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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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74/74

#74 背負わされた少女

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。

初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告における要約あらすじ公開は、先月にて更新を終了しました。

以降はnoteからお読みいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

シェリル、レピ、リエネ、ラツンジパの四人は、スウォル、リリニシアを追ってシャファルノールを目指す道中、人のような姿をした怪物に襲われる。

その頃、先行する二人は、とある少女との出会いを果たしていた。

「…他所の人?」


 困惑した様子の少女を怯えさせないよう、リリニシアは優しい声色で語りかける。


「分かるんですの?」

「うん…。においが違うから」

「…におい、ですか」


 レピが”(くさ)い”という根拠でカロニアがティサン人だと断定したことを思い出しながら、リリニシアは続けて尋ねた。


「マキューロの方は鼻が利くんですのね」

「けど、変なにおい。強ーい魔術師のにおいが混じってるような…」

「強い…ルヴィニケンプ様のことでしょうか?」

「…あはっ。だから、だね?」


 その名を聞いた少女は楽しそうに笑い、何かに納得した様子を見せる。


「あの、何がですの…?」

「ううん、こっちの話」


 少女が疑問に答えるつもりがないと見たリリニシアは、話を先に進めた。


「…ワタクシはリリーと申します。こちらはスウォル。お察しの通り、我々はヤクノサニユから参りました」

「…へぇ?"リリー"って言うんだ?」


 少女は口角を上げ、クスリと笑いながら問う。


「ヤクノサニユの人が、こんな奥まで?」

「えぇ。国王ゼオラジムの命で使者として、元老院の皆様とお話をさせていただきたく、シャファルノールを目指しておりますの」

「…じゃあ、ようこそ?」

「え、よ、ようこそ…?」


 思わぬ少女の返答に、リリニシアは意味が掴めず、ただオウム返しにしか出来ない。


「うん…。シャファルノールへようこそ」

「え…こ、ここ?いえでも、辺り一面、森しか見えませんけれど…?」

「うん。ここが、シャファルノール」

「…」

「マジかよ…」


 リリニシアが絶句する横で、”喋らない”と宣言していたスウォルも、ついつい本音が漏れた。


「…えと、お名前をお伺いしてもよろしいですかしら?」

「名前…。どうしようかな…」

「外部の者には名乗れませんか?」

「そんなことないけど…うーん…」


 名を問われた少女は、少し俯き考え込む様子を見せた後、顔をあげる。


「まぁ、いいかな…ふふっ」

「え、なにがですの?」


 首をふるふると横に振り、答えた。


「ううん、なんでもない。私はクレン」



────────


「シェリルさん!」


 方や、二人を追う最中、人のような姿の、勇者の剣が反応しない”何か”に襲われた四人。

 ラツンジパの魔術で傷を癒したリエネが走る一方、”何か”と対峙し、剣を握りしめるシェリルに、レピが大声で呼び掛けていた。


「レピさん…!」


 シェリルが目を逸らさず、”何か”を睨み続ける中、当の”何か”はその声に反応し、シェリルから視線を外して声の主──レピを見つめた。


「──…?」


 しかし”何か”は首を傾げる様を見せたかと思うと、確実に認識したレピをまたも無視し、再びシェリルに目を向ける。


「また!?コイツ、何故僕には興味を示さない…?まさか本当に性別で…!?」

「…っ!」


 目の前の”何か”はレピとラツンジパ──”男”を無視し、”女”であるリエネを殴り飛ばし、自らに狙いを定めている。

 困惑しながら発したレピの言葉はシェリルの鼓膜に突き刺さり、リエネから聞いたユミーナの過去を想起させ、柄を握りしめる手からは小さく、しかし確かに”ギュッ”と音がした。


「…気持ち悪い」

「──!!」


 シェリルが吐き捨てた言葉に激昂したかのように、”何か”は左の拳を振り上げると同時に──レピの横を一つの影が、瞬く間に駆け抜けた。


「リエネさん!」

「たぁああ!!」


 懐に潜り込んだリエネが雄叫びと共に振り上げた斧は、シェリルに向けて振り下ろされた左腕を、肘の先から切り落とす。


「──!!!」

「リエネさん…!」

「しっかりしろシェリル!余計なことは考えるな!戦いに集中するんだ!」

「…はい!──え」


 リエネに一喝され、再び”何か”を見据えるシェリルの目に映ったのは、リエネが切り落とした傷口がウネウネと脈打ち、元の姿を取り戻そうとしてる(サマ)だった。


「再生…!じゃあコレも魔物…!?」

「また”剣が反応しない特異種”か!?──そうだ、レピ!凍らせろ!」

「!──分かりました!氷の魔術(グレクォ)


 グラウムとの手合わせで頬に出来た傷を、氷の魔術で止血したことを思い出したリエネの指示に従い、レピは(うごめ)く傷口を狙い、氷の魔術を放つ。

 氷は瞬時に傷口を覆い、凍結させた。


「これで再生が止まれば…!」

「やっと追いついた…!脚速ぇよ…!」


 期待を滲ませるレピと、ようやく追いついたラツンジパの耳は、確かに聞いた。


「──()の魔術(レム)


 "何か"の口から吐き出された声を。


「…は?」


 無論、シェリルとリエネの耳にも、その声は届く。


「…おい、なんの冗談だ…?」

「ま…魔術!?なんで…レピさん!?」


 理解できずにいる一行を尻目に、凍り付いた"何か"の左腕、傷の先に灯った火の玉は、氷を溶かし始めた。

 目の前の敵から視線を切るほど混乱したシェリルに問われるも、レピの混乱はそれ以上だった。


「し…知らない、こんなこと…!こんなことあるはずが…!!」

「──シェリルッ!!」


 魔術を扱う知性を持つ敵が、目の前にありありと晒された隙を見逃すはずもなく──。


「え──」


 リエネの叫びで我に返ったシェリルが視線を戻すと──振り下ろされる右拳が、目と鼻の先まで、既に迫っていた。


「くっ…!土の魔術(チャーディ)!!」


 ラツンジパは"壁を作るのも間に合わない"と見て、”何か”足元を歪め、体勢を崩させることで拳を外させるべく、慌てて地面に手を付く。

 しかし──それでも間に合わなかった。


「ぎっ…がぁ…っ!!」


 微動だにする間もなく、拳はシェリルの鼻っ柱を捉える。


「シェリル!!」


 リエネの叫びも虚しくシェリルの身体は、目で追うのも難しいほどの速度で宙を舞い、そのまま木の幹に叩きつけられ、地面へとずり落ちた。

 かろうじて握っていた剣を手放しながら──。


「かはっ…」

「キサマ…!ぬぅあぁ!!」


 リエネは怒りのまま、シェリルを殴り飛ばした右腕を、再び斬り落とす。

 これも痛打にはならないことを知りながら──。


「シェリルさん…!!ラツンジパ、援護任せる!」

「あぁ!」


 レピは"何か"との戦闘をラツンジパに任せ、シェリルの元へ走り出す。


「──!!」


 "何か"は明確な意思でレピを妨害するかのように、ラツンジパの魔術で柔らかくなった土の塊を蹴り飛ばした。


「な…!今度は反応した!?」

「俺が行く!!」


 興味さえ示されなかった先ほどまでとの差に戸惑い、レピは足を止める。

 ラツンジパは代わりに、弾き飛ばされるように走り出した。


「シェリル!!」

「ぐ…が…」

「ひでぇ…!すぐ治してやるからな…!中級・癒しの魔術(チュリヨ・ロネサリ)!」


 傷を癒しはしても体力は戻らない"癒しの魔術"。

 対して若干ながら即座に体力を回復させる効果を持つ代わりに、中級の基礎魔術の中で最も発動が難しく、最も使用者の消耗が激しい"中級・癒しの魔術"を、ラツンジパは顔をしかめながら、迷わず選択した。

 目を背けたくなる凄惨な有様を前に、"そうしなければ死ぬ"と判断したからだ。


「よし…!もう大丈夫だ!立てるか!?」

「…ゃ…」


 シェリルは問いかけに答える代わりに、癒えた体をカタカタと震わせ──シェリルは決壊した。


「…シェリル?」

「やだ…もうやだ…痛い…!やだよぉ…!!」

「シェリル…!しっかりしろ!魔王倒すんじゃねぇのかよ!?」


 出会って間もないラツンジパには知る由もない。

 初めて出会った魔物と出会った時は、震えて戦うことさえ出来なかった。

 ハリソノイア北東部での戦いでは、魔物を殺してしまった事実に嘔吐し、意識を失った。

 ボロガブザリを相手にした際は、自らの()()存在意義を失わない為、初めて自分の意思で命を奪った。

 そして巨大生物には、スウォルとリリニシアを奪われたかもしれない恐怖に錯乱し、怒りを剣に乗せ、執拗に亡骸を斬りつけた。


 それらいずれの戦いでも、シェリルは()()()に攻撃を受けたことがなかった。

 ちょっとした傷を負うことはあっても、いつも前に出てボロボロになっていたスウォルやリエネが負ってきたそれには、遠く及ばない。

 ──()()()()()()のは、リリニシアだけではなかった。


 初めてその身で受けた、意志疎通の図れない敵からの、殺意を纏った()()()な一撃。

 訓練では経験し得ない純粋な暴力は、シェリルの──魔物が相手でも殺しを嫌う本心を押し殺してここまで来た、"殺すのも殺されるのも嫌"なのに勇者に()()()()()()()16歳の少女の心を、容易くへし折った。


「なんで私がこんな目にぃ…!助けて父さん…スウォル…!助けてよぉ!!」

「…シェリル」


 ラツンジパは、なにも言えなかった。


「くっ…!シェリル…!」


 涙ながらの叫びは、既に氷が溶け、左腕の再生が完了した”何か”の攻撃を躱し細かく反撃を重ねるリエネの耳にも届く。

 当然、レピにも。


「…リエネさん!退()きましょう!」

「どこまでだ!?どこまで退けばコイツは逃がしてくれる!?」

「それは…」

「大丈夫だ、やれる。見ろ」


 リエネはそういうと、攻撃の隙を見て、顎でクイッと一点を示す。


「…あれは!」


 その先にあったのは、リエネが斬り落とした腕の先が朽ちて、崩れ落ちて行く様だった。


「そうだ、ボロガブザリやあのデカブツと同じ…!魔物だったとしても、シェリルの剣じゃなくても殺せる種類ってことだ!援護しろ、レピ!」

「くっ…分かりました!」


 冷や汗を流しながら頷くレピの脳裏には、一つの疑問が浮かんでいた。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は通常のスケジュールに戻り、5月11日19時にXでの先行公開を、12日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

リエネの援護をしつつ、レピは何故、最初に自分とラツンジパが狙われなかったのか、何故シェリルの元に走ろうとする自分は妨害され、ラツンジパは無視されたのかを考察する。

レピの導いた結論は──。


次回「三度目の──」

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