# 87 勇者一行の再会
閲覧いただき、ありがとうございます。
みそすーぱーです。
noteにて、本作を要約したあらすじを公開しています。
復習などにご活用ください。
https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562
以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。
~前回のあらすじ~
スウォル、リリニシアとの合流を目指しシャファルノールへと足を踏み入れたシェリル、レピ、リエネ、ラツンジパの前に現れたクレン。
彼女との会話から”思い描く元老院像”の不正確さを感じながら、四人はシャファルノールの住人と接触を果たす。
仲間が全員頷いたことを確認したレピは、一度大きく息を吐き、声をあげた。
「──失礼します」
まもなく、木々を掻い潜った男が数人、姿を見せる。
「何者だ。…貴様、マキューロ人か?」
鼻を鳴らしながら高圧的に問う先頭の男に、レピは頷きながら、まず手でラツンジパを指した。
「レピと申します。僕とこちらのラツンジパはマキューロ人ですが、こちらのお二人はヤクノサニユ人です」
続けてシェリルとリエネを示すと、二人はそれに合わせ、小さく会釈する。
男は僅かに首を傾げ、四人の顔を順番に見回した後、尋ねた。
「何故マキューロ人が、他国の者と共にいる」
「僕は一人で旅をしている途中で皆さんと知り合い、加えていただきました。彼は──」
「旅はしちゃいないが、俺も似たようなモンだ。村を尋ねてきたコイツらに同行させてもらってる」
紹介しようとするレピを遮り、ラツンジパは自ら答える。
「村…」
男たちがラツンジパを見る目が途端に鋭さを増した。
ヤクノサニユからやってきた者が立ち寄る、国境に近しい村とそこに住む若者──ラツンジパが”忘敬者”である可能性が、劇的に高まったからだ。
男たちの敵意が強まるのを感じながら、レピが再びシェリルとリエネを指し、話を続ける。
「こちらのお二人は、ヤクノサニユの国王ゼオラジム陛下の命を受け、使者としてお出でになりました」
レピが目配せすると二人は頷き、順に自らの名を名乗った。
「シェリルです」
「リエネと申します」
「…」
男たちが視線を送り合い、頷く様子を見せる中、先頭の男が無言で次の言葉を促すと、レピはそれに応じる。
「共に行動していたヤクノサニユ人の男女二名とはぐれてしまいまして。スウォル、リリーと名乗るヤクノサニユ人が、こちらに来ていませんでしょうか?」
「おかしな話だな」
「…というと?」
「確かにその二人は来ている。レピ、シェリル、リエネって名前も聞いているが──」
男は一度、言葉を区切り、改めてラツンジパを鋭い目で睨み付けた。
「仲間はその三人、という話だったが」
ラツンジパは落ち着いた声色で答える。
「俺が加わったのは、その二人とはぐれた後のことだ。だがその二人とも面識はある。”ラツンジパ”って名を二人に伝えてくれりゃあ分かるはずだ」
「…どういうことだ。何故はぐれた後に加わったお前が、別行動の二人と面識がある?」
「この三人が来るより前に、スウォルとリリーが村に来たんだ。二人の出発を見送った後、この三人が来た」
「…おい。ジスタム卿にお伝えし、ご判断を仰いできてくれ」
先頭の男が、仲間の一人に声を掛ける。
「分かった。…ラツンジパ、と言ったな」
「そうだ、しっかり伝えてくれ」
ラツンジパが男たちとやり取りしている間、リエネはチラリとシェリルを見た。
静かに見守るシェリルの姿に安堵し、思案する。
あのクレンとかいう女が現れてくれたことに、感謝せねばならんか。
今、感情に飲まれず冷静でいられるのは──前もって”スウォルとリリニシア様がいる”と聞いていたおかげだろう。
特にあの、”人に似た何か”と戦ってから…いや、もっと前。
スウォルやリリニシア様と離れてからのシェリルは不安定だ。
離反されれば致命的な状況にも関わらず、その可能性も考えずレピにティサン人との関わり方について説教したのも、恐らくは自身を安心させる為、”信頼を確かめ合った”という結果だけを目指したからか。
クレンから先に状況を聞き、言わば”心の準備”をしていなければ…ここでも感情に任せて声を荒げ印象を悪くしていたかもしれん。
一方、レピも同じくクレンへの感謝を抱いていたが、それ以上にラツンジパと男のやり取りを涼しい顔で、しかし背に冷や汗を滴して見守っていた。
そんなレピの心境など知る由もなく、先頭の男は続ける。
「前の二人が来た時は見送ったのに、何故この三人には同行した?」
「それは…」
ラツンジパは一瞬、答えに窮した。
ここまでの答弁で、ラツンジパは一度も嘘を言っていない。
嘘がなければ、ボロが出ることもない。
だがこの質問に限っては、事実──リリニシアが身分と名前を偽ったことに一言言いたいことや、想像していた”ハリソノイア人”と異なるリエネへの興味──は明かせない。
今は自分も、リエネの人種とリリニシアの身分と名について偽っている側の一人だからだ。
仲間たちが息を飲む中、ラツンジパは答えた。
「…ちょうどよかったんだ」
「なに?」
「村を出たかったんだ。あの忘敬者どもにうんざりしてて…」
「なんだと!?」
男たちは一人の例外もなく、目を見開き声をあげる。
声こそあげなかったが、目を見開いたのは仲間たちも同じだった。
「俺の祖母ちゃんが…あんたたちと同じ、まともな考えを持ってる。村の甘ったれた連中には、ガキの頃から嫌気がさしてて…」
「…」
ラツンジパに対する男たちの目付きは、睨み付ける鋭いものから困惑と喜びに変わる。
「スウォルとリリーの時は…なんていうか、踏ん切りがつかなかったんだ。けどその後にこの三人が来て、”シャファルノールに行く”って言うから…こんな機会、二度とねぇんじゃねぇかと思った。それで俺も連れてってくれって頼んだんだ」
”忘敬者からの鞍替え”を示すラツンジパの言葉に男たちがどよめき、彼らの中でのラツンジパの立ち位置は、”異教徒”から”慧眼の若者”に変化した。
────────
「夜分に失礼いたします!ジスタム卿、おられますか!」
一方、ガガーニムと共にスウォル、リリニシアが待機する洞窟の前で、伝言に遣わされた男が大声で呼び掛ける。
まもなくするとガガーニムが一人、のそのそと洞窟から姿を見せた。
「いるよ。どうした?」
「はっ。件の”使者団”だと名乗る者が現れました」
「そうか。…どちらに?」
キョロキョロと辺りを見回すもそれらしき姿が見えず、ガガーニムは尋ねる。
「”ご案内せよ”とのことでしたが、不審な点がございましたので、ご指示をいただきたく」
「不審?」
「三人と伺っておりましたが、現れたのは四人でした」
「なんだと…?どういうことだ、お二人は確かに”三人の仲間”とおっしゃっていたが…」
情報の不一致に、ガガーニムは小さく呟き、首を捻る。
「本人が言うには、”お二人とも面識があり、名前を伝えれば分かるはずだ”と」
「ふむ…。それで、その名前は?」
「”ラツンジパ”と名乗りました」
「その名は…」
「ジスタム卿?」
ガガーニムは囁くように言うと、キョトンとする男に、ごまかすように体を翻した。
「いや、こちらの話だ。──確認してくる。しばし待ってくれ」
「はっ」
────────
「ジスタム卿からのご指示があるまで、ここで大人しくしていてもらおう」
先のやり取りの後、スウォルやリリニシアにそうしたように、四人の手首を土の魔術で拘束し、男たちが四人を取り囲む。
「それは勿論そうしますが…拘束までする必要が?」
素直に応じながら問うレピに、男は鼻で笑い、リエネを指して答えた。
「あんなバカデカい武器を背負ったヤツを自由にさせておけると思うか?それも、よりにもよって斧など…!」
「…なるほど」
レピは納得した様子で頷き、それからしばらく、誰も口を開かない、無言の時間が訪れる。
それを打ち破ったのは、森の奥から駆けてくる二人分の足音と──。
「皆様〜!!」
「おーい!みんなー!!」
嬉しそうに声を弾ませた、リリニシアとスウォルの声だった。
「スウォル!リリニシ…リリー!!」
シェリルは伏せている本名を口に仕掛けながら、クレンの忠告を思い出し、咄嗟に言い換えて呼び掛ける。
「姉ちゃん!レピさん、リエネさんも!よかった、みんな無事だったんだな…!」
「シェリル…心配してたんですのよ!…というか、ワタクシたちこそ心配かけたと思いますけれど」
「本当だよ…!二人が崖崩れに巻き込まれた時、本当にどうしようかって…!よかった、本当に…!!」
涙を流し安堵するシェリルを、リリニシアは強く抱き締めながら、共に涙した。
スウォルは派手な動きは見せずとも、やはり僅かながら声を震わせる。
こうして、およそ12日ぶりに、双子の姉弟と幼馴染みは再会を果たした。
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~次回予告~
涙混じりに再会を喜びあう一行。
ガガーニムから"間違いないか"と尋ねられ、ラツンジパのことも合わせ、スウォルたちは頷いた。
次回「勇者一行、歓喜と牽制」




