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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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68/100

#68 お目覚めと約束

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。

初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


活動報告での要約あらすじ公開は、4月更新分を持ちまして終了致します。


また、来月2日から6日までの5日間、ゴールデンウィークで嬉しいので連日で更新を行います。

お付き合いいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

老婆に対し名を偽ったことを詫び、実の名を明かしたリリニシア。

ヤクノサニユ王の意図やハリソノイアの現状を聞かせる中で信頼を勝ち取り、魔術の手解きと共に老婆の名、“ルヴィニケンプ”を聞くに至った。

「ただいま~。祖母ちゃん、水汲んで──え、どういう状況?」


 しばらく経ち、重たい水瓶(みずがめ)を抱えて帰宅し、扉を開けたラツンジパは、状況が掴めずに硬直した。


「おや、おかえり」

「はっ…はぁ…っ!お、おかえりなさいませ…!けほっ…!あ、あの、ルヴィニケンプ様…」

「なんだい?()()()

「…いえ。ありがとうございます…」


 不安げなリリニシアに、ルヴィニケンプはその不安を察し、ラツンジパの目の前で、敢えて彼女を偽名で呼ぶ。

 ラツンジパは困惑しながら、その場に水瓶を置き、尋ねた。


「え、祖母ちゃん、ヤクノサニユ人に名前教えたのか?いつも余所者がどうとか言ってんのに…」

「まぁね。こいつは気に入った。…面白い娘だよ」

「こ、光栄ですわ…ひぃ…」

「だ、大丈夫か?リリー。いったい何が…?」

「小僧が目を覚ますまで家に置いとくことにしたよ。せっかく居座らせるなら、ついでに魔術の一つも仕込んでやろうかと思ってね」


 ルヴィニケンプはくいっと顎でスウォルを指しながら、ラツンジパの疑問に答える。


「へぇ…祖母ちゃんがヤクノサニユ人に。本当に気に入ったんだな、よっぽど。…どうだリリー、祖母ちゃん厳しいだろ?」

「え、えぇ…。レピさんって優しかったんだなぁって…」

「今の腕はラツンジパの方が上だけど、年齢(とし)とヤクノサニユで生まれ育ったことまで考えると…あんたなんぞより、よほど筋がいいよ」


 たじろぐラツンジパを見ながら、ルヴィニケンプは楽しそうに笑った。


「そりゃねぇだろ~、祖母ちゃん!」

「あるさ。あんた、ウカウカしてるとすぐに追い抜かされるよ。それが嫌なら気合い入れ直すんだね」

「え〜…そ、それよりなんの話してたんだ?祖母ちゃんが他国のヤツをそこまで気に入るなんて」


 ラツンジパは嫌そうに顔をしかめ、あからさまに話を変える。


「バカだね、女の話に首を突っ込むんじゃないよ」

「なんだよ、俺だけ仲間外れってか?」

「あんただって男同士で、女には聞かせられないような話をすることだってあるだろうよ」

「え〜…」


 ラツンジパは助けを求めるように、チラリとリリニシアに視線を移すが──。


「申し訳ありません、その…男の方にお話するには、恥ずかしい事なんかもございますの」

「ふぅん…そんなモンか」


 リリニシアが恥ずかしそうに顔を伏せると、ラツンジパは釈然としない様子を見せながらも頷いた。


「それよりその水、いつもの場所に置いてきな」

「ん…あぁ、そうだな。よっと」


 一度降ろした水瓶を再び担ぎ上げ、家の奥に姿を消すのを見届けたルヴィニケンプは、リリニシアの耳元で囁いた。


「よかったね」

「え?」

「あの子が未熟者で、あんたにとっては助かったじゃないか」

「…そうですわね」


 "一定以上の高みに至った魔術師は嘘を嗅ぎ分ける"。

 ルヴィニケンプの言葉を思い出し、"他者の未熟に感謝する"ことに複雑な思いを抱きながら、ゆっくりと頷いた。


 それからリリニシアは、目を覚さないスウォルの様子を見守りつつ、ルヴィニケンプにしごかれ続け、規模は小さいものの、丸1日で風の魔術を任意で使用出来るまで習得。

 そのまま媒介を作る修行に移り、更にもう1日が過ぎた頃のこと。

 リリニシアは変わらずに汗を流しながら、小さな宝石を頭上高く掲げた。


「で…出来た!出来ましたわ!媒介!ねぇほら!ご覧になって!?」

「落ち着きな、リリー。ちゃんと出来てるよ。まぁ、まだあたしの補助が前提だがね」

「すげぇ…!本当にたった2日で風の魔術に媒介まで…!こりゃ本当に追い抜かれちまうぞ、あっという間に…!」


 祖母の言葉がデタラメではないことを痛感し、冷や汗を垂らす。


「ん…」

「…今どなたか、なにかおっしゃいました?」

「いや、俺は何も」

「やっとお目覚めのようだね」


 ルヴィニケンプの言葉を受け、リリニシアは弾かれる様に、一気に視線を動かした。


「んぐ…どこだ?ここ…」

「スウォル…!目が覚めたんですのね!?」


 大きな声と共に、リリニシアはスウォルの枕元に駆け寄る。


「…リリニシ──」

「スウォル!」

「むぐっ!?」


 そのままスウォルに抱き着いたリリニシアは、ラツンジパに見えないよう片手で口を抑えると、小声で語り掛けた。


「ワタクシのことは"リリー"とお呼びなさい」

「!?」

「説明は後で必ずするから、今は話を合わせてちょうだい。お願いよ」

「…」


 目覚めた直後で頭も働かない中、スウォルは小さく頷く。

 それを確認すると、リリニシアはスウォルの口元から手を、同時に身体も離した。


「よかった…!心配したんですのよ!」

「あ、あぁ…悪い、り…リリー…?」

「構いませんわ!本当に起きてくれてよかった…!」

「えっと…その、ここは?それにこの人たちは…」


 呼び方については何とか合わせるとしてそれ以外、周囲すべてが理解できていないスウォルは、キョロキョロと辺りを見回しながら尋ねる。


「レピさんの故郷の村ですわ。…ワタクシたち、崖から落ちてしまったことは覚えてますかしら?」

「あぁ、なんとなくは…。あの馬鹿デカい怪物と戦ってて…」


 頭を抑えながら必死に記憶を辿るスウォルに、リリニシアはゆっくりと語り聞かせた。


「はい。ワタクシとあなただけ、崖が崩れるのに巻き込まれてしまいました」

「…姉ちゃんたちは!?」

「分かりません。崖の上に残っているはずですが、あの後どうなったか…」

「くっ…!姉ちゃん…!」


 姉を案じ歯噛みするスウォルに対し、リリニシアは冷静さを保ち、続ける。


「ワタクシたちも…正直、あの高さから落ちて、どうやって助かったのか分かりません。気が付いたら…既に地上にいたものですから」


 リリニシアは言葉を選ぶように、少しずつ言葉を途切れさせながら語る。

 スウォルが異形の姿に変異していたことを思い出しながら──。


「…」


 その様子を、ルヴィニケンプは目を細めながら、何も言わずに見守った。


「その後、こちらの…レピさんと幼馴染みだと言うラツンジパさんとお会いして、助けていただきました」

「はじめまして、スウォル。ラツンジパだ」

「レピさんの…!ありがとうございます、助かりました。ら、らつ…ん…」

「すまんな、言いづらい名前で」


 気まずそうに頬を掻くスウォルを、ラツンジパは笑い飛ばす。


「そしてこちらがラツンジパさんのお祖母様、ルヴィニケンプ様ですわ」

「ふん…」

「あの…ど、どうも」


 孫のラツンジパと異なり、ルヴィニケンプは素っ気なく鼻を鳴らした。


「スウォル…あなた、2日も目を覚まさなかったんですわよ」

「え…ふ、2日!?そんなに…!そ、そういえばすげぇ腹減って…」


 眠っていた時間を聞き、自覚した途端に空腹が訪れる。

 その姿を見たラツンジパは、穏やかに笑った。


「はっはっは…そうだよな、2日も寝てりゃ腹も減るよな!飯…の前に、まず水か。待ってろ、持ってきてやる」

「あ、ありがとうございます…」

「スウォル…食べられそうですの?」

「た、たぶん…とりあえず腹はめちゃくちゃ減ってる…」

「ふふ…よかった。ちゃんとスウォルですのね」


 リリニシアは言葉の通り、微笑みに心底の安堵を滲ませる。


「なんだよ、ちゃんとって…?」

「いえ、こっちの話です。…起きられますか?」

「…悪い、手ぇ貸してくんねぇか?」

「もちろんですわ」

「待たせたな。ほれ、水だ」


 水を持って戻ってきたラツンジパが、リリニシアの手を借りて上体を起こしたスウォルに手渡した。


「いただきます。…ぷはっ、美味ぇ…!」

「俺がしんどい思いして汲んで来た水だ、ありがたく飲めよ〜?」

「こんなに水が美味ぇと思ったの、はじめてっす」

「おっ、お前なかなか分かってるじゃねぇか!待ってろ、飯を用意してやる」

「ラツンジパさんのお料理、すんごい美味しいですわよ」

「マジか!お願いします!」

「おう!」


 食欲に正直なスウォルに、ラツンジパは嬉しそうな笑顔で答え、再び家の奥に姿を消した。

 まだ万全とはいかずとも、食事の話題で元気を取り戻したスウォルを見て頬を綻ばせるリリニシアに、ルヴィニケンプは淡々と告げる。


「約束は覚えてるね、リリー」

「…はい、もちろんですわ」

「約束?なんの?」


 首を傾げるスウォルの質問に、リリニシアは申し訳なさそうに答えた。


「“スウォルが起きるまで、この家に置いていただく”という約束ですの。つまり、目覚めた以上は…」

「出てかなきゃなんねぇってことか」

「飯を食うぐらいの猶予はやるさ。食ったらさっさと出ていくんだね」

「…スウォル、動けそうですか?」

「あぁ。痛みとかは特にねぇから、たぶん大丈夫だと思う。…飯さえ食えば」

「そうですの。よかった…。では、ルヴィニケンプ様。お約束の通り、お食事が済み次第、すぐに発ちます。何から何まで、本当にお世話になりました」

「ふん…」


 深く頭を下げたリリニシアに、ルヴィニケンプは何も言わずただプイと顔を背け、奥のラツンジパに大きな声で語りかけた。


「ラツンジパ!あたしゃ散歩に出るよ!さっさとお客様に飯出して出てってもらいな!」

「あぁ、気を付けてな!」

「あんた、誰に物言ってるつもりだい?…じゃあね、リリー」

「…はい。ルヴィニケンプ様も、お元気で。ワタクシたちのお仕事が終わったら、また必ず会いに参りますわ」


 "故郷"に寄る必要がないのなら、崖の上か穏やかな道を通ってシャファルノールを目指せることは、レピの言い回しから察しがついている。

 用を済ませてヤクノサニユに帰る際、敢えてこの村を通る必要はない。


「ふん…。あんたが無事で、あたしが生きてる内に"仕事"が終わればね。──無理するんじゃないよ」


 リリニシアの言う仕事、すなわち魔王討伐に臨む彼女たちの身を案じる言葉を残したルヴィニケンプは、どこか気恥ずかしそうにそそくさと扉を開け、外に去って行った。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は4月27日19時にXでの先行公開を、28日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

退出したルヴィニケンプの態度にスウォルが不快感を滲ませる一方、リリニシアは複雑な思いを見せながらも、彼女を庇う。

ラツンジパが食事の用意を済ませると、リリニシアはシェリルたちへの伝言と共に、彼に一つ、小さなモノを託す。


次回「孤独な目撃者」

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