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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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90/95

#90 自分の信じている真実

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

他の仲間たちが洞窟の中で言葉を交わす間、罠の可能性を警戒し出入り口に残ったリエネの元に、監視していたというクレンが姿を見せた。

リエネは彼女に、スウォルを指して言った"変なニオイ"という言葉の真意を尋ねる。

 シェリル、レピ、ラツンジパと共にいたリエネが、先を行くスウォル、リリニシアと合流する前、不意に姿を現したクレンがシェリルに漏らした、"双子なのに、お姉さんからは変なニオイがしない"という言葉。


 その真意を問われ、クレンは不敵な笑みを絶やすことなく質問を返した。


「あぁ、その話。気になるの?」

「勿論。これまでの旅路の中、貴方と同じマキューロ人であるレピも、そんなことを口にしたことはなかった」

「ふふ…。()()もそう言ってたわ。よっぽど信頼してるのね、レピ(あの子)のことを」

「スウォル自身にも、その話を?」

「そう言ってるじゃない」

「…それで、その"変なニオイ"とは」


 レピが人をおちょくる時とよく似たクレンの表情に、リエネは内心で不快感を抱きながらも、表出させないよう努め、改めて問う。


「とは、って言われてもねぇ…。一応、今は合わせておこうかしら」

「合わせる?なんに…?」


 ガガーニムがリリニシアとスウォル本人に告げた言葉を、クレンはそのまま引用した。


「"人間からは感じたことがないニオイ"とだけ、答えておくわ」

「…」

「怖いわねぇ。そんな目で睨まないでよ。…ふふ」


 "今は合わせておく"、"〜とだけ答えておく"。

 これらを"手元にある情報を、意図的に伏せておく"という宣言だと受け取ったリエネの中で、不快感は内側に留めておける許容量を超え、瞳に現れる。

 それでも尚、意に介することなく、クレンの表情は変わらない。


「いずれ分かるわ。()()()ね」

「…どういう意味です」

「そのままの意味よ。…さて、私はそろそろお(いとま)しようかしら」

「まだ話は終わっていません」

「"私の用件は済んだ"って言ったでしょ?」


 体を反転させ背を向けたクレンに食い下がるリエネだったが、クレンは顔も合わせず切って捨てるが、リエネは食い下がった。


「私の用件は済んでいません」

「あら、そうなの。私の知ったことじゃないわね」

「…」


 クレンの傲慢さに、リエネは顔を顰める。

 背を向けたまま僅かに首を捻ってその表情を確認したクレンは、不気味に口元を歪めた。


「どうしても"貴方の用件"に付き合わせたいなら、私が付き合いたくなるような対価を差し出すことね」

「…"取引"、ということですか」


 かつて幼いユミーナが自分の為に繰り返してきた"取引"という単語を口にしながら、リエネは無意識に、強く拳を握り締める。


「…貴方は私に、何を望まれる」

「そうねぇ…。今のハリソノイアの頂点…"ユミーナ"とやらについて聞きたいかしら」

「!」


 まさに今、思い浮かべていた名を挙げられ、リエネの心臓は大きく跳ねた。


「何を企んでるの?」

「…企む?」

「スウォルは"平和と外交を重んじる国に作り変える"とか言ってたけれど…本当の狙いは何?」

「お聞きの通り、それこそがユミーナ様の狙いです」

「へぇ…?」


 クレンは再びリエネに向き直り、ぐっと顔を近付け、値踏みする様にその姿を眺める。


「ユミーナ様は、かつてのハリソノイアという国の在り方、国民の在り方に辟易(へきえき)しておられます」

「ハリソノイア人なのに?」

「はい。他国に移り住むことも考えたと言いますが、移った先がハリソノイアに襲われる可能性があることから、根本的に変えるべきだと決断したと」


 鋭く射竦めるクレンの視線に臆することなく、リエネは身じろぎさえせず、淡々と答えた。


「私の言葉に偽りがないことは、貴方なら分かるはず。元老院に名を連ねるような魔術師に、嘘は通用しないと伺っております」

「そうみたいねぇ…。少なくとも()()()()()()()()"真実"を話してる。ふふ…」


 体勢を戻しながら、敢えてリエネの不快感を駆り立てるように、クレンは笑う。


「…何が言いたいんです」

「貴方自身が騙されていたとしたら、貴方からは分からないものねぇ?」

「あり得ません」


 クレンの揺さぶりを、リエネは一切揺らぐことなく切って捨てた。


「あら、なんで言い切れるの?貴方も嘘が分かるのかしら?」

「ユミーナ様に対して、そんな大それた能力は必要ありません。単純な人間です。貴方も一度お会いすれば分かるでしょう」

「へぇ…。会ってみたいわねぇ、それは…」


 リエネの回答を受けクレンは満足げに、これまでの不気味な笑みではなく、心から興味深く、楽しそうな微笑みを見せ、続ける。


「いいわ。真贋(しんがん)はさておき、貴方が"自分の信じる"真実を話してくれたのは確かだものね」

「では…!」

「私も話してあげる。スウォルの"ニオイ"のこと」



 同じ頃、洞窟内──。


「──といった具合に、他の元老院の方々に召集をかけて頂いてる段階なんですの」


 分断されていた間にスウォル、リリニシアがガガーニムと進めていた話を、改めて仲間たちに詳しく共有していた。


「ロガーメーポ・ムータオヒカ卿と、既に接触しているという話でしたが…彼はどちらに?」


 好奇心を抑えきれない、という様子で、レピが尋ねると、スウォルは首を横に振った。


「分かんねぇ。言いたい放題言った後、さっさと消えちまったからな…」

「…ジスタム卿は、彼の居場所をご存知だったりしませんでしょうか?」

「いえ…。しかしマキュラ卿とディアモス卿が到着すれば、姿を現すでしょう」

「…そう、ですか」


 (すが)る思いで問うレピに、ガガーニムもスウォル同様、首を振って答える。

 レピが肩を落とし項垂れると、シェリルとラツンジパは苦笑いを浮かべながら同情を示した。


「残念でしたね、レピさん」

「いいじゃねぇか兄ちゃん、遠からず現れるってんだしよ。そう落ち込むなよ」

「…ありがとうございます」


 その様子を見て、レピが会いたい理由を知らないスウォルとリリニシアは顔を顰める。


「えぇ…?あんなヤツに会いたいのか…?」

「ワタクシとしては、あまりオススメはいたしませんけれど…」

「それが…そのロガーメーポって人が、"禁じられた魔法"について詳しいらしくて」

「あぁ、なるほど…」


 シェリルの説明を受け、レピの"禁じられた魔法"に対する熱量を知る二人は、呆れ半分に声を揃えた。


「ふむ…確かにムータオヒカ卿は若い頃、他国を飛び回って研究に精を出していたと聞きます」


 一歩引いて冷静に頷くガガーニムに、レピは飛び掛かる勢いで尋ねる。


「あ…な、何か聞いておられませんか!?些細なことでもいいんです、何か…!」

「す、すみませんが、私は何も…」

「くぅ…!」


 心底から悔しそうに、レピは唇を噛む。


「祖母ちゃん以外にもあんな感じなんだな、"禁じられた魔法"のことになると。…元気出せって兄ちゃん」


 ルヴィニケンプに対しての例しか見ていなかったラツンジパは、改めて見たレピの勢いに少し引きながら、丸まった背を数度、優しくポン、ポンと叩く。

 一方、既にその熱意を知る三人は、冷めた目でその姿を眺め、呟く。


「まぁ何か、うん…。安心したよ、俺…」

「ワタクシもですわ…。"あぁ、レピさんだなぁ"って感じでよろしいんじゃないでしょうか、知りませんけれど」

「ルヴィニケンプ様には"新手の変態"とか言われてたよ…。──ところでスウォル、さっきの…"ワーサック"?って名前も、その人から聞いたって言ってたよね?」


 レピの話が落ち着いたと見たシェリルが咳払いと共に真剣な表明を作ると、スウォルに向き直った。


「ん…あぁ、昔馴染みだって」

「そっか、”禁じられた魔法”の研究でヤクノサニユに来た時に知り合った、とかってことなのかな…?”ドラベレアル”とまで、ハッキリ言ってたんだよね?」

「っていうか、俺が"スウォル・ドラベレアル"って名前を言ったら、"じゃあワーサックの倅か"って」

「うーん…やっぱり知らない名前だなぁ…。──あ、リリニシアは知ってたりしない?」

「え…きゅ、急になんですの?」


 唐突に話を振られ、リリニシアは言葉に詰まりながら答える。


「ほら、父さんは陛下に仕えてた訳だし、その辺で繋がりがあったりしないかなって思って」

「な、なるほど…」


 瞬間、リリニシアは返すべき言葉を思案する。



二人は知らない。

グラウム様が語った、"クーヤイ様はハリソノイアとの戦いに出たことがない"という事実…。


下手なことを口にしてしまえば、二人に怪しまれてしまうかも知れない。



 ふと、リリニシアの脳裏を一つの考えがよぎる。



──明かしてしまってもいいのでは。



 リリニシアは瞬時にそれを否定した。



…いいえ、ダメ。

他にもう一つ、明かしていない"秘密"があることを、グラウム様は教えてくださった。

それが国王(お祖父様)により封じられ、グラウム様からは明かせないことも。


クーヤイ様が何故、そんな嘘をついたのかは分かりませんけれど…あの様子、つまらない意地や見栄では決してないはず。



 国を発つ直前、シェリル、スウォルと共に見た最後のクーヤイの姿と、その"ハリソノイアへの怯え方"を思い返す。



クーヤイ様の失踪で、二人はただでさえ心を痛めていると言うのに…心労を増やす訳にはいかない。

何より──肉親に裏切られる苦しみを、二人に感じさせたくない。



 次いでリリニシアは、帰国後にレピとリエネを連れて謁見した際の、(祖父)への不信を噛み締めた。

 結果、リリニシアが選んだ返答は──。


「申し訳ないですが、ワタクシも覚えがございませんわ」


 クーヤイの嘘には繋がり得ない、当たり障りのない否定だった。



まぁ、知らないお名前なのは事実ですしね?

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は8月10日19時頃にXでの先行公開を、11日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

"ワーサック"についての話が落ち着き、ラツンジパはリエネの監視を名目に洞窟を出る。

洞窟内のシェリル、スウォル、リリニシア、レピは、離れていた間の出来事を語り合ことに。


次回「勇者一行の報告会」

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