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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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76/83

#76 クレンとシャファルノール

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

noteにて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告における要約あらすじ公開は、先月にて更新を終了しました。

以降はnoteからお読みいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

戦線離脱したシェリルをラツンジパに任せ、レピの援護を受けつつ人に似た”何か”と対峙するリエネ。

戦闘の末、地面に固定し、氷漬けにしたレピの言葉に従い、討伐せず、放置して先に進むことに。

錯乱するシェリルを雷の魔術で気絶させ、担いでシャファルノールへ歩みを進める。

 僅かに時は遡り、人に似た姿の”何か”にシェリルが殴られ、心折れた頃──。


「クレンさん…ですのね。よろしくお願い致します」

「よろしく」


 ”クレン”と名乗った、掴み所がなく──どこか不気味な雰囲気さえ纏う少女に対し、”リリー”を名乗るリリニシアと、次いでスウォルが挨拶を投げ掛ける。


「うん」

「クレンさんは、ここにお住まいなんですの?」

「そうだよ。ずっとそう」

「そうでしたか」


 クレンの返答を受け、リリニシアは考える。



ラツンジパさんは”若い世代は大体が、レピさんの言う革新主義者”だと仰ってはいましたが…続けて”地域に依る”とも仰っていました。


全員が”原理主義者”である元老院のお膝元であるシャファルノールで暮らして来たという以上、若い…どころか幼い彼女も、思想は原理主義だと考えるのが自然でしょうか。


にしては、ルヴィニケンプ様のような、排他的な意識が感じられませんが…。



「ふふっ…むずかしい顔」


 自らを無言で見つめ、考え込むリリニシアを、クレンは笑う。


「え、あ…そ、そうですかしら?」

「うん、とっても。まるで──()()()()()()()()()()()()()()()()()みたい」

「…そんなことは──」

「あははっ」


 リリニシアの反論を聞こうともせず、クレンは楽しげに笑い続けた。


「おいリリニ…あー、リリー。この子なんか──」


 スウォルが耳打ちしようとするのを遮るように、クレンは手招きする。


「来て」

「え?」

「元老院に会いたいんでしょ?着いて来て」

「会えるんですか!?」

「…あはっ」


 リリニシアの問いに笑い声で答えると、クレンは二人に背を向け、脚を動かし始めた。


「あ、おい!…どうするリリー。なんか変だぜ、あの子。ここが本当にシャファルノールなのかもわかんねぇし」

「一面、今までと変わらない森でしかありませんものね…。こんなことなら、レピさんにシャファルノールの特徴、聞いておくんでしたわ」

「…来ないの?」


 二人が着いてきていないことに気が付いたクレンは、クルッと振り返り、可愛らしく首を傾げる。

 その愛らしさも、今の二人にとってはただ、薄気味が悪かった。


「…スウォル」

「ん?」

「いざとなったら、守ってくれますかしら」

「!…任せとけ」

「頼りにしてますわ」


 二人は視線を合わせ頷き合うと、クレンに続いて歩き始める。


「お待たせ致しました、クレンさん」

「何のお話してたの?」

「…シャファルノールって、森なんだね、って話ですわ」

「へぇ、それだけ?」

「えぇ」

「そっかぁ。──私が敵だったらどうするのか、相談してるのかと思っちゃった。…ふふっ」


 依然として、全てを見透かすように笑うクレンに、リリニシアは尋ねた。


「クレンさん、お若く見えますが…もしかして凄腕の魔術師だったりなさいます?」

「え?どうして?」

「”腕のいい魔術師には、自然が真実を教えてくれるから嘘が通じない”と聞きましたもので」

「それもルヴィニケンプに聞いたの?」

「…えぇ、そうです。お知り合いですの?」


 クレンは悩む仕草を見せた後、少しの間を置き、再び笑う。


「うん、知ってるよ。()()()()()


 クレンの返答を受け、思わずスウォルが声を上げた。


「え、若い頃?あの婆さんの?でも君まだ──」


 クレンはピタリと足を止め、バッと二人に振り返る。


「あれ?…お兄さん」

「え?な、なんだ?」

「お兄さんって、人?」

「…え?」


 小首を傾げながら尋ねるクレンの顔に、先程までの不気味ながら愛らしい笑顔はない。

 暗く沈んだ瞳でまっすぐ見つめながら繰り出される質問に、スウォルは言葉を失う。


「な、なにを──」

「人ですわ!!」


 声を張り上げたのは、リリニシアだった。


「どう見たって人じゃありませんの!変なことを仰らないでくださいますこと!?」

「リリニシア…」

「スウォルも!動揺してんじゃありませんわよ!"当たり前だろ"ってハッキリ言いなさいな!」

「悪い…」

「ふふっ…そっか。ごめんね?けど、気を付けないとね、お兄さん」


 再びスウォルが視線を向けると、クレンはまた笑っていた。


「気を付ける?」

「そうでしょ?()()()()()お姉さん」

「あ゛」


 二人は顔を見合わせ、声を揃えた。


「よ、呼ぶなって言ったでしょう!?」

「悪いって!ついポロッと…!」

「あははっ。かわいいなぁ、二人とも。…でもお兄さん、本当に気を付けてね?」

「あ、あぁ…そうだな、油断するとつい…」

「ううん、呼び方じゃなくて」

「え?じゃあ、なんに?」


 前に向き直り二人に背を向けたクレンは、再び足を動かしながら言う。


「…あはっ」

「誰かいるのか?」


 クレンが笑うのと同時に男の声が聞こえ、すぐに木々の隙間から声の主が姿を表した。


「…誰だお前たち!?マキューロ人じゃない…いや、一人は別か…!?」


 三人の姿を認め、スンスンと鼻を鳴らし即座に警戒を示す男に、リリニシアは両手の平を見せ、敵意がないことを示しながら男の問いに答える。


「ちょ、ちょっとお待ちください!ワタクシたちは敵ではありませんわ!く、クレンさん!ワタクシたちが無害だって説明してくださいませんこと!?」

「…クレンだと!?」


 クレンの返事を待たず、男はその名に、過敏に反応した。


「そ、そうです!彼女はマキューロ人ですわ!」

「お、おい…君も何か話してくれよ…!」

「…あはっ」


 目の前の男に呼ばれたマキューロ人に取り囲まれる中、スウォルに懇願されたクレンは、またも楽しげに笑う。


「このガキ…こともあろうに、メジャルカ卿の名を騙ってやがるのか!」

「元老院の名を語るとはなんと不届きな…!」

「元老院!?」


 男たちの口から飛び出た単語を、スウォルとリリニシアは声を揃えて繰り返した。

 二人の驚きなど知ったことではない男たちは、動揺する二人に詰問する。


「何を白々しいことを…!貴様らは何者なんだ!?」

「あ…わ、ワタクシたちはヤクノサニユ王ゼオラジムの命で使者として、元老院の皆様にお会いすべくやって参りました!」

「ヤクノサニユからの使者だと…?なんの用で来た!」

「国家同士のこと、皆様にお話することは出来ません!ですが、マキューロの皆様を害する目的でないことはお約束できますわ!」


 両腕を開き、必死に敵意がないことを表現するリリニシアに、男の一人が尋ねた。


「名は?」

「わ、ワタクシはリリーと申します」

「スウォルだ」

「ヤクノサニユから二人で来たのか?」

「いえ、他に仲間が三人おりますが、はぐれてしまいました。その三人も、ここに向かっているはずです。その内の一人はマキューロ人ですわ」


 一人の男がリリニシアと問答を繰り広げる中、他の男たちは小さな声で、"どうする"、"信用出来るのか"と囁き合う。

 クレンは彼らに向けて、一切の笑みを浮かべず真顔で言い放った。


「どうするも何も、おじさんたちにそれを決める権限なんてないでしょ?」

「なんだと!?」

「連れて行かなきゃダメでしょ?元老院のところに」

「このガキ…っ」


 男たちはクレンに言い返せず押し黙り、互いを見合う。

 先程までリリニシアと問答していた男が、ため息と共に答えた。


「…その通りだ。分かった、俺が連れて行く。だが手首は繋がせてもらうぞ」

「もちろん、構いませんわ」

「両手首を背中で合わせろ。…拘束・土の魔術(スコーク・チャーディ)


 男が唱えると、従ったリリニシアたちの足元から土が登り、体を這いずりながらやがて手首に辿り着くと、力強く固定する。


「…土に這い回られるの、イヤ〜な感覚ですわ」

「同感だけど仕方ねぇよ。我慢してくれ、リリー」

「ふふっ」

「無駄口も叩くんじゃない」


 同じ失態を繰り返さぬよう、スウォルは油断しないよう意識を集中し、”リリー”を呼んだ。

 両腕を固定され、先導する男の指示に従い口を開くことなく森の奥に少し進むと、三人の前に大きく口を開ける洞窟が姿を見せた。


「止まれ。いいか、勝手なことはするなよ」


 男は三人に言い含めると、洞窟に向け、大きな声で言う。


「ヤクノサニユからの使者を名乗る者共をお連れしました!いかがなされますか、ジスタム卿!」


 それからまもなく、洞窟の奥から一人、壮年の男が姿を現れた。


「ヤクノサニユの使者?」

「はっ。この者たちです」


 見たところ50代と言った風貌の”ジスタム卿”に、リリニシアとスウォルは口を開かず、静かに頭を垂れる。


「しかしこちらの幼い少女に限り、ヤクノサニユではなく──」

「あぁいい、もう結構。こちらのお三方のご対応、私が預かろう」

「ですがメジャルカ卿の名を──」

「結構だと言っている。拘束を解いて差し上げなさい」

「…はっ」


 不服を隠さない様子ながら、男は三人の手首を解放した。


「お三方、中へ」


 ジスタム卿に促され、共に洞窟の奥へと進む三人。

 しばらく歩き最奥に辿り着き、ジスタム卿は手頃な岩に腰を下ろした。


「さて、色々と伺わねばなりませんが、最優先で改めるべきは…ご説明いただきましょうか、メジャルカ卿」

「えー、もうバラすの?もうちょっと遊ばせてよ〜」

「個質魔術まで使って、他国からの使者で遊ばないでいただきたいものですな…。よりにもよって、元老院の一人ともあろう貴方が」


 スウォルとリリニシアの目の前で、ジスタム卿は確かに、クレンに向けて”元老院の一人”と言い放った。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は5月25日19時にXでの先行公開を、26日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

男たちと同様、クレンを”メジャルカ卿”と呼び、”元老院の一人”だとも言うジスタム卿。

驚くスウォルとリリニシアの前でクレンは、ジスタム卿に対して親しみを通り越し、馴れ馴れしささえ感じさせる口調で答える。


次回「”主”の勇者と”従”のお姫様」

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