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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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77/84

#77 "主"の勇者と"従"のお姫様

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

noteにて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告における要約あらすじ公開は、先月にて更新を終了しました。

以降はnoteからお読みいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

クレンもろともマキューロ人に拘束され、”ジスタム卿”なる壮年の男の前に連行されたスウォルとリリニシア。

”身柄を預かる”と宣言し拘束を解かせたジスタム卿は、クレンを”メジャルカ卿”と呼び、”元老院の一人”だと言い切った。

「元老院…!」

「では、名前を騙ったのではなく…」


 クレンを指すジスタム卿の言葉を、スウォルはそのまま繰り返し、リリニシアは男たちの言葉を思い返した。


「も〜、ガガちゃんは遊びがないなぁ。そんなんじゃ老けちゃうよ?」


 一方クレンは50代の、同じく元老院の一員であるジスタム卿を、”ガガちゃん”と親しげに、ともすれば侮りさえ滲ませて呼ぶ。


「余計なお世話です。個質魔術で歳を誤魔化している貴方に言われたくはありませんな」

「あー!また誤魔化してるって言った!」


 クレンが元老院の一人であることに加え、二人は目の前の、自分らより若い少女が壮年の男、それもやはり元老院を相手に、こうも気安い言葉を交わしていることに、困惑が隠せなかった。


「あ、あのクレンさん…いえ、クレン様?ご、ご説明いただけたりとか…?」

「え?」

「元老院って本当か…んん、本当なんですか…?そ、それに歳をごまか──」

「うふふ」


 スウォルが年齢について言及しようとしたことを察し、クレンは笑顔のままスウォルを威圧する。


「あ、すんません…」

「私はクレン・メジャルカ。元老院だよ」

「ほ、本当に…」

「申し遅れました、我が名はガガーニム・ジスタム。同じく元老院の末席に座らせて頂いております。若輩ゆえ」

「若輩って言う必要あった?私への当て付けかな?ガガちゃん?」


 噛みつくクレンを無視して、ガガーニムは丁寧に名乗り、頭を下げた。


「ワタクシは──リリニシアと申します」


 リリニシアは少し迷った末に、本名を告げ、同じく頭を下げる。


「お、おい…いいのかよ、名前…」

「クレン様には既に明かしてしまっているのですし、ガガーニム様も元老院のお一人。偽っても見抜かれて不興を買うだけですわ。…ほら、あなたも」

「あ…えと、スウォルです」


 スウォルのお辞儀を受け止め、頷いたガガーニムは、顎に手を当て、呟いた。


「リリニシア…ヤクノサニユの?では貴方は…」

「はい。国王ゼオラジムはワタクシの祖父です」

「やはり…。なぜ、国王陛下のご令孫ともあろうお方が使者など?」

「本来は、こちらのスウォルと──もう一人、彼の双子の姉が請け負った任です。二人とは幼馴染みでして、力になるべく、ワタクシから同行を願い出ました」

「ふむ…にしても解せませんな。彼にしても、他国に遣わせる使者としてはお若すぎるように見えますが」


 ガガーニムは値踏みするように目を細め、スウォルを観察する。


「…む!?」

「ガガちゃんも気付いた?」

「…?」


 話題の中心でありながら蚊帳の外に置かれたスウォルは、それでも”穏やかではない”気配だけは察知し、怯えながら首を捻った。


「なるほど、メジャルカ卿。それでここに連れてきたのですな」

「私が連れてきたんじゃないよ〜?さっきのおじさんに連行されてきただ〜け」

「そうなるように誘導したのでしょうに。…というか、何十も年下の者をおじさん呼ばわりは如何なものかと」

「いつまで歳の話引きずるかなぁ」

「…その、よろしいでしょうか?」


 勝手に盛り上がる元老院の二人に、リリニシアはキョドキョドと手を挙げ、発言の意思を示す。


「む、失礼。なんですかな」

「色々とお伺いしたいこともございますが、まずは──ヤクノサニユからの使者として、マキューロの意志決定機関である元老院…残る三名のお目に掛かる機会をお作りいただけませんでしょうか」


 リリニシアの依頼に眉根を寄せたガガーニムは、クレンにチラリと視線をやり、共に頷くと、再びリリニシアに向き直った。


「ふむ…。差し支えなければ、ご用件を伺っても?」

「承知いたしました。ヤクノサニユ王国が国王、ゼオラジムより預かった用件から、お伝えさせていただきたきます」

「元老院が一人、このガガーニム・ジスタムが、慎んで拝聴させていただきます」

「私もちゃんと聞くよぉ」

「こちらのスウォル、そしてその姉シェリルは、1000年前に魔王を討ったという勇者の使用していた盾と剣を、それぞれ分かつ形で受け継ぎました。すなわち──現代の勇者です」


 リリニシアの紹介を受け、スウォルは気持ち姿勢を正し、もう一度頭を下げた。

 ガガーニムは吐息を漏らし、尋ねる。


「ほう、伝承に聞く”ルベスの武具”…。ではその左腕の物が?」

「左様にございます。国王ゼオラジムは、二人に魔王の討伐を命じました。…ご承知のこととは思いますが、魔物が現れた16年前より、ハリソノイアは対魔物の防衛に戦力を割き、他国への侵攻を取り止めております」

「ふむ…」

「仮の魔王を討てたとして、現状のままでは再びハリソノイアが他国を脅かす、16年前と同じ状態に戻るだけだと、ヤクノサニユは危惧しております」


 ガガーニムはもちろん、クレンも茶々を入れず、静かにリリニシアの言葉を聞く。


「しかしながら魔物という共通の驚異を前に、少なくとも今現在、争わずにいられていることもまた事実。そこでゼオラジムは、魔王を討つ前に、後の平和への基盤を築くべきだと考えました」

「平和への基盤、ですか」

「はい。──スウォル、ここからは貴方が」


 リリニシアは王との謁見で受けた叱責──”使者としてはシェリルとスウォルが主であり、自らは従である”──を思い出し、一歩身を引いた。


「…分かった」


 それを受けたスウォルは逆に、一歩前に出て、切り出す。


「ヤクノサニユ王国はマキューロ、及び全ての国家に対し、和睦を申し入れます」

「全ての国家、ですか。ハリソノイアも含めて」

「はい。既にハリソノイアの現大王、ユミーナ様の合意はもらっ──あー、頂いております」

「え、ハリソノイアが!?どういう風の吹き回しで!?」


 リリニシアが”道中、口の聞き方に関して、口酸っぱく言い聞かせて正解だった”と胸を撫で下ろす横で、スウォルの言葉を静かに聞いていたクレンだったが、想定外の言葉が飛び出ると、思わず大きな声で問い詰めた。


「メジャルカ卿、お相手は他国よりいらした使者ですぞ。…しかし、私も腑に落ちませんな。言ってしまえばハリソノイアこそが、”人間同士の争い”の元凶ではございませぬか」

「その通りです。…ご存知かとは思いますが、ハリソノイアの大王は力に依って決まります。ユミーナ様は最近になり、先代の大王を討ち玉座を──奪い取りました」


 ガガーニムとクレンは、ハリソノイアへの感情から来る複雑な表情で、スウォルの説明に耳を傾ける。


「ユミーナ様はご自身を、ハリソノイアにおける”異常者”だと言い、”国を乗っ取って作り替える”為に玉座を奪ったと仰いました」

「異常者、ですか。…作り替えるというのは?」

「”平和と外交を重んじる国を目指す”…とのことです」

「…」

「冗談でしょ…?」


 スウォルの返答を聞き、あんぐりと口を開けて絶句するガガーニムとクレンを見ながら、リリニシアは”ルヴィニケンプ様と同じ反応ですわぁ…。あと何回、こんな反応を見ることになるんでしょう…”などとぼんやり考えながら、事の推移を見守った。


────────


 同じ頃、人によく似た”何か”との戦闘を切り抜けた後、錯乱した為に気絶させたシェリルを担ぐリエネとレピ、ラツンジパの三人は、先行するスウォルたちに追い付くべく、シャファルノールを目指し、懸命に歩みを続けていた。


「大丈夫か?代わるぜ」

「あぁ…まだ大丈夫だ。ありがとう」


 ラツンジパは一人でシェリルを担ぎ続けるリエネを気遣うも、リエネは感謝の言葉と共に、それを断る。

 ラツンジパは驚きと気恥ずかしさが混ざったような、複雑な表情で、小さく漏らした。


「やっぱ、なんかムズムズするな。ハリソノイア人に礼を言われるなんて…」

「なんだ、こっちには礼を言う文化がないとでも思ってたか?」


 茶化すように笑うリエネだったが、ラツンジパの表情は晴れない。


「っていうか…そっちの文化なんて、意識したこともなかった。憎む対象であって、同じ人だとも思ってなかったしな…」

「…そうか」

ハリソノイア人(あんたたち)だって、他の国のヤツを人と思ってないのは同じなんじゃないのか?」


 ラツンジパの指摘に、リエネは顔を伏せ、小さく首を横に振りながら自嘲した。


「どうだかな。それ以下かもしれん」

「以下?」

「自国の民ですら、弱者のことは人として扱わないヤツが多いだろうな」

「…なんだよ、それ」

「リエネさん…」


 二人の会話に割り込むことなく黙って先導していたレピも、思わず足を止める。


「それが普通、それがハリソノイアの”正常”なんだ。…だから、ユミーナ様は”異常者”なのさ」

「ユミーナ…って確か、新しくテッペンに立ったっつってた?」

「あぁ。ハリソノイアは変わろうとしている。ユミーナ様が変えようとしているんだ」

「…そうか」


 ラツンジパはリエネの言葉を信じるべきか、複雑な表情で俯いた。


「それよりレピ。お前、さっきから全然喋らないが…どうしたんだ」


 リエネはラツンジパの葛藤を汲み、話を変える。


「…いえ、少々考え事をしていました」

「さっきの”アイツ”か?」

「まぁ、その…はい」

「気になることでも?」


 リエネの質問に、レピは少し迷う仕草を見せ、頷いた。


「話すのなら、シェリルさんが起きる前のほうがいいかもしれません。少し、休憩しましょうか」 

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は6月1日19時にXでの先行公開を、2日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

レピに従い、シェリルを寝かせ休息を取ることにした三人。

レピはまずラツンジパに、”人に似た何か”を放置することにした理由を語り、続けて自らの、”何か”に対する推測を明かす。


次回「最悪の可能性」

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