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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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95/95

#95 "お飾り"の目的

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


本作は9月14日を持って、#1の公開からちょうど1年半を迎えます。

勝手に祝し一人で記念して、9月11日から15日までの期間に連日更新を行います。

お付き合いいただけますと幸いです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

シェリルの行動やリエネの態度から、クレンとの接触時に"何かを吹き込まれた"ことに感づいたリリニシア。

一方、洞窟を離れたレピとガガーニムは──。

「…なるほど、それが"お飾り"の意味ですか」


 洞窟の出入り口から少し離れ、盗聴を防止するガガーニムの風の魔術による膜の中ではレピが、スウォルとリリニシアがシェリルとリエネにしたのと同じ説明をガガーニム自身から受けていた。


「率直にお伺いします。そんな不本意な形で元老院に加入してまで…ジスタム卿、貴方の目的とは、いったい…?」

「…"ボロガブザリ"と言っていましたかな」


 自らの問いと無関係な反応に意表を突かれ、レピは気の抜けた声をあげる。


「はい?」

「言っていたでしょう?先ほど、洞窟の中で。魔物と獣の混血では、と」

「…えぇ。言いましたが、それが…?」


 若干の苛立ちを滲ませながら首を捻るレピに、ガガーニムは気にした様子もなく続けた。


「ここからの話は、スウォル殿たちにお話していません。何をどの程度共有するかは、レピ殿のご判断にお任せします。──推測に過ぎませんが、"混血"との見立て…。まったくの見当違いではありませんが、正確とも言い難い」

「な…!?──そういうからには、"正確"な事実をご存知なのですか?」


 衝撃的な発言を受け、瞬時に苛立ちを忘れて目を剥くレピに対し、無言で頷いた後、ガガーニムは言う。


「貴方がたが見たのはおそらく、獣に改造を施し、人為的に魔物と化したモノ」

「じん…え…?」


 レピは理解が追いつかず、間抜けな声でガガーニムの言葉を繰り返そうとするも、それすら満足に言えなかった。

 ガガーニムは困惑するレピの目を見据える。


「言ってみれば、()()()()。…我々はそう考えています」

「…!?」

「死後に肉体が朽ち、崩れるのは未完成…魔物として不完全な故のことでしょう」

「ま、待ってください!そんなことが…可能なのですか!?誰が、何故…!?」


 掴みかかる勢いで、矢継ぎ早に質問を重ねるレピに、ガガーニムは静かに、諭すように語った。


「落ち着いてください。現時点で分かっているこ…とをお伝えします。…繰り返しますが、あくまで推測です」

「…はい、お願いします」

「まず"可能なのか"ですが…現状、不可能だと断定できる情報がありません。つまり──分からない、です」

「…である以上、手元の情報だけで決めつけるべきではない…」


 これまで自身が仲間に繰り返してきた言葉を、レピは思わず口にする。


「えぇ。そして可能なのだとしたら、考えられる可能性は二つ。一つは──」

「…個質魔術?」


 ガガーニムはゆっくり、大きく頷いた。


「そんな個質魔術を持つ者がいる可能性を、否定できる材料はありません。そしてもう一つは…貴方がお探しの、"禁じられた魔法"」

「!」


 その単語に一際大きく目を見開き、レピの全身がゾワリと総毛立つ。


「ひょっとしたら"魔物を造り出す"ことが、その正体なのかも知れません。次に"誰が"についてですが…これら二つの可能性を踏まえ、我々が現在もっとも怪しいと踏んでいるのが──ムータオヒカ卿です」

「また彼ですか…!」


 頻出するその名前に、レピはもはや嫌気さえ差していた。


「どのような個質魔術を使うか分からず、"禁じられた魔法"の研究に明け暮れた過去がある。…疑わぬ訳には行かないでしょう」

「…そう、ですね」

「もちろん、あくまで疑いの段階です。"どんな個質魔術を使うか分からない"という意味で、メジャルカ卿以外の元老院は皆、容疑者ですが、その中でも特に。…最後に"何故"──目的については、これも"分からない"です」


 無言で数回頷きながら、レピはしばらくの間なにも言えず、やがてやっと次の言葉を絞り出す。


「先ほどから二度、"我々"と仰っていますが、メジャルカ卿のことですか…?」

「私はこの件について、彼女と手を結んでいます。もっとも"密に連絡を取り合い一蓮托生"、というよりは、各々が勝手に調査して時折、情報を共有する…と言った形ですが」

「いったい何故、メジャルカ卿と…?」


 頭を抑えながら、弱々しく疑問を捻り出したレピに、ガガーニムは冷静さを崩さず、淡々と答えた。


「彼女は極めて珍しく、自らの個質魔術を隠そうともしていません。そして彼女の個質魔術は、どう応用しようと"魔物を造り出す"用途に使うことは出来ない…"疑いの余地なし"と判断し、私から協力を要請しました」


 まさに隠さず見せつけられたクレンの個質魔術"年齢操作"を思い出し、レピはやはり黙って頷く。


「彼女がそれを承諾した理由は…おそらく、"面白そうだから"程度のことでしょう。私としても彼女は計り知れません。協力が得られるのなら動機を問うつもりはありませんが」

「…なるほど。──二点、気になることがあります」

「どうぞ」


 少し時間が経ち、話の過程で頭が冷えて落ち着いてきたレピは、ガガーニムに次なる質問をぶつけた。


「一つ目…"何故、推測だと言いながらも、混血説を明確に否定できる"のでしょうか。人造魔物(今のお話)、確かに可能性として否定すべきではありませんが、人の手が介入しない自然発生の産物である可能性を否定できるとも思えません」

「ふむ…。もう一つは?」


 ガガーニムに促され、レピは表情を鋭くした。


「仮に人造の魔物だったとして、伺っている限り、それをマキューロ人の手によるモノだと断定しているのも気にかかります。個質魔術も"禁じられた魔法"も持たない他国人にそんな芸当は不可能だと決めつけておられるのなら、それは些か傲慢ではないでしょうか」


 反抗的にも見えるレピの目つきに、ガガーニムはむしろ、どこか嬉しそうに答える。


「なるほど、いいご指摘です。まず一つ目の疑問から。…先ほどスウォル殿たちとの話では話題に出ませんでしたが、シャファルノールまでの道中で怪物に襲われませんでしたか?」

「!」

「やはり。そしてそれは魔術を使い、我々によく似た姿をしていたのではないでしょうか」

「…まさか」


 "直近一年ほどの間に三人、男が行方をくらませています"。


 レピの頭の中で、先ほど聞かされたガガーニムの言葉と、怪物と対峙した後に"想定しておけば心構えが出来る"と自身が仲間たちに語った"()()()()()()"が、想定の()()を超える形で噛み合った。


 "僕は…アレはマキューロ人ではないかと考えています"。


「まさか…!"人を素体にした人造魔物"だとでも言うのか…!?」


 わなわなと声を震わせるレピに、ガガーニムは静かに頷いた。


「私自身はありませんが、メジャルカ卿は一度遭遇し、討伐したと言っていました。面白半分で攻撃をしてみたら、魔術で反撃してきたと」

「面白半分…」

「やはり死後、その肉体は崩れ落ちたそうです。…こんなモノが自然発生するでしょうか」

「では、ダヲジア卿も…その素体に…?」

「…その可能性も、否定は出来ません」


 レピは言葉を返せず沈黙するが、ガガーニムは構わず続ける。


「二つ目、確かに他国人による可能性は否定しません。ですが自国の調査も不十分な状態で他国に疑いの目を向け、結果が万に一つ、マキューロ人によるものだったとしたら…疑われた国のマキューロに対する印象は、著しく悪化するでしょう」

「…」

「ともすれば自作自演、最初から他国を貶める為に仕込んだとすら疑われかねない。…例え相手がティサンにせよハリソノイアにせよ、それがマキューロの益になるとは思えません」


 ガガーニムの主張を受け入れ、レピは再び頷いた。


「…"他国人には不可能"と決めつけているのではなく、先にマキューロの潔白を明確にすべきだ、と」

「結果論ではありますが、ゼオラジム陛下の望んでおられる和睦(未来)にとっても、その方が都合はよろしいでしょう」

「そう、ですね…」


 降って湧いた想定外の情報に、レピは俯き、視線を伏せる。


「ご質問が以上なら、そろそろ戻りましょうか」

「…はい」


 処理しきれていないながらも力弱く頷くのを確認し、自身たちを覆う風の魔術を消し去ったガガーニムはそのまま踵を返して洞窟へと向かう。

 蘇った葉が揺れ、擦れる音や虫の鳴き声に包まれ、レピはまだ動かない。


「…どうされました?」

「いえ…行きます」


 ガガーニムに促され、ルヴィニケンプの語るロガーメーポが"禁じられた魔法"の研究に魅入られた理由を思い返しながら、レピは小さく足を動かし始める。


 "解き明かせば、人間(自分たち)にも魔法が使えるようになるかもしれない"。



ひょっとしたら彼は、未だ魔法…"魔物の領域"への憧れを──。



 無言のまま洞窟に戻ったレピは、ラツンジパに見張りの交代を提案し、ガガーニムと二人で入っていく姿を見送った。

 それからまもなく──。


「レピさん」

「…リリニシア様」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は9月10日19時にXでの先行公開を、11日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

ようやく二人で話す機会を得たリリニシアとレピ。

レピは早速、ガガーニムから学んだ風の魔術の応用で、誰にも聞かれずに話せる空間を作り出す。

その中でリリニシアが切り出す話とは──。


次回「リリニシアの"お話"」

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