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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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73/75

#73 それぞれの邂逅

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。

初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告における要約あらすじ公開は、先月にて更新を終了しました。

以降はnoteからお読みいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

スウォルとリリニシアが語らう一方、レピもリエネと対話を交わす。

リリニシアはスウォルの肉体が盾に、レピはシェリルの精神がユミーナの過去に、それぞれ”侵食された”と評した。

 翌朝、スウォルたちは──。


「ん…」

「あら、お目覚めですの」

「リリニシア…。あれ、もしかしてずっと起きて…?」


 寝ぼけ眼を擦りながら、スウォルが空を見上げると、木々の隙間から見える空は、既に青く、明るく透き通っていた。


「えぇまぁ」

「わ、悪い!適当なところで起こしてくれりゃよかったのに…!」

「よく言いますわよ、起こしたって起きないじゃありませんの」

「それは…そうかもしんねぇけど…。魔術で叩き起こすって…」

「あれは…勢いで言っただけですわ。ワタクシにはまだレピさんのような繊細な制御は出来ませんの。一番小さいので──火の魔術(オレム)。…これですのよ?」


 リリニシアがかざした掌に、顔の半分ほどの大きさの火の玉は作って見せる。


「これでもルヴィニケンプ様に教わる前と比べれば、半分くらいに制御できるようにはなりましたが…我ながらおっかなくて、とても身内には使えませんわよ」


 リリニシアがかざした手を、火の玉を掴むように握ると、火の玉は四散し消えた。


「悪ぃ…」

「レピさんが言ってたでしょう?若いんですから、一晩くらい屁でもありませんわ」


 罪悪感に肩を落とすスウォルに、リリニシアは豪快に笑いかける。


「お姫様が”屁”とか言わない方がいいんじゃ…」

「あら、なにか仰いまして?」

「いや、なにも…」


 スウォルの”明らかになにもないことはない”態度に、リリニシアは満足げな笑みを浮かべた。


「あらそうですの。…ちょうどいいですわ」

「ん?」

「これからマキューロにいる間、ワタクシが自ら名乗るまで”お姫様”ではなく単なる使者団の一員、リリーとして扱ってくださいな」

「あ、あぁ…”余計な反発を買わないように”、あと”金目当ての誘拐とかあるかも”だからな」

「丸々ワタクシが言ったことじゃありませんの…。まぁいいですわ、頼みましたわよ」

「任せてくれって。…眠くてしんどくなったら言ってくれよ」

「承知してますわ。さ、動きますわよ。…いったいどんなところなのかしらね、シャファルノール…」


 スウォルが明るさを取り戻していることに胸を撫で下ろしながら、リリニシアは歩き始めた。


────────


 それから四日後の昼。

 予告されていた通り野宿を繰り返しながら、レピを先頭に、ラツンジパ、リエネ、シェリルと続き歩く四人は、リエネとラツンジパの間に漂う気まずい空気や、シェリルが纏うどこか重苦しい雰囲気を払拭できないまま、先行する二人を追っていた。


「…二人はもう辿り着いてるんだろうか」


 鬱陶しそうに葉を払い除けながら、リエネがボソリと漏らすと、レピが振り向かず、声だけで答える。


「順調に進めていれば、到着していてもおかしくはないですね」

「無事に着いていて欲しいモノだな。…どういう所なんだ、シャファルノールというのは」

「あ…お、俺も気になるな。聞いたことはあるけど、実際に行ったことはねぇんだ」


 ラツンジパは辿々しくも、リエネの疑問に乗る。

 これが彼なりの歩み寄りだと、三人には伝わっていた。


「そうか。一言で言ってしまえば…樹海、ですかね」

「…樹海?」


 リエネとラツンジパが声を揃える。


「はい。話したでしょう?元老院は全員、”自然の在り方に人間が合わせるべき”と考える原理主義者だと。シャファルノールは言ってみれば、そのお膝元です。必然的に──」

「開拓などされていない、か。今から気が滅入るな…」

「あぁ…。気が合うな、リエネさんよぉ…」

「あの…」


 リエネとラツンジパの間にささやかな共感が生まれる中、最後尾で沈黙を保っていたシェリルが口を開いた。


「元老院って五人いるんですよね?重要な話を野ざらしでって訳には行かないと思うんですけど、集まる時とかってどうしてるんですか?」

「洞窟を使っていると聞きます。会議の際には強力な魔術師が出入り口を警護し、その他平時は元老院も含め、一切の立ち入りが禁じられています」

「へぇ…厳重ですね」

「なにぶん、国の最高権力者たちですから。ヤクノサニユで言う国王陛下の立ち位置ですから、厳重にもなりますよ」

「なるほど…」


 レピの返答に、シェリルが幾度か頷きながら歩き進める中、ラツンジパは明後日の方向に顔を向け、ピタリと足を止めた。


「…なんだ?」

「ん、どうした?」


 前を歩くラツンジパに釣られ、リエネも立ち止まる。


「なんか聞こえねぇか…?これは…雄叫び、踏み潰される草…足音?…近付いてくる!」

「…シェリル!」


 リエネが振り返りながら叫ぶと、シェリルは剣の柄を握り、首を横に振った。


「反応してません!」

「魔物ではない、あるいはまた反応しない種族か…?──下がれレピ!ラツンジパ!」


 リエネは斧を構え、一歩前に出る。


「はい!」

「わ、分かった!」

「…」


 シェリルは握っていた剣を無言で抜き、近付いてくる何かの襲来に備えた。


「──!!!」

「…私にも聞こえた。少なくとも人ではないな…!」


 木々に阻まれ視認できないが、音の主は着実に近付いてくる。


「これは…!」

「くっ!」

「…来るぞ!」


 レピとラツンジパが手で鼻を覆う中、腰を深く落とし迎撃体勢を整えたリエネの前に現れたのは──。


「──!!!」

「なっ…」


 二本の足で地を踏みしめ、二本の腕を振るって殴りかかろうとする──。


「人!?」


 自分たちとよく似た特徴を持つ生物だった。


「──!!」

「ぐっ…!」

「リエネさん!」


 その姿に動揺し反応が遅れたリエネは、かろうじて斧で拳を受け止め直撃こそ避けたものの、強く弾き飛ばされた。

 シェリルは目は一瞬、リエネの行方を追うも、すぐに正面──現れた生物を捉え直す。


「…違う、人じゃない。人ではないけど──」


 シェリルもやはり動揺しながら、それでも目の前の驚異を見定めるべく目を凝らす。



──明らかにただの獣でもなく、そして今まで見てきた魔物とも違う。

強いて言うならハリソノイア北東部で戦った魔物が近いけど、アレだって見上げるほどの大きさだったし、頭だって牛みたいで、一目で人間じゃないことは見て取れた。

けど今、私の前にいるこの生き物は──”大柄な人”で通る体躯、頭も後ろから見たんじゃ人と区別がつかない。

全身を覆う体毛だけは人間と思えないけど、まるで…裸の──男のような。



 シェリルはギリ、と歯を食い縛った。


「──!!」

「シェリルさん!」


 そんなシェリルの思案などに構うことなく、”人のような怪物”は、振り上げた剛腕をシェリルに向けて振り下ろす。


「しまっ──」

土の魔術(チャーディ)!!」


 ラツンジパは咄嗟にしゃがみ込み、地面に手を当て唱えると、シェリルと怪物の間を遮るように地面が盛り上がり、壁を成した。


「──!!」


 怪物が振り下ろした拳は容易く土の壁を打ち崩すが、壁が生み出した僅かな時間が、シェリルの回避を間に合わせた。


「っ!」


 咄嗟に飛びのき、体勢を立て直しながら、シェリルは崩れる壁の向こうに佇む怪物を捉える。


「よし…!済まない、ラツンジパ!」

「おう!…兄ちゃん、なんだよアイツ。どう見たってただの獣じゃねぇぞ…。あれが魔物か?」

「分からないけど…今まで見てきた魔物と比べても異質だ…!」


 ラツンジパと言葉を交わしながら、レピは不安を抱えていた。



あれだけ自分(ひと)に近い姿をしている相手…シェリルさんは斬れるのか…?

いや、それも心配だが、まずリエネさんだ…!



「ラツンジパ、リエネさんを──」


 叫ぶレピの声に反応したか、怪物はゆっくりと、土煙の中からレピとラツンジパに視線を投げる。


「気を付けろ兄ちゃん!」

「くっ!分かってる!」


 狙われた、と体を強ばらせる二人を気に留める様子もなく、再びシェリルを見据えた。


「なっ…なんだ?」

「僕たちには興味がないのか…?」

「なんだよそりゃ…?”女にしか襲いません”って訳じゃねぇだろ!?」

「流石にそんなことは…ありえるのか…?──いや、今はそんな場合じゃない!…ラツンジパ!」


 レピは疑念を振り払い、目の前の状況に意識を傾ける。


「なんだ!?」

「リエネさんのこと、任せてもいいかい」

「…あぁ、分かった!」 


 二人は頷くと、それぞれシェリル、リエネの元へ駆け出した。


「おい、無事か!」

「あ…あぁ…!大丈夫だ…!」


 ラツンジパが駆け寄ると、既にリエネは自らの力で立ち上がり、シェリルに歩み寄る怪物を睨み付けていた。


「あんなの食らって、よく立てるな…。待ってろ、治してやる。──癒しの魔術(チュリヨ)

「悪いな…。モロに食らってはいない。(コイツ)で受けた」

「そうかい、流石はハリソノイア人。…どうだ?」


 リエネは幾度か手を握っては開き、体の具合を確かめると、ラツンジパの皮肉混じりの称賛に、ニヤリと笑みを浮かべて言い返す。


「いい腕だ。流石は元老院候補の孫…と言ったところか?」

「…はっ、ダテに毎日シゴかれちゃいねぇよ」


 ラツンジパも同様、ニヤリと口角をあげ、答えた。


「頼もしいことだ」

「ナメんなよ?…しかし、ひでぇニオイだ、アイツ。色んなモンをごちゃ混ぜにしたような…」

「…まさか"臭くて戦えない"なんて言わないだろうな?」

「ナメんなっつったろ!」


 ラツンジパが力強く笑うのを確認すると、リエネはシェリル、レピ…そして怪物の元へ走り出す。


────────


 四人がヒト型の怪物に襲われたのと時を同じくして、先行するスウォルとリリニシアは──。


「あら…!?見てスウォル、人ですわよホラ!…子供…女の子ですわね」


 視線の先に背を向けて立つ子供を刺激しないよう小さく、しかし嬉しそうな声で、リリニシアは囁く。


「ほんとだ。6、7歳くらいか?久々に見たな、リリニ…あー、リリー以外の人。ってことはもうそろそろか?」

「尋ねてみましょう。…呼び方も含めて、言動には気を付けてくださいね、くれぐれも」

「分かってる、あんま喋らんでおくよ」

「よろしい。──すみません、そちらの方?」

「…!」


 リリニシアが柔らかく高い声色を作り尋ねると、少女はバッと振り向き、驚いた顔で呟いた。


「…他所の人?」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は24時頃にXでの先行公開を、6日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

スウォルとリリニシアが出会った少女は、一面を森に囲まれた現在地こそが”シャファルノール”だと言い、名を問われると僅かに迷った後、自らの名を明かす。

一方、二人を追いかけるシェリル、レピ、リエネ、ラツンジパの四人が出会った”ヒトに似た怪物”の行動は、四人を絶句させた。


次回「背負わされた少女」

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