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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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80/83

#80 元老院との交渉

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

noteにて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

仲間との語らいを経て、シェリルはひとまず、スウォルやリリニシアとの合流を目指し、再び歩み始めた。

一方、元老院二名にハリソノイアの現在を語り、取り計らう約束を取り付けたスウォルとリリニシアに対し、”仲間にマキューロ人の男がいるなら危ないかも”とクレンは言う。

「あ、危ない…ですの?」


 クレンが意味深に呟いた言葉を、リリニシアは繰り返す。


「ど、どういうことだ…んん、ことですか?」


 クレンの幼い容姿につい気が抜けがちなスウォルも、口を滑らせてからではあるものの、自らを律して尋ねた。


「最近、マキューロの…っていうかシャファルノールの男がいなくなっちゃうことが多くてさ」

「いなくなる?」

「そ。ここ一年で三人だっけ?いなくなってるんだよね」


 クレンに話を振られ、ガガーニムは忌々しげに頷く。


「いかにも。住人に間では、”忘敬者(ぼうけいしゃ)”の仕業ではないか、という噂が出回っているようですな」

「忘敬者…?」

「レピさんの言うところの”革新主義者”ですわ。細かいことは後で説明して差し上げますわ」


 聞き慣れない単語に首を捻るスウォルに、リリニシアがそっと耳打ちするのも気にせず、クレンは続けた。


「今のところシャファルノール以外で人が消えたって話は聞かないけど、だからって”他所の人なら安心”とも言えないしね」

「噂、ということは…お二人はその、”忘敬者”によるものではない、とお考えなのでしょうか」


 リリニシアの問いに揃って一瞬、沈黙した後、ガガーニムが答える。


「そうであるともないとも、言えるだけの情報が手元にないのです。現状、分からないと答えるより他ありません」


 リリニシアはその答えに、レピの言葉──”何が分からないかを正しく認識する”、”答えをムリヤリ決め付け、分かった気にならない”──を思い出し、頷いた。


「なるほど…」

「それより、畏れながらお二人に伺いたいことが──」

「待ーったガガちゃん!」


 次の質問を重ねようとしたガガーニムを、クレンは洞窟中に声を反響させながら止める。


「メジャルカ卿?」

「さっきお姉さんも”色々聞きたいことがある”って言ってたしさ、先にそっち答えてあげようよ」

「む…そうでしたな。──しかし、他国よりはるばるいらした使者に対し、お兄さんやらお姉さんやら…。いかがなものかと思いますが」

「えー?二人とも気にしてないと思うけどなぁ…」

「そういう問題ではありません。マキューロという国の品位を疑われますぞ」

「…へぇ?私のせいで?」


 二人の間に緊張感が走るのを察したリリニシアが、クレンに劣らぬ大声で割って入った。


「あの!!ではお尋ねしてもよろしいでしょうか!?」

「む…失礼いたしました。私に答えられることであれば、お答えいたしましょう」


 瞬時に空気が緩み、リリニシアはホッと息をつき、尋ねる。


「クレン様は、個質魔術を使っておられるのですね?」

「そうだよー」

「…そういや俺、その個質魔術ってのも分かんねぇや」

「それも後で教えますわ。…その、どのようなモノなのか、お伺いしても…?」


 話について行けていないスウォルの疑問を後に回し、リリニシアは質問を続けた。


「別にいいよ?──私はね、”年齢(とし)を操れる”んだ。見た目だけじゃなくて、身体能力とかもね」

「そ…そんなこと出来んのか!?魔術って…!」


 スウォルが目を見開き食いつくと、クレンはその反応に、楽しそうに笑う。


「へへーん。驚いた?まぁその分、精神が体の年齢に引っ張られちゃうんだけど」

「では、その幼く見える言動も演技などではないんですわね…」


 スウォル程ではないが驚いていたリリニシアは、どこか納得した様子で頷いた。


「記憶なんかはしっかり残ってるんだけどさぁ、どうしてもこう…子供まで戻ると、やることなすこと子供っぽくなっちゃうっていうか。ガガちゃんのことも、”ジスタム卿”なんて呼ぶ気になれないんだよねぇ」

「なるほど…」

「付き合わされる身としては、いい迷惑ですが」


 ガガーニムは敢えて、あからさまにため息を吐いて見せる。


「しかし、どうして個質魔術を使っていらっしゃるんですの?」


 再び空気が悪くなる予兆を感じ取ったリリニシアは、すかさず質問を重ねた。


「元老院なんかになっちゃうとさぁ、そこら辺うろうろするだけでも騒ぎになっちゃうんだよね」

「では、変装代わり…ということですの?」

「そんなとこ」

「へぇ〜…!ガガーニム様も出来るんですか?」

「あ、スウォル!」


 スウォルが興味深げに瞳を輝かせながら尋ねると、リリニシアは咄嗟に、大声でそれを制する。


「え?な、なんだ?」

「クレン様は特に隠してないようなので伺いましたけど、本当は聞いちゃダメなんですわよ!」

「そ、そうなの?」

「そうなの!──ガガーニム様、大変失礼を致しました。ワタクシの監督不行き届きです。深くお詫び申し上げますわ」


 リリニシアが言葉の通り深く頭を下げて詫びると、ガガーニムはむしろ、慌ててそれを止めた。


「いえ、そこまでのことでは。お気になさらないでください」

「そう言っていただけると助かりますわ…」

「す、すみませんでした…?」


 釈然としない様子で頭を下げるスウォルに、ガガーニムは気恥ずかしそうな笑顔を見せた。


「お恥ずかしながら、私は未だ、個質魔術を見出だしておりません」

「あ…そ、そうなんですか…。すみません…」

「言った通り、私は気にしておりません。ですが、他の者と接する際にはご注意くだされ。…他にご質問はございますかな?」


 気まずそうなスウォルを慰めながら、ガガーニムは改めて、リリニシアに問う。


「では──先ほどスウォルを見て、何に”気付いた"のか、お教えいただけますでしょうか。クレン様がスウォルに”人か否か”を尋ねたのと関係がございますの?」


 リリニシアの質問を受け、当の本人(スウォル)は真剣な表情で、ガガーニムを見つめた。


「メジャルカ卿…不用意なことを…」

「えへへ…ビックリしてつい聞いちゃった」

「…知っておいていただいた方がよいかも知れませぬ」


 ガガーニムはクレンに非難を込めた視線を送ると、ため息混じりに呟く。


「我々は他国の方より、文字通りの意味で鼻が利くと自負しております」

「えぇ、承知しておりますわ」

「レピさんも、”ティサンのニオイがどうこう〜”って言ってたもんな」


 スウォルの口から”ティサン”と聞き、一瞬、表情を歪めたガガーニムだったが、すぐに真顔を作り、続けた。


「…スウォル殿からは、これまで人から感じたことのない”ニオイ”を感じるのです」

「人から…感じたことない…?」


 スウォルが言葉の意味を処理しきれず、ただ繰り返す横でリリニシアは、クレンの囁きを聞き逃さなかった。


”人から感じたことない、ねぇ…?”


 ルヴィニケンプも、初めて会ったスウォルを”嫌なニオイ”だと言っていたことを思い出し、同時に”少なくともクレンは、そのニオイに関して何かを隠している”ことを悟る。


「お見受けする限り、不審な点も見られないので…とすれば、その盾の影響でしょうか」

「け、けど…俺、初めてレピさんと会った時から(コレ)持ってますけど、そんなの一回も言われたことないですよ…?」


 その瞬間、リリニシアは一人、目を見開き─。


「その、人じゃないニオイってのは──」

「そうですの、ありがとうございます」


 話を強引に遮った。


「え、おい、リリニシア?」

「さっきも言ったでしょう?ニオイがどうであろうと、スウォルは人です。気にしたって仕方ありませんわよ」

「いや、けどよ…」

「もう…シャキっとする!」

「わ、分かった!」


 丸まったスウォルの背中にバン、と平手を叩き込み、リリニシアはガガーニムとクレンに向き直る。


「お見苦しいところをお見せし、申し訳ございません」

「とんでもない。突然”人か否か”など問われれば、誰でも動揺しましょう」

「お心遣い、感謝致します。最後にもう一つ、他の元老院の皆様がお集まりになるまで、ワタクシたちはどこで待機すればよろしいでしょうか?」

「そうですね…。ヤクノサニユの方には不便でしょうが、この洞窟を使っていただいて構いません」

「重ね重ね、ありがとうございます」


 リリニシアが再度、深く頭を垂れると、ガガーニムは首を横に振った。


「とんでもない。では、私は手配に入らせていただきますので、一度失礼いたします」

「私も一緒に行〜こうっと。ガガちゃんと話したいこともあるし〜♪」


 今度はガガーニムが頭を下げると、クレンは一人、不釣り合いな程に声を弾ませる。


「であれば年齢を変えていただけますかな。”メジャルカ卿を名乗る不審な少女”を連れ歩く訳にも参りませんので」

「え〜?しょーがないなぁ…。何歳がいい?」

「…本来のお歳でも、”元老院が二人集まっている”などと騒ぎ立てられても面倒です。私と同じくらいでよろしいのでは?」

「やーだ、もっと若くする!…30くらいにしよっと!」


 クレンがそう言った瞬間、骨がミシミシと音を立てながら、その姿を”変身”させて行く。

 その光景にスウォルは言葉を失い、リリニシアは小さく悲鳴を漏らした。


「ひっ…」

「ふぅ…。このくらいで如何です?ジスタム卿」


 ”変身”が完了し、スウォルたちが屈んで話すようなクレンの背丈は、瞬く間に二人を少し、追い越した。


「よろしいかと。…何度見ても気味悪いですね」

「なにか仰いまして?」

「いえ、なにも。ではお二方、しばしお待ちください」


 個質魔術だと分かっていても信じがたい光景を目にし呆然とする二人に、ガガーニムはもう一度軽く頭を下げ、クレンを伴い洞窟を後にした。


「信じらんねぇ、すげぇな…。本当に、一気に年取ったぞ…」

「…」

「リリニシア?」

「あ…そ、そうですわね…。それよりスウォル!」


 僅かに呆けた後、リリニシアは頭をブンブンと、嫌な記憶を振り払うように頭を横に振り、大きな声で呼び掛ける。


「な、なんだ!?」

「怪しいですわ、あのお二人…!」


 一方、召集の手配を進めるガガーニムに、クレンは意味深な笑みを浮かべて語りかけた。


「嘘吐きなんですねぇ?ジスタム卿」

「…彼らが本当に、我らにとって有益なのか…判断いたしかねますので。それにすべてを明かしていないのは、貴方とて同じことでしょう」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は6月22日19時にXでの先行公開を、23日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

言葉の意味を理解していないスウォルに、リリニシアは自らの経験と心境から、その意図を説明する。

一方、怯えるシェリルを庇いながら進むリエネは、レピやラツンジパに”元老院”の情報を尋ねる。


次回「”分からない”から」

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