じゃあ、聞いてた隷我者(原理主義)の印象より友好的だったのは、ガガーニム様がそれまでの人たちより忘敬者(革新主義)に寛容だから…ってことなんだ…」

「ワタクシも驚きましたが、そういうことなんだと思いますわ。…ガガーニム様が──いえ、なんでも」


 "話していることが、すべて真実なのだとすれば"。

 リリニシアは敢えて、ガガーニムへの疑念を自らの内に封じ込める。

 しかしシェリルはすぐに次なる疑問にぶつかり、首を捻った。


「あれ、でもクレン様は?あの方は"原理主義(それまでの人)"と同じなんだよね?特に敵意みたいなのは感じなかったよ。…言ってることはよく分からなかったけど」


 リエネが一瞬、その名に顔を顰めるも、誰もそれに気付くことはなかった。


「あの方に関しては正直、ワタクシたちもよく分かりませんわ」


 リリニシアが首を横に振ると、スウォルもそれに応じる。


「とりあえずガガーニム様と仲よさそうではあるよな。"ガガちゃん"なんて呼んでたし」

「アレはどちらかと言うと、クレン様がおちょくって遊んでるって感じでしたけれど…少なくとも、あの"ロガーメーポ"って方よりはよほど親しそうでしたわね」

「そっか…。もしかして私たちだけじゃなくて、誰に対してもそんな感じの人なのかな…」


 少し視線を伏せ、顎に指を当てながら考えるシェリルの言葉に、リエネは曖昧に頷いた。


「…かもしれんな」


 そう言いながらリエネがチラチラと視線を送っていることに気付き、スウォルはどこか居心地悪そうに尋ねる。


「な、なんだよ?…あ、俺やっぱりクサいのか!?」

「ち、違う!そんなことはない!」


 リエネは先ほど"仲間外れ"を否定した時と同等の勢いで、全力で否定した。


「その…離れていた間に体調を崩したりとか…何か変わったことがあったりしなかったか、と思ってな…」

「あぁ、そういうことか…」

「だからクサくなんてないって言ってるでしょ?…ふふ」

「…」


 勘違いしたことを恥じるように照れ笑いを浮かべるスウォルと微笑むシェリルを視界の端に収めながら、リリニシアは一人、難しい表情を浮かべていた。

 言い淀むリエネの歯切れの悪さに、違和感を抱いた為だ。



リエネさんは、何かを探ろうとしている…?

離れていた間に起こった異変といえば…けれどスウォルの"あの姿"のことは知る由もないはず。

いったい何を──



 その瞬間、リリニシアは気が付いた。



違う。

さっきレピさんはなんて仰っていた?


"実はジスタム卿のお目にかかるより前に、クレン・メジャルカ卿を名乗る方とお会い致しました"。


そうですわ。リエネさんたちはワタクシたちと再会する前、既に()()()()()()()()()()()…!


クレン様は初めてお会いした時、スウォルに"人かどうか"を尋ねた。

そしてガガーニム様はスウォルのニオイを"人からは感じたことがない"と言い現わし、クレン様も同意した…。


皆さんがクレン様に会った時に何か──"スウォルのニオイ"のことを吹き込まれた?

だとしたら…シェリルがスウォルのニオイを気にしていたのも合点が行く…!


リエネさんは…レピさん、ラツンジパさん…そしてシェリルは、いったい"何を"、"どこまで”知っているんですの…!?



「リリニシア?おーい?」


 鼓動は速く、強くなり、息が浅くなるリリニシアの思考を遮ったのは、気の抜ける呑気なスウォルの呼び掛けだった。


「え、あ…な、なんですの?」

「なんですの、はこっちの台詞だよ。急に黙り込んじまって」

「あ、あぁ…いえ、リエネさんの仰るような、"何か変わったこと"なんてあったかしら、と思い返していましたの。ほほほ…」

「…リリニシア様」


 リリニシアの態度は、リエネに対しても疑念を与えてしまっていた。

 一方、レピとガガーニムは──。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は9月7日19時にXでの先行公開を、8日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

同じ頃、ガガーニムから"お飾り"の意味を聞かされたレピは、"不本意な形で元老院に加わった理由"を尋ねる。

それに対しガガーニムは──。


次回「"お飾り"の目的」

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