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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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88/95

#88 勇者一行、歓喜と牽制

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

シャファルノールに辿り着いたシェリル、レピ、リエネ、ラツンジパの四人を、現地の男たちは”聞いていた情報と違う”と不審がる。

そこに一報を受けたガガーニムの元からスウォルとリリニシアが現れ、仲間たちはおよそ12日ぶりの再会を果たした。

「レピさん、リエネさんも…!無事でよかったですわ、本当に…!」


 シェリルを抱き締め、涙を流したまま、リリニシアは残る仲間たちにも視線を向ける。


「あぁ、君たちこそ。心配したぞ、スウォルに…リリー。いったいどうやって助かったんだ?」


 リエネはリリニシアに対し、敬語と本名を出してしまわぬように意識しながら応じた。


「それがさぁ、俺もリリーも覚えてねぇんだよ。俺なんかは、目が覚めたらラツンジパさんの家だったしさ」


 レピは、難しい表情でスウォルを見つめ、答える。


「…なんにせよ本当に、ご無事でよかった」

「え、な、なんすか?…あ、もしかしてなんか──」

「驚きましたわよ、ラツンジパさん!」


 スウォルがレピに意図を尋ねようとした瞬間、リリニシアは大声でラツンジパに呼び掛け、スウォルの声を掻き消した。


「まさか一緒に来てたなんて!」

「よう。アンタに一つ、文句でも言わせてもらいたくてな」

「文句ですの?」

「ま、それは後でいいさ。()()()


 首を傾げるリリニシアに、ラツンジパはわざとらしく強調しながら、教えられた偽りの名で呼ぶ。


「…あら、もしかして…?」


 "名を偽ったことへの文句だ"と察したリリニシアが、レピとリエネにと視線を向けると、二人は無言で頷いた。


「あー、その…おほほ…」

「お二人とも、彼らはお仲間で間違いありませんかな?」


 スウォルと気まずさをごまかすように笑うリリニシアに、もしもを考え、弓を片手に後から追いついたガガーニムが声を掛ける。

 シャファルノールの男たちは姿勢を正し、ガガーニムを迎えた。


「はい、間違いないです。ラツンジパさんも知り合いです」

「そうですか。無事に再会できてよかった。…(コレ)を持ち出す必要もなかったか。皆様を解放して差し上げなさい」

「はっ」


 ガガーニムの命を受け、先程まで代表としてシェリルたちと問答していた男は、一行の手首を拘束する土の魔術を解く。


「さ、シェリル」


 シェリルを解放したリリニシアが手でスウォルを示すと、シェリルは一目散に駆け寄り、抱き着いた。 


「うん…スウォル…!」

「うわっ!?な、なんだよ姉ちゃん…!やめてくれよ…」

「スウォル…。スウォルゥ…!」

「…姉ちゃん?震えて…?」


 恥ずかしさから抵抗を見せるスウォルだったが、姉の様子に違和感を抱き、羞恥に困惑が勝る。

 そんな二人の姿を見つめ、リエネはボソリと、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。


「シェリル…」


 狼狽えるスウォルに、ガガーニムが微笑みと共に語り掛ける。


「久方ぶりの再会なのでしょう。受け止めてあげてください。…後は私が請け負おう。皆、仕事に戻ってくれ」


 男たちがその場を離れると、ガガーニムは改めて、後から聞いた四人に向き合い、小さく頭を下げる。


「申し遅れました、私はガガーニム・ジスタムと申します」

「…では、貴方がダヲジア卿の後任だという?」


 男たちが口にしていた"ジスタム卿"、ラツンジパの"ガガなんとか"、クレンの"ガガちゃん"との一致からレピが察し、尋ねると、ガガーニムは頷いた。


「如何にも。2カ月ほど前、元老院の末席に就任いたしました」

「元老院が(おん)自らお出でになるとは…。レピ・エルトナと申します」


 レピも応じて頭を下げながら名乗ると、仲間たちも続く。


「リエネ・セキュトノウです」

「あ…シェリル・ドラベレアルです」

「ラツンジパ・ウティムカホア…です」

「…!」


 ラツンジパの家名を聞き、ガガーニムは目を見開いた。


「ウティムカホア…。では…あの"もう一人の魔女"ルヴィニケンプの?」

「…はい。ルヴィニケンプは俺の祖母です」

「なんと…!名を聞いて"まさか"とは思いましたが、本当に…」

「名って…"ラツンジパ"だけで、ですか?」


 不思議そうに尋ねるラツンジパに、ガガーニムは推測の根拠を語る。


「こちらのお二人から、"もう一人の魔女"と接触したことは聞いております。そしてかの村には、昨今では形骸化してしまっている、古い命名則があると存じています」


 ガガーニムの言葉からリリニシアは、ラツンジパと初めて出会った際の会話を想起した。


「あぁ、そう言えば仰ってましたわね。"ラリルレロで始まり、パピプペポで終わる名前を"って」

「そんな形骸化した規則に則った名が、お若い与えられた。ということは古い世代の者、あるいはそれに強く影響を受けた者が名を与えた、と考えるのか自然でしょう。そして、かの村で真っ先に思い浮かぶ"古い世代の者"となると──という訳です」

「…なるほど」


 話していない部分を見通され気味の悪く感じながらも、ラツンジパはひとまず納得し、頷く。


「もっとも、"命名則に沿った若い方"はもう一人おられたようですが」


 ガガーニムがレピに視線を向けると、レピは恐縮した様子で頭を下げた。


「僕も同じ村の産まれですので」


 彼らの話に触発され、今度はスウォルがシェリルに尋ねる。


「そうだ、名前と言えば…姉ちゃん、"ワーサック・ドラベレアル"って名前、聞いたことあるか?」

「え、ワーサック…?知らないけど…ドラベレアル?」


 自身と同じ家名を関する、しかし聞き覚えのない名に、シェリルは目をパチクリとさせながら首を横に振った。


「あぁ。やっぱ知らねぇか…」

「うん…誰なの?」

「いやさぁ、俺にも分かんねぇんだよ。なんつったっけかな、あのクソジジイ…」


 誰にともなく小さく呟いたスウォルを、ガガーニムが周りを気にしながら窘めた。


「スウォル殿、ここでは人に聞かれるかも知れませんので、言葉にお気を付けください。…ロガーメーポ・ムータオヒカ卿です」

「あ、すいません…。そう、その爺さんに名前を言ったら、"ワーサックの倅だろ"って」


 済まそうに頭を掻き、倣ってキョロキョロと見回しながら、スウォルは質問の意図を語る。


「え…何言ってるの、私たちの父さんは──」

「いや俺は分かってんだよ」

「そっか、そうだよね。父さんの兄弟とか、更にお父さんとか?けど、なんでマキューロの人が…?」

「スウォルくん、よろしいですか」


 姉弟の会話に、レピが割って入った。


「え?」

「お二人は既に、ムータオヒカ卿と接触しているんですか?」

「あ、はい。しっかり話した訳ではないですけど。あとクレンって方とも」

「…では、既に元老院のうち三名と…」


 "本人から聞いて知っている"と言えば、会ったことを伏せるよう頼まれたのを反故にすることになる為、レピは慎重に言葉を選ぶ。


「はい。他の人とも会わせてほしいって、ガガーニム様にお願いしてるとこです」

「既に召集は掛けております。残りの二人も、遠からず皆様のお目に掛かることになるでしょう」

「ご協力、感謝致します。…ジスタム卿、貴方はどこまで?」

「…ここではなんですので、その話は後程」


 レピの問いに、ガガーニムは再び、周囲を気にする素振りを見せながら答えた。


「…承知いたしました」

「皆様、積もる話もございましょうが…場所を変えませぬか。この人数では手狭でしょうが、私が(ねぐら)として使っている洞窟にご案内いたしますので」


 ガガーニムの提案に一行は頷き、彼の後に続く形で移動を開始する。

 その道中──。


「あ、そうですわ!ラツンジパさん!」


 リリニシアは両手を打ち、パンッと音を立てる。


「ん…なんだ?」

「レピさんに渡してくださいましたか?例のヤツ」

「あぁ」

「はい、確かに受け取りました」


 ラツンジパに目で促され、レピは懐から"例のアレ"──ルヴィニケンプの力を借りたリリニシアが、風の魔術の媒介として完成させた宝石を取り出した。


「驚きましたよ、まさか村に滞在した僅かな時間で媒介を作り上げてしまうとは」

「ルヴィニケンプ様のお力があってこそ、でしたけれどね…。けれどここに着いてから、ガガーニム様にも手解きを受けまして…んんっ!ご覧あそばせ!」


 咳払いと共に、掌を顔の高さまで持ち上げ──。


風の魔術(オディヌ)!」


 手の中に、小さな竜巻を作ってみせる。


「おぉ…!」

「ふっふっふ…風の魔術、体得いたしましたわ!」


 感嘆するレピの表情を見たリリニシアは、嬉しそうに宣言すると、竜巻を握り潰した。

 言葉を失うレピに、ガガーニムは先頭から語り掛ける。


「これでヤクノサニユ人だと言うのですから、末恐ろしい才です」

「…えぇ、同感です」


 リリニシアたちがルヴィニケンプの元に滞在したのはおよそ2日間。

 恐らくはシャファルノールに到着してからも2日ほどと推測したレピは"恐ろしいのは、短時間で習得まで導いたルヴィニケンプ様と貴方だ"とは、口にしないでおいた。


「ふっふーん!…さ、お返しくださいまし」

「え、えぇ…そうですね」


 差し出されたリリニシアの手に、レピが宝石を渡そうと手を伸ばすと──リリニシアはその手を掴み、グッと引き寄せる。


「!?」


 体制を崩したレピの耳元に唇を寄せ、囁いた。


「スウォルについて、後でお話が」

「…!」


 "それまで余計なことは言うな"と捉え、レピが小さく頷くと、それを確認したリリニシアは、上機嫌な様子で宝石を自らの懐に納める。


「はい、確かにご返却いただきましたわ♪」


 その後も歩き続け、一行はガガーニムの洞窟へと辿り着いた。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は本日24時頃にXでの先行公開を、明日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

ガガーニムの案内に従い、辿り着いた洞窟の中へと消えていく一行。

だがリエネだけは、直前で足を止めた。

それに気付いて引き返してきたシェリルに、リエネは"罠の可能性を考えてしまう"と漏らし──。


次回「ハリソノイアの臆病者」

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