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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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70/83

#70 森と木

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告における要約あらすじ公開は、先月にて更新を終了しました。

以降はnoteからお読みいただければ幸いです。


本日から6日まで、ゴールデンウィークで嬉しいので連日20時に更新して参ります。

お付き合いいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

食事と別れを済ませ、ラツンジパの家を発ったスウォルとリリニシア。

ラツンジパが漏らした“転がす”の真相を追求されたシェリルは、崖から落ち、助かった時のことを回想し、口をつぐんだ。

 スウォルが目を覚まし、リリニシアと共に村を発ってから2日後。


「えぇ、その巨大生物は死亡しましたので、集落に戻っても問題ないかと。あの様子では建て直すのも一苦労だとは思いますが…。ただ、ご存知かとは思いますが、崖が崩れてしまい、他の道を…はい。では僕はこれで」


 避難してきたという崖の上の集落の住人を見つけ出し、安全を確保したことを伝えると、レピは振り返り、待たせていた二人の元に歩み寄った。


「…お待たせしました。あの集落の住人には、彼から伝えてもらうようお願いしました」

「そんな、全然待ってなんか」

「そうだな。二人の無事が分かった今、過剰に急ぐこともあるまい。もちろん早く合流はしたいところだが」

「そう言っていただけると助かります。では、僕たちもお二人を追いましょう」


 シェリルとリエネは口を揃えると、レピは頭を下げて感謝を示し、向かうべき先──東に向けて、これまで通り先頭を歩き始めた。


「ここから…シャファルノール、だったか。そこまではどの程度掛かるんだ?」

「特に問題がなければ、およそ一週間と言ったところでしょうか」

「やっぱり結構掛かるんですね…」


 シェリルがため息を吐くと、レピは困ったように笑いながら答える。


「そうですね…。その上、残念なことに途中に休めるような集落はあまりありません。道中のほとんどが野宿になるでしょう」

「そっかぁ…。しょうがないことですけど、大変だなぁ…」

「そうか?考えようによっては気楽だと思うが」

「き、気楽、ですか?ど、どういう…?」


 憂鬱な気分を隠さないシェリルは、リエネの相反する考えに困惑し、その真意を尋ねた。


「“誰が原理主義者で、革新主義者なのかを意識する必要がない”ということだ。疲れるだろう、探り探り接するのは」

「あ、確かに…」

「あの老人の態度を思い出してみろ、特に最初。先にリリニシア様が取り入ってくれていたからよかったが、私たちだけなら門前払いだったんじゃないか?」


 初対面での老婆を思いだし、やれやれ、とばかりにリエネが肩を竦めると、レピは乾いた笑いと共に答える。


「はは…そうかも知れません。むしろ原理主義者にしては、おおらかな対応だったとすら言えるかも。ラツンジパのような、若い世代と接している影響でしょうか」

「あ、あれでですか…。先が思いやられるなぁ…」

「まったくだ。…というか、リリニシア様はよく取り入れたものだな」

「…それも、マキューロ人(ぼくたち)が“ハリソノイア人に近い”ことが理由でしょうね」


 レピはどこか複雑そうに分析を始めた。


「力があったから…“魔術が使えたから”ということか」

「あの口ぶりだと対話の結果、リリニシア様自身のことも気に入っているんでしょうが、それがなければ恐らく、対話にまで至らなかったと思います」

「…前途多難だな、本当に」

「お〜い!!」


 今後の旅路を思い、意気消沈する三人の耳に、背後の村から聞き覚えのある声が響く。


「…ラツンジパ?」


 レピの疑問の声を合図に三人とも振り返ると、確かにラツンジパが駆け寄ってくる姿が見えた。


「どうしたんだい?なにか忘れ物でもしてた?」

「いや、俺も連れてってもらおうと思ってさ!」

「え!?」


 三人が目を丸くする中、ラツンジパはサラッと言ってのける。


「もちろん、祖母ちゃんの許しはもらってきたぜ」

「いや、それはそうだろうけど…どうして急に?」

「理由はあったんだろうけど、騙されてた立場としちゃあ文句のひとつも言いたいだろ?リリー…いや、()()()()()()()()に」

「それはそうかも知れないけど──」

「ラツンジパ」


 レピが対応に迷い、口ごもる横で、リエネが重々しく口を開いた。


「…なんだ」

「私と──()()()()()()()と道を共にすることになる。分かっているのか」

「当たり前だろ。バカにしすぎじゃねぇか?」

「そういう訳では…済まん」

「リエネさん…」

「シェリル、あんたに聞きたいことがある」

「え、あ、はい。なんでしょう…?」


 またも"余計なことを言ってしまった"と肩を落とすリエネを尻目に、ラツンジパはシェリルに問う。


「祖母ちゃんに止められてたけど、リエネ(そいつ)がハリソノイア人だってバラされた後、なんか言い掛けただろ。"リエネさんは──"って。なんて言おうとしてたんだ」

「あ…えと…」

「あぁ、構わない」


 チラリと様子を伺うシェリルに、リエネはこれ以上ラツンジパを刺激しないよう、最小限の言葉で答えた。


「リエネさんは、人を相手取った戦争に参加したことはないんです」

「…どういうことだ」

「リエネさん、まだ21歳なんです。魔物が活発になり始めたのは5歳の頃で、それより前の戦争には…」


 ラツンジパは三人が現れた直後の会話を思い返す。


「そういや、レピ兄ちゃんの方が歳上だとか言ってたな」

「はい。だから、ラツンジパさんの許せない気持ちも分かるんですけど──」

「"本人は何もしてないから"って訳だ」

「…はい、そう言おうとしてました」


 腑に落ちていなさそうなラツンジパに、シェリルはゆっくりと、深く頷き、続けた。


「私の、剣の師匠(せんせい)が言ってたんです」

「…突然なんの話だ?」

「国と個人は違う。"森よりも木を見る"って」

「…」

「ハリソノイア人だけじゃありません。ヤクノサニユ人にも色んな人がいます。いい人もいれば、悪い人も。それはきっとティサン人も…マキューロ人だって同じだと思うんです」


 ラツンジパは眉根を寄せ、複雑そうな表情で少し俯く。


「”ハリソノイア人みんなを許せ”なんてことは言いませんけど…まず、リエネさんっていう木…リエネさん個人のことを見てもらえませんか。一緒に来てくれるなら」

「…」


 眼球だけを動かし、リエネを横目で睨みつけたラツンジパは、やがて深いため息を吐くと、まるで自分に言い聞かせるように、小刻みに数回、首を縦に振った。


「…分かった」

「ラツンジパさん…!」

「この俺自身の目で、あんたってのがどんな人間なのか…見極めさせてもらうぜ、リエネさんよ」

「…心得た。お手柔らかに頼む」


 抵抗を滲ませながらもしっかりと正面から目を合わせ、放たれたラツンジパの宣告を、リエネは謹んで受け止めた。

 それからしばらく、ぎこちなくも四人で歩みを進め、やがて夜が訪れると、四人は手ごろな空間を見付け、晩を明かすべく腰を下ろす。


「あの、リエネさん」

「シェリル?どうした」

「久しぶりに、稽古に付き合ってくれませんか?」

「なに?」

「ここのところ、それどころじゃなかったですけど…二人の無事が分かって、少し気持ちに余裕が出てきたので」


 シェリルの提案を受け、リエネは横目でラツンジパの様子を確認し、頷いた。


「そうだな。あちらも積もる話があるだろう。…二人とも、私たちは少し離れて稽古してるぞ。先に眠っててくれて構わん。見張りは戻ってから私がやろう」


 リエネの言葉に対し、レピが軽快答える一方、ラツンジパは不審がる様子を隠さない。


「えぇ、承知しました。お気遣いありがとうございます」

「見極めも出来てねぇのにオチオチ寝てらんねぇけどな」

「好きにしてくれればいいさ。行こう、シェリル」

「あ、はい!では一度、失礼しますね!」


 ペコリと頭を下げたシェリルは、レピとラツンジパを残し、先を行くリエネを追った。


「…ふむ、そこそこ広く、障害物も少ない。この辺りなら都合がよさそうか。では早速──」

「あ、すみません!少し待ってもらえますか?ずっと気になってたことがあって」

「気になってた?」

「はい。ユミーナ様のことが」

「っ…」


 シェリルの問いに、リエネはほんの一瞬、そして極僅かではあるが、表情を曇らせた。


「ユミーナ様の何が気になる?」

「ユミーナ様ご自身というか…リエネさんとユミーナ様の関係です」

「…」

()()、くれたんですよね?」


 シェリルが指差した先──首元に輝くそれ(首飾り)に、リエネは指先で触れる。


「お返しするつもりだが」

「それでもユミーナ様は、"困ったら売れ"って渡してくれたんですよね」

「…あぁ」


 触れた首飾りを、リエネはぎゅっと握りしめた。


「それに、リエネさんの方も…ユミーナ様のことを大切に思ってそうで」

「そうか?」

「はい。スウォルがユミーナ様のことを"美人だ"って言った時、"ユミーナ様の前では言うな"って言ってたじゃないですか。男が苦手だからって」

「…そうだったな」


 ユミーナが演説で民衆を引きつける中、ハリソノイア城を出てしばらく経った道中での会話が、リエネの脳内に蘇る。


「きっと"機嫌を損ねるようなこと言うな"って意味だったんでしょうけど…私には、ユミーナ様が傷付くから触れて欲しくないように聞こえて」

「…」

「教えてもらえませんか?」

「それを語らねば、"信頼"してもらえないか?」


 カロニア、引いてはティサン人に対するレピの態度を追及する際、シェリルが持ち出した"信頼"を、リエネは敢えて引用した。


「あ、いえ…!そういう訳じゃ…!」

「ふっ…冗談だ。隠さねばならんようなことでもない」


 表情を弛めたリエネは、懐かしむように目を細めながら、ゆっくりと過去を語り始める。


「3歳の頃、私はユミーナ様に拾われたんだ」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は24時頃にXでの先行公開を、明日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

18年前、リエネが3歳の頃に"ユミーナに拾われた"と聞き、シェリルは"お若く見えたのに"と目を丸くすると、リエネは当時のユミーナと自らのことを、静かに語り始める。


次回「ユミーナ・クオシャー」

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