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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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69/75

#69 孤独な目撃者

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告での要約あらすじ公開は今回を持ちまして終了、5月を周知期間とし、6月に入ったら削除いまします。

noteへの移行をご検討ください。


また、来月2日から6日までの5日間、ゴールデンウィークで嬉しいので連日で更新を行います。

お付き合いいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

老婆──ルヴィニケンプに気に入られ、滞在の許可と魔術の指導を受けるリリニシア。

2日が過ぎた頃、ついにスウォルが目を覚ます。

“スウォルが目を覚ますまで”という約束に基づき、ルヴィニケンプは食事が済み次第、速やかな退去を求め、リリニシアに別れの挨拶を告げると、散歩に出た。

「世話になったみてぇでこう言うのもアレだけど、イヤな婆さんだな。さっさと出てけって…」


 ルヴィニケンプが去っていった後の扉を見つめながら、スウォルがため息と共に漏らす。


「そう仰らないでくださいな。“スウォルが起きるまで”とお願いしたのは、確かにワタクシの方ですわ」

「そうかも知んねぇけどよ…」

「それに気むずかしいですがお優しい方ですわよ?ワタクシもこの2日、随分と()()()()()()いただきましたわ」

「…なんか、やたら感が籠ってねぇか?」

「そうですかしら」


 言葉と裏腹に見え隠れする怨嗟に戸惑うスウォルを、リリニシアは茶化すように微笑みを浮かべた。


「リリーはえらく気に入られちまってたもんな!」

「あら、ラツンジパさん。ご用意が済みまして?」

「おう、待たせて悪かったな」


 盛り付けた料理を卓に並べながら、ラツンジパが笑って話に加わる。


「気に入られた?あの婆さんに?」

「“魔術を使うヤクノサニユ人”がよほど面白かったみたいでして…。ですが、確かな学びはいただきましたわ」

「学び?」

「えぇ。詳しい話は後で聞かせて差し上げますわ。今はお食事をいただきましょう」

「ほら、手ぇ貸すぜ。また床を転がされんのは嫌だろ?」

「ありが──え、転がされる?床を?」

「ら、ラツンジパさん!?余計なことは仰らないでくださいます!?」


 キョトンとするスウォルを、ラツンジパは笑いながら手を差し出して助け起こし、肩を貸す形で椅子に座らせた。


「ありがとうございます。…すげぇ、こりゃ確かに美味そうだ。食っていいんすか!?」

「もちろんだ、その為に作ったんだからな」

「やった…!いただきます!」

「ワタクシも謹んで、噛み締めていただきますわね」


 二人同時に手を合わせ、特にリリニシアは惜しむように、ラツンジパの作った料理を口に運ぶ。


「本当に美味ぇや…!なんだよリリニシ──んんっ。リリー、俺が寝てる間、一人で2日間もこんなモン食ってたのかよ」


 思わず本名を口にしかけたスウォルは、リリニシアに鋭く睨まれ、咄嗟に咳払いで誤魔化しながら恨み言も漏らした。


「えぇ、そうですわよ?貴方がもっと早く起きてくだされば、2日も食べられなかったのですけれど。…しかし本当に名残惜しいですわね、これが食べ納めだと思うと」

「そういがみ合うなって、お二人さん。祖母ちゃんはああ言ってたけど、もう少し居たって構わねぇぞ?」


 微笑ましく見守りながら気遣うラツンジパに、リリニシアはそっと首を横に振った。


「お気持ちは本当にありがたいのですが…約束したのは事実ですもの。ご機嫌を損ねたくはありませんわ。あと普通にしんどいです、お稽古が」

「ま、そりゃあそうか」

「いや〜、美味ぇなぁ…」

「…そうですわ。ラツンジパさん、これを」


 無邪気に舌鼓を打つスウォルを横目に、リリニシアは懐に手を差し込み宝石を取り出すと、ラツンジパに差し出した。


「これは…媒介か?祖母ちゃんと作ってた…」

「レピさんたちが立ち寄ったら、これを渡していただけますか?」

「あぁ、分かった。預かっとくよ」



ルヴィニケンプ様は、"レピさんたちもこの村に来る"と断言なさいました。

それが確実なら、このままこの村で三人を待つべきですが…あくまで未確定。

向かっていたとしても、途中で魔物に襲われ、それどころではなくなった…なんて可能性も、存在しないとは言い切れません。


であれば、立ち寄らずとも問題のない(ここ)で待つより、そもそもの目的地であり、()()が起こっても向かわなければならない目的地(シャファルノール)を目指す方が、より確実…。



「もし数日で来なければ差し上げます。ご自由になさってくださいな」

「え…いいのか?なんかキラキラしてるのに」

「ヤクノサニユでお売りになれば、それなりの値段で買い取ってくれるはずですわ」

「はぇ〜…。じゃあ来ない方が助かるな、俺にとっては」


 ラツンジパは受け取った宝石を大事そうに摘まみ、様々な角度から光を当て、冗談めかして笑う。


「ワタクシたちとしては困ってしまいますけれどね。それから、伝言もお願いできますかしら。“先にシャファルノールに向かうので、後から追い付いて欲しい”と」

「あぁ、確かに預かった。…会えるといいな」

「ありがとうございます。よろしくお願いいたしますわ」

「あ〜美味ぇ…!」

「…“美味い”しか言えませんの?」

「作った側としちゃ、それが一番嬉しいさ」


 重大な伝言を託す横でひたすらに食事をかっ込むスウォルに、リリニシアは冷めた視線を送るも、ラツンジパは顔を綻ばせながら庇う。

 それからしばらく後──。


「ご馳走さまでしたァ!」

「ちょっと多すぎたかとも思ったが、まさか全滅とはな。元気そうで何よりだ」

「呆れるでしょう?まぁ、ワタクシも同感ですけれど。…動けそうですの?」

「あぁ、バッチリだ!ありがとうございます、ラツンジパさん!」


 スウォルは礼の言葉と共に、自らの言葉を証明するかの如く、勢いよく立ち上がった。


「ワタクシからも改めて。この2日間、本当にお世話になりました。ありがとうございます」

「おう、どういたしまして」

「ルヴィニケンプ様にもお伝えください。──さて、では参りましょうか。スウォル」

「おう!また遊びに来るよ、ラツンジパさん!元気でな!」

「お前たちこそ達者でな!」


 見送るラツンジパの声を背中に受け、二人は手を振りながら、ラツンジパの家を後にした。


「んで?どういうことなんだよ、リリーってのは。まさか今さら“昔みたいにリリーちゃんって呼べ”とか言い出さねぇよな…」


 そのまま村を抜け東に──シャファルノールに向けて、相変わらず鬱蒼とした森の中を歩き出して少しすると、スウォルが尋ねる。


「違いますわよ、呼んでくれても構いませんけれど。…念のために身分と名前を偽ったんです。」

「あー、お姫様だもんな、一応」

「押しも押されぬ立派なお姫様ですけれど?…ほら、レピさんが言っていたでしょう?“原理主義者と革新主義者が〜”って。覚えてます?」

「あぁ、なんとなーく」

「なんとなく、ですの。2日も眠っていた影響で、まだ記憶がハッキリしてないのかしら?それとも単にあんまり聞いてなかっただけ…?」

「…聞いてなかっただけな気がすんなぁ、我ながら」

「奇遇ですわね、同感です。…まぁともかく、レピさんの口ぶりを考えると、特に原理主義の方には他国人って時点でよく思われないかもしれません。ましてヤクノサニユ王の孫娘と名乗れば、そこに金銭目当ての誘拐とかも乗っかって来ますわ」

「はぁ〜…考えてんだなぁ、色々。転がすってのは?」

「…」


 小馬鹿にしながらも饒舌に語っていたリリニシアが、はたと口を閉じ、目を逸らした。


「リリニシア?」

「そ、それはまぁほら、いいじゃありませんの…」

「…」

「な、なんですの、その目は…。ほら、先を急ぎますわよ!」

「…」


 勢いで誤魔化し歩みを進めるリリニシアだったが、ジトッとしたスウォルの凝視に耐えかね、降伏した。


「わ、分かりましたわよ!言えばいいんでしょう!?…その、ラツンジパさんにお会いする前に、意識がないスウォルを運ぼうと思ったんですけれど…重たくて持ち上げることが出来なかったんです。だから──」

「転がしたのか!?地面を!?」

「…しょうがないじゃありませんの!ワタクシだって“流石に悪いな”って思ったから、転がせば楽って思い付いてからも結構長いこと頑張ったんですのよ!?背負ったり抱えたり!…ハァ!?」

「ハァ!?はこっちの台詞だろ!なんで転がした側がキレてんだよ!」

「“見捨てないで一生懸命運んでくれてありがとう”ぐらい言ってくれてもいいんじゃありませんの!?」

「おいメチャクチャなこと言い始めたぞ、このお姫様!一人になんの怖かっただけじゃねぇのか!?」

「なっ…ワタクシは一人より──。…」

「…なんだよ」


 明らかに続けてなにかを言おうとし、取り止めたリリニシアの不審な様子に、スウォルは首を捻る。


「…もう一度聞きますけど、崖から落ちたワタクシたちがどうやって助かったか、なにも覚えてないんですのよね?」

「あ?あぁ、覚えてねぇけど…なんか関係あんのか、それ」

「いえ…。言い争っていても仕方ありませんわ。早くシャファルノールに向かいますわよ」

「あ、おい!…なんだってんだよ、いったい」


 一方的に話を打ちきり、目的地に向けて脚を早めたリリニシアの様子に、スウォルは困惑しながらも後を追いかけた。

 リリニシアの言葉を止めさせたのは、スウォルが覚えていない"助かった時の記憶"。

 着地し、リリニシアを抱き締めていた、スウォルとは駆け離れた異形の姿。


 落ち行く最中、声を鳴らない悲鳴と共に肉が裂け、血を撒き散らしながら姿を変えていく音を、リリニシアは聞いていた。

 落ちることより、それが怖くて目を閉じた。


 自身を抱き締め、共に崩れ行く岩の塊を足場にしながら跳び回り、やがて地に辿り着いた時、スウォルの肉体は"勇者の盾"と一体化していた。

 その姿も、身体能力も、とてもヒトのモノとは思えず、むしろ──。


 ハリソノイアでユミーナの依頼をこなした帰り道、ヤクノサニユとの国境にある廃村でボロガブザリを倒した後、すぐに傷が癒えたスウォルに対して自らが投げかけた軽口を、改めて噛み締める。


"どっちか魔物か分かりませんわね"。


 "1人になるより、スウォルがスウォルじゃなくなる方がよほど怖かった"と、リリニシアは告げないことにした。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は5月1日19時にXでの先行公開を、2日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

スウォルとリリニシアが村を発ってから2日後、シェリルたち三人がラツンジパの家を出た後のこと。

崖の上の集落から避難した住人を見付け、巨大生物の討伐を伝えたのち、スウォルたちを追って東に向かう三人を呼び止める声が響く。


次回「森と木」

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