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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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92/95

#92 リエネと"仲間"

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


本作は9月14日を持って、#1の公開からちょうど1年半を迎えます。

勝手に祝し一人で記念して、9月11日から15日までの期間に連日更新を行います。

お付き合いいただけますと幸いです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

ガガーニムを交え洞窟内で少しずつ、探り探り情報を共有しあうシェリル、スウォル、リリニシア、レピ。

一方、リエネを監視する名目で外に出たラツンジパに、両膝を地に着いたリエネが食って掛かる勢いで尋ねた。


”スウォルからあの女が言ったような…"変なニオイ"はしたか!?”

「は…はぁ?そんなようなこと言ってたが…なんの話だ、いきなり?」


 リエネの勢いに圧されたラツンジパは困惑しながら、スウォルやリリニシアとの合流前に現れた"あの女"──クレンがシェリルに放った言葉を思い出す。


"お姉さんからは変なニオイがしないね?──双子なのにね"


 リエネは息を荒げ、ラツンジパの両肩を強く握り締め、問い直した。


「いいから答えてくれ!」

「つっ…!痛ぇよ、離してくれ!」

「あ…!す、済まない…」


 顔をしかめ声を荒げるラツンジパを見てリエネは我に返り、肩から手を離す。


「ってて…なんなんだよ、一体…」

「悪かった…。それで、どうなんだ?」

「変なニオイか?してなかったと思うけど──」

「本当か!?」

「あ、あぁ…」


 今度は歓喜を声に滲ませながらラツンジパに詰め寄ったリエネだったが、すぐに目を伏せた。


「…いや、だが…」


 最初にクレンが姿を見せた際の、レピの言葉を思い返す。



クレンがニオイで"ラツンジパとルヴィニケンプが近しい人間"であることを見抜いた時、レピは"今の自分に、同じことは到底できない"と言っていた。

だから正体を明かす前の時点で、幼い少女の姿のクレンに対して"魔術師として自分より遥かに格上だ"と。


つまり──魔術師としての力量と"嗅覚の鋭さ"には密接な関係がある…?

であれば、ラツンジパには悪いが…腕前が不十分だから感じ取れていないだけ、という可能性も残る…!



「なぁ、どうしたんだよ?本当に…」


 ラツンジパの問いかけに思考を遮られ、リエネは再び視線を上げた。


「あ、あぁ…」



話すか?ラツンジパに…!

()()を聞いて…ラツンジパはどう動く!?


──いや、ラツンジパだけではない。

あんな話を話を聞いて、いったいどれだけの人間が…スウォルの味方でいてくれるんだ…?


だが隠して、背負い切れるのか!?私に…!



 逡巡の末、リエネは──。


「あの女が、また現れて…」

「なっ…またかよ!?今度は何を…?」

「…取引を求めてきた」

「取引?なんの?…まぁほら、とりあえず立てよ」


 ラツンジパに引き起こされながら、リエネは慎重に言葉を選ぶ。


「…分からん。ただ、その…調べたいことがあって、その為に協力してほしい、と…」

「はぁ?なんだよそりゃ…」

「えと…その"調べたいこと"と…スウォルのニオイとが関係ある…らしい」


 腑に落ちていないのを隠そうともせず、怪訝な表情でラツンジパは尋ねた。


「それで、なんて答えたんだよ」

「いや…答える前に消えた。"また会いに来る"と…」

「…何がしてぇんだよ、あのババアは」

「さぁな…」


 ラツンジパは問答の最中、返しがたどたどしいことに加えまったく目を合わせようとしないリエネに、鋭く問う。


「アンタ、なんか隠してねぇか」

「…そんなことはない。私もまだ、理解が追い付いていないだけで…」


 やはり視線を伏せ続けるリエネの様子が、"悪意を持って騙すつもり"にしては()()()()()過ぎる。

 リリニシアが名を偽った時と同様、言えない事情があるのではないか。

 そう判断したラツンジパは不信感を抱きながらも、その場は飲み込んだ。


「…そうかい」

「あぁ。…済まん」


 リエネも、それを察していた。


「次来たらどうするんだ?」

「…もう少し考えたい」

「そうか。…リエネさんよ、一つ教えてくれねぇか」

「なんだ?」

「アンタの中で、俺と他の連中との間には差があるか?」


 ラツンジパの奇妙な質問に、リエネはようやく視線をあげた。


「なに?どういう意味だ?」

「そのままだよ。()()()()に話せるけど俺には話せないことがあるか、って聞いてんだ」


 そう言うとラツンジパは親指を立て、洞窟の中を指し示す。


「それは…あると言えば、ある」

「…曖昧な答えだな」

「お前だけが、という話じゃない。話の内容によって、ヤツらの中でも話せる相手と話せない相手は別れる」

「なるほど、そりゃそうだ。なら質問を変える。アンタは──俺を信用できるか?」

「信用…」


 リエネの回答に誠実さを認めたラツンジパは、別の角度からリエネの意思を測ることにした。

 質問の意図を掴めず困惑するリエネに、ラツンジパは再び洞窟の中を指差す。


「罠を警戒してんだろ?俺が見張り代わってやるから入れよ」

「ラツンジパ…」

「俺を信用して代わるか、出来ないなら断ったっていい。もしかしたら、俺がアンタたちを罠に──」

「任せた、ラツンジパ」


 真意を引き出すべく揺さぶろうとするラツンジパの言葉を遮り、リエネは頷いた。


「…おいおい、いいのか?」

「あぁ。信用している相手ならなんでも明かすべきだとは…私は思っていない。だが──」


 動揺するラツンジパとすれ違い、洞窟の中へ向け歩き始めながら、"隠し事があることを隠す"のを止め、リエネは力強く断言した。


「私はお前を信用している。…何があるか分からん。気を付けろよ、ラツンジパ」


 そう言い残したリエネの背は、やがて洞窟に消えた。


「こうもハッキリ隠し事を認められると…はは。嘘つかれるよか、よっぽど気分いいや」


 背を見送ったラツンジパは、苦笑を浮かべながら誰にともなく呟き、手頃な岩を見繕い、腰掛けた。



──そうだ。

初めてじゃない。

私は既に、シェリルにも、スウォルにも、リリニシア様にも…隠し事をしてきている。



 リリニシア、レピと共謀し、双子に未だ隠しているヤクノサニユ国王・ゼオラジムへの不信。

 レピと共にリリニシアにさえ隠している、神槍・グラウムが玉座を狙っている疑惑。


 リエネの脳裏に、仲間たちに秘めてきた"隠し事"が蘇る。



それが一つ、増えるだけだ。

背負い切れるか、じゃない。

私が背負うんだ。

幼いアイツらには重すぎる荷を、私が代わりに。



「あ、リエネさん」

「…スウォル」


 考え事をしながら歩き続け、いつの間にか最奥に到達したリエネに、最初に気が付いたのはスウォルだった。

 シェリルは嬉しそうにリエネに駆け寄る。


「リエネさん、ラツンジパさんとすれ違いました?」

「あぁ…。代わってくれると言うんで、お言葉に甘えさせてもらった」

「やっぱり…!ラツンジパさん、気を遣ってくれたんですね!」


 瞳を輝かせてはしゃぐシェリルを見て、スウォルは顔を綻ばせ、共に行動していたリリニシアに語り掛けた。


「なんか、ちょっと見ねぇ間にすげぇ仲良くなってんなぁ」

「…そう、ですわね」


 リリニシアはシェリルの喜びように、言いようのない()()()を抱きながら、曖昧に頷く。


「今スウォルとリリニシアに、離れてた間の話を聞いてたところなんです!」

「そうか」


 当のシェリルはそんな二人の視線に気が付くこともなく、変わらず喜色満面でリエネに言う。

 微妙な表情で二人を見つめるリリニシアの肩を、レピは軽くトン、トンと叩いた。


「はい?レピさん?」

「後程、僕からもお話が」

「…承知いたしましたわ」


 レピの"お話"が、自らの抱いた違和感の正体だと察し、リリニシアは静かに頷く。


「ん?なんだよ二人とも、コソコソして…」

「こちらの話ですわよ」

「なんだよ、姉ちゃんもリエネさんと楽しそうだし…俺だけ仲間外れかよ──」

「違う!!」


 スウォルが唇を尖らせて発した"仲間外れ"と言う単語にリエネはすかさず、過剰なまでに強く否定した。


「リ…リエネさん?」

「お、落ち着いてくれよ…。そこまで本気で言ってねぇって…」


 シェリルとスウォルは、想定もしていなかったリエネの反応に虚を突かれ、言葉を詰まらせる。


「…」


 二人の耳目がリエネに集中する中、リリニシアはチラリと、"お話はリエネの反応と関係があるか"との問いかけを込めてレピを見ると、レピは静かに首を横に振って答えた。


「リエネさん…どうしたんですか…?」

「あ…済まない、その…」


 シェリルの声で我に返ったリエネは、一瞬にして空気が冷え込んだことを察し、申し訳なさそうに体を小さく縮こめる。


「ひ…久々に会えたというのに寂しいことを言うものだから、ついな…」

「あ、あぁ…。すいません、なんか…。そこまで言ってくれると思ってなくて…」


 釣られてスウォルも気まずそうに、しかし恥ずかしげに頭を頭を掻きながら、視線を伏せた。

 黙って様子を伺っていたガガーニムは、ボソリと呟く。


「…よい"仲間"なのですね」


 スウォルやリリニシアから聞いていた"ユミーナ"のこともそうだが、想像と異なるハリソノイア人。

 直接、その目で見る姿に、内心で驚きながら──。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は8月24日19時頃にXでの先行公開を、25日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

合流したリエネの為、簡単にだが説明を繰り返すリリニシア。

それを聞きながら、レピはガガーニムに"会議に同席できるのか"を問う。

ガガーニムの答えは──。


次回「前例と特例」

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