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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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86/95

#86 シャファルノールの"森"

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


今月は通常更新に加え31日にも更新を行います。

またそこから始まり8月1日、2日の三日間、連日で更新致します。

具体的なスケジュールは活動報告「流石に厚くなってきたやん」に記載がございますので、よろしければご確認ください。


noteにて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

シャファルノールに差し掛かったシェリル、レピ、リエネ、ラツンジパと接触した少女は、いくつかの問答の末、”元老院の一人、クレン・メジャルカ”だと名乗ると、シェリルやリリニシアに見せたのと同様、自らの年齢を変化させた。

「それは…無礼をお許しください。──個質魔術、でしょうか」


 使えぬ者にとっては屈辱、使える者にとっては手の内を探るのと同義の為、使えるかを尋ねること自体が危うい個質魔術。

 40代半ば程の姿に”変身”したクレンに、レピが恐る恐る問いかけると、クレンは気にも止めない様子であっさりと頷いた。


「えぇ、そうよ。”肉体年齢を変化させることが出来る”。これが私の個質魔術よ。精神も年齢に引っ張られるけどね」

「では…本当に、貴方がクレン・メジャルカ卿…!」

「そう言ってるでしょう。これ言うの二回目よ?」

「…お初にお目に掛かります。何故わざわざ、僕たちに個質魔術を…?」


 明かすどころか使ってみせたクレンに、レピは質問を重ねる。


「わざわざ触れ回りもしてないけど、特に隠すつもりもないもの。あの二人にも見せたし」

「さっきも言っていた”あの二人”というのは…」

「もちろん、お察しの通りスウォルとリリー…いえ、リリニシア姫」

「!──名乗ったのですね、リリニシア様は」

「少し揺さぶってあげたら、スウォルがボロを出したのよ」

「あぁ…」


 付き合いの浅いラツンジパを除き、三人が納得の吐息を漏らした。


「あ、でも元老院(私たち)以外にはリリーで通してるから、貴方たちもボロ出さないように気を付けなさい?」


 咳払いし、レピが続ける。


「んん…ご忠告、感謝いたします。──メジャルカ卿はどうしてここに?僕たちのことを聞いていたとしても、今ここに来ることは、お二人にとって知る由もないはずですが」


 ラツンジパやルヴィニケンプから”2日前に村を出た”と聞き、差の程度を把握している自分たちと違い、先行するスウォルたちはそれを知らない。

 レピの疑問に、クレンは意味ありげな微笑を浮かべ、答えた。


「それも個質魔術よ」

「個質魔術を、二つ扱えるのですか!?」

「まさか。私のじゃないわ。流石に他人の個質魔術を勝手にバラす訳にも行かないから…”誰のモノか”も、”具体的にどんな能力か”も内緒、とさせていただこうかしら」

「なるほど…」

「…なんでもアリだな、個質魔術…」


 レピが興味深げに質問を重ねる傍ら、リエネがボソリと呟くと、ラツンジパとシェリルも頷く。


「だから言ったろ、”生まれつきの才能がなけりゃ使えない”って」

「た、確かに…年齢を変えるなんて、練習してどうこうってモノじゃないですよね…」


 三人が呆気に取られる様を横目で確認したクレンは、少し満足げな表情を見せ、続けた。


「ふふ…ともかくその、他の誰かの個質魔術で”貴方たちが今、ここに来る”ことを把握した上で見に来たのよ」

「見に来た、ですか?それは何故…?」

「あのねぇ…。見に来た理由なんて、”見たかったから”に決まってるじゃない」

「そ、そうですか…」

「特に…あの子の、双子のお姉さんとやらをね」


 そう言いながらクレンは再び横目で、しかし先ほどまでとは違う鋭い瞳で、シェリルに目を向ける。


「え…わ、私ですか?」

「ふふ…もう私の気は済んだわ。これで失礼するわね」


 一人満足した様子のクレンはヒラリと身を翻し、四人に背を向ける。


「あ…ま、待ってください!」


 咄嗟に引き留めたのは、クレンの”お目当て”──シェリルだった。


「あら…何かしら」

「さっきの、どういう意味なんですか!?”双子なのに、私からは変なにおいがしない”って…!スウォルになにかあったんですか!?」

「これから会うんでしょう?自分で確かめてみたらいいじゃない」

「そんな──」

「このままもう少し行けば、シャファルノールの自警団と接触するわ」


 クレンはシェリルの叫びを遮り、行くべき方角を指差して言う。


「貴方たちのことは”ヤクノサニユから使者団”──つまり元老院の客として周知しているから、手荒な真似はされないはず。あとはその自警団に従っていれば、二人のいる洞窟に案内されると思うわ。…まぁ、三人だと思ってるから悶着はあるかもしれないけど」

「…」

「ただ、私とあったことは伏せておいてくれるかしら」


 クレンの不可解な要請に、リエネが尋ねる。


「何故です?」

「ガガちゃんにお小言を言われるのがイヤだからよ」

「ガガちゃん?さっきも言っておりましたが…」

「いえ、こっちの話。──じゃ、またね」


 そう言い残しクレンは一人、深い暗い夜の森に消えた。

 僅かな間の後、やがて最初に口を開いたのはラツンジパだった。


「あれが元老院…クレン・メジャルカか…!気味の悪ぃ女だ…」

「言ってはなんだが同感だな…。まさか年齢を操るとは…」

「二人とも、言われた通りまもなく接触するはずですから…状況は選んでくださいよ…」


 リエネが同意すると、レピは二人をやんわりと諌めながらも、否定の言葉は口にしなかった。

 一方シェリルは、はぐらかされた弟の安否が気になってそれどころではない。


「スウォル…。皆さん、急ぎましょう!」

「あ、あぁ…そうだな」


 シェリルの剣幕に気圧されながら、四人はクレンの指差した先へと歩みを進めるものの、やはりその最中も話題が変わることはなかった。


「アイツも気味悪ぃが、俺たちが来ること分かってたってのもな…。ひょっとして今も、どっかから見られてんじゃねぇか?」

「いや、恐らくそれはないよ」


 辺りを見回して身を震わせるラツンジパの懸念に、レピは首を横に振りながら答える。


「え?」

「厳密に言えば、そういった個質魔術の使い手がいる可能性はあるけど、メジャルカ卿の言っていた”他の誰か”ではない、かな」

「なんで分かるんだよ?」

「リエネさんはお分かりでしょう?」

「…まぁな」


 レピに話を振られ、リエネは頷いた。


「は!?なんで!?」

「シェリルさんは?」

「あ、私も一応…」

「ウソ!?」

「つまり”魔術の知識の問題ではない”ということだよ。シェリルさん、説明をお願いしても?」


 張り詰めた神経をほぐすべく、レピはシェリルを話に巻き込む。


「えっと…見てたなら四人いることも知ってたんじゃないかなって…」

「…あ!」

「はは…少し注意力が足りていなかったね」

「ぐっ…マジで恥ずかしいなコレ…」


 レピに笑われ、返す言葉にないラツンジパは、顔を赤らめながら体を小さく縮こめた。


「あの、でもほら!”リリニシアが国の予算を使い込んだ”って聞いて、すぐに”ただの使者にそんなこと出来るのか”って言われましたし!た、旅の疲れが出ちゃったんじゃないかなって…」

「そ、そう!そういうこと!いいこと言ったぞシェリル!」

「…ふふ」


 調子よく乗っかるラツンジパにシェリルが笑みを漏らすと、狙い通りシェリルの精神が和らいだと見て、レピは内心、ラツンジパに感謝の念を抱く。

 リエネも微笑ましく思いつつ、真面目な表情を崩すことなく新たな疑問を投げ掛けた。


「それよりも私は"ガガちゃん"とやらが気に掛かる。元老院である彼女に小言が言える立場となると…」


 その疑問に、レピも瞬時に顔を引き締める。


「そうですね、例の…ダヲジア卿の後任として元老院に加入した、"ガガなんとか"その人でしょう」

「出来ればまずは、その男と接触したいところだが…というかなんか、思っていた感じと違ったな…」


 話を逸らす好機と見たラツンジパは、振り返って先ほどまでいた方角を見ながら呟くリエネに、ここぞとばかりに強く同意した。


「あぁ、俺も驚いたぜ。祖母ちゃんみてぇに”余所者は出ていけ”みたいに言うモンだと思ってたが、今後の動き方の説明までしてくれるとはよ。隷我──あー…原理主義者のはずなのに…」

「そうだね…。正直、僕にとってもかなり意外だった。メジャルカ卿が革新主義に鞍替えした、なんて話は聞いたことがないし…。僕が国を離れている間に、いったい何が──」

「…あの、レピさん」


 顎に手を当て思案するレピに、シェリルはおずおずと尋ねる。


「ん…はい、なんでしょう?」

「さっきの…えっと、メジャルカ卿、って呼べばいいのかな?…お会いしたの、初めてって言ってましたよね?」

「えぇ、そうです」

「ラツンジパさんもですか?」

「あぁ、そうだけど…?」

「…」


 回答を得たシェリルは黙り込み、歩みを進めながらも俯いて考え込む。


「シェリルさん?どうしました?」

「いえ…もしかしたら元老院だからって決めつけちゃってただけで、あの方自身は元からあんな感じだったんじゃないかなって」

「…なるほどな、”森じゃなく木を見る”か」


 他ならぬシェリルに言われた言葉を思い出したラツンジパは、チラリとリエネに視線を向けた。


「確かに彼女については”話で聞いた”以上のことは知りませんから、その可能性は否定できません。…怖いものですね、先入観というのは」


 レピも同様に、カロニア(ティサン人)への接し方について”説教”を食らった時のことを振り返る。


「では…元老院全体として、想像しているよりも柔軟な可能性もある、か…?」


 期待を滲ませたリエネに、レピは少し考え、ゆっくりと首を横に振った。


「個人個人の思想としては考えられる話ですが…」


 言い淀むレピに、リエネは食い下がる。


「"先入観"ではなく、か?」

「…少なくとも僕が旅に出た当時の元老院は、強硬な原理主義路線だったことは間違いありません。──ですが」


 追求されたレピは一呼吸置き、続ける。


「分かっている範囲でも、僕が離れている間にダヲジア卿がこの世を去り、新たな人員を迎える()()が生じたことも間違いありません。…”現在の元老院”を知るところから始めるべきなのかも知れませんね」

「…気になってたんですけど、その──」


 シェリルが次なる質問を重ねようとした時、向かう先から男の声が聞こえて来た。

 レピは即座に手で止まるよう合図を送り、小さな声で仲間たちに言う。


「しっ…ご質問は後で。まずは僕が話します」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は7月30日19時頃にXでの先行公開を、31日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

シェリル、レピ、リエネ、ラツンジパの四人は、ついにシャファルノールで人と接触した。

クレンの予告通り、聞いていた情報との食い違いを怪しむ男たちに、ラツンジパは──。

そしてついに──。


次回「勇者一行の再会」

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