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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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67/75

#67 老婆とお姫様

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

老婆との問答で、ハリソノイアの廃村に違和感を持つ者がいなかった理由が、何者かの"個質魔術"による可能性を深めた他、スウォルの盾とシェリルの剣で、主以外を弾き飛ばす力に差があることを認識したレピは、シェリルやリエネと共に、"崖の上の集落の民"と話すべく、ラツンジパの家を後にする。

時を遡る事4日、リリニシアと老婆は──。

 ラツンジパを追い出し、二人きりになると、リリニシアにとっては気まずい静寂が場を支配した。

 緊張し、唾を飲むリリニシアを、老婆はニヤニヤしながら見つめる。



あの表情、なにか見覚えがありますわ…。



 そう考えながらチラリと様子を伺うリリニシアに、老婆は切り出した。


「なにか言いたいことがあるね」

「…お見通しですのね」

「そしてそれを話すに当たって、嘘を明かすべきか迷ってる」

「…」

「覚えときな。一定以上の高みに至った魔術師は嘘を嗅ぎ分ける。自然が教えてくれるのさ。元老院の連中も、当然ね。…それで?()()()()()?」


 意味ありげに嘘の名を強調する老婆に、リリニシアは観念したように答える。


「ご忠告、痛み入りますわ。…申し訳ありません、名を偽りました。実の名をリリニシアと申します」

「ヤクノサニユのリリニシア姫と言やぁ、国王の孫娘。高貴な身分だ。何を言いに来たんだか知らないが、間違っても使者なんてやらされる立場じゃないね」

「行かせてくれと、お祖父様に頼み込みました」

「ほう、姫自らが。なんだってそんなことを?名前を偽った辺り、危険なのは理解してるだろうに。…話しな、協力を得たくばね」


 リリニシアは何度か頷いた。


「“言いたいこと”の内容までお見通しですか。敵いませんわね、お婆様には」

「世辞はいいよ、本題に入りな」

「…このスウォルと双子の姉シェリルは、かつて勇者ルベスが使っていた盾と剣に、唯一触れることが出来る人間…新たな勇者なんです」

「へぇ…魔物を殺せるって伝承の。これがねぇ…」


 老婆は、眠るスウォルの腕に装備されたままの盾を眺める。


「シェリルは剣、スウォルは盾を、それぞれ受け継ぎました。どういう訳だか、逆の組み合わせではダメらしいですわ」

「ほう…それで?」

「二人はワタクシの幼馴染みでして、使者としての役割も、本来は二人に対してのものです」

「ふぅん…。幼馴染み、ねぇ」

「それだけでなく、ルベスの剣と盾を用い、魔王を討伐する任務も与えられています。ワタクシの魔術も、二人に同行する為に習得したものですわ」

「魔王を討伐しろって勇者様が、なんだってお使いなんてさせられてるんだい。裏があるね」


 鋭い目で訝しむ老婆に、リリニシアは全てを明かすことを決意した。


「お祖父様は、“魔物という共通の敵を持ち、人類が団結する好機”だと」

「…なるほどね、読めたよ。魔物が片付いたとして、今のままじゃ結局、人間同士で争う世界に戻るだけだ。だから魔王を討つ前に、根回しがてら勇者こいつをその象徴に祭り上げる。…そういう腹だね」


 顎でスウォルを指しながら言う老婆に、リリニシアは首を縦に振る。


「表現に悪意がある気がしますが…間違いではないかと思います」

「随分キレイなことを言うじゃないか。ハリソノイアが同意するとは思えんがね」

「いえ、既に得ました」

「…なんだって?」


 余裕を保っていた老婆は、リリニシアの言葉に顔色を変えた。


「マキューロより先にハリソノイアへ向かいました。ご存知の通り、ハリソノイアの統治者は武力で決まるのですが…最近その椅子に座ったユミーナ様が、変わったお方でして」

「どう変わってるんだい」

「ハリソノイア嫌いのハリソノイア人というか…自らを異常者と呼んで(はばか)らず、"異常者である自分にとって都合がいい国に作り変える"為、先代を討ったとか」

「…都合がいい国、ってのは?」


 信じられない、といった様子で、老婆は質問を重ねる。


「外交を重んじ、平和を模索する国」

「…」


 老婆はあんぐりと口を開け、絶句した。


「…お気持ちは分かります、あのハリソノイアですから。けれど、これが現大王ユミーナ様の方針です」

「いや、いやいやいや…外交?平和?そんなのハリソノイアから一番縁遠い言葉じゃないか…。何を言ってるんだい、あんたは…?」

「実際にお会いし、お話して…少なくともユミーナ様ご自身は、本気で国を変えようとしている。ワタクシはそう信じました」

「…根拠は?」


 やまない老婆の追求に、リリニシアは怯まず答える。


「ユミーナ様は先代を討ち、自らが大王の座につき、先の方針を公表し、国民からの反発を受けました」

「そりゃそうだろうさ…」

「当然、ハリソノイアの流儀に則り、ユミーナ様を引きずり下ろすべく多数の国民が挑み、返り討ちにあったそうですが…"敗者には死"が当たり前のハリソノイアにおいて、彼女は全員、殺さずにいる、と」

「彼女…女なのかい、そのユミーナってのは」


 驚愕が止まらない老婆に、リリニシアは淡々と事実を伝えた。


「えぇ。それでも尚、反発は止んでおりませんでしたが…ワタクシたちが和睦を持ち掛けると、"自分は賛成だが国民が"とした上で、その国民を納得させる為の策まで講じてくださいました」

「…その策ってのは?」

「ちょうどワタクシたちが訪れた頃、対魔物の防衛戦が、特に強大な魔物によって崩されかけておりました。その魔物の討伐を、ワタクシたちに依頼なさったのです」

「…なるほど、力を至上とする国民に、あんたたちの力を見せつけようって訳だ。実際に反発を受けながらその方針でいる辺り、そのユミーナにテイよく利用された…って訳でもなさそうだね」


 首を横に振りながら、リリニシアは答える。


「はい。自国の民をバカとか野蛮とか罵る姿から、"今までのハリソノイア"に、心底うんざりしているように感じられました」

「…」

「ハリソノイアは変わろうとしているのです」

「待ちな。確かに変わろうって意思は感じるが、それはそのユミーナってのの方針だろう?仮にユミーナが倒されたり病没…いや、なんなら天寿を全うしたとしても、それまでに国民の意識をどうにか出来なきゃ、次の代で元のハリソノイアに逆戻りじゃないのかい」

「それは…」


 老婆の指摘を、リリニシアは否定できなかった。


「それどころか、狙った通りユミーナが生きている間に国民全体の意識を変えられたとして、だ。仮に新たなハリソノイアに産まれた、古い価値観を持つ一人の"異常者"が強ければ、そいつがまた国の頂点に立つんじゃないのかい」

「…」

「結局、"強い者が偉い"なんて前提がある以上、ハリソノイアに安定なんて求められないんじゃないかね。強くても一人の意思でどうこう出来ないって意味じゃ、五人いる元老院(こっち)のほうがまだマシだよ」

「…仰る通りだと思います。ですが──」


 それどころか認めざるを得ないが、リリニシアは折れない。


「おそらくはハリソノイア史上、初めての試み。不可能だと断じるには、まだ早いのではないでしょうか。賭けではありますが、賭ける価値はあると考えます」

「その賭けに負けたら、身内だと思ってたハリソノイアに背中から刺されることになるんじゃないかい?」

「それまでにハリソノイア以外のすべての国が手を携えることが出来れば、ユミーナ様の後任者の思想がどうであれ、圧力になるかと」

「なんだい、散々キレイなこと抜かしといて、結局は武力かい」


 蔑むようにほくそ笑む老婆に、リリニシアは動揺を見せることなく、毅然と答えた。


「否定はいたしませんが…抑止力、と表現していただきたいですわ」

「へぇ…?夢見がちなお姫様かと思ったが…存外、現実を見ているね」

「お祖父様の姿を見てきましたし、次期王位継承者としての教育を施されておりますので。…試しましたわね?」

「くっくっくっ…!これでプリプリ怒ったり落ち込むようなガキなら追い出そうかと思ったが…なるほどね。気に入ったよ、あんた。ヤクノサニユの王位なんか捨ててラツンジパの嫁に来ないかい?」


 先程とは違い老婆は、心から楽しそうな笑みを漏らす。


「ふふ…光栄ですが、そういう訳には参りませんわ」

「あぁそうだろうね。…いいさ、小僧が目を覚ますまでここにいな」

「ありがとうございます。助かりますわ。…もう一つ、お伝えしておきたいことが」


 深く頭を下げ、感謝を示したリリニシアは、頭を上げた後、再び口を開いた。


「なんだい?」

「ワタクシがはぐれてしまった三人のうち、一人はここで産まれた魔術師のレピさん。もう一人はシェリル。そしてもう一人、リエネさんは…ハリソノイア人です」

「…ふぅん?」

「彼女はユミーナ様のご命令を受けるより早く、自らの意思で行動を共にしたいと仰ってくれた…信頼のおける仲間です」


 リリニシアは力強い眼差しで老婆を見つめ、続ける。


「もしかしたら、三人がワタクシたちを探し、ここを訪れるかも知れません」

「来るよ」


 不安げに言うリリニシアに、老婆はすぐさま到来を断定した。


「…」

「自然がそう言ってるのさ。信じられないかい?」

「いえ、信じます。…レピさんのことです、リエネさんの出自を偽るかも知れませんが、どうかお許しください」

「ふん…ハリソノイアに対するマキューロ人(あたしたち)の感情を知ってるなら当然さ。この村に産まれ、勇者一行に加わる魔術師ともあろう者が、そんな程度の腹芸も出来ないようじゃ村の…いや、マキューロの恥だよ」

「時々、うっかり口を滑らせたりはいたしますがね…。ともあれ、感謝いたしますわ」


 老婆の返答に、リリニシアは改めて、深く頭を下げた。


「あんた、風の魔術を練習中だと言ったね」

「え?えぇ、それから媒介の作成も。…先は長そうですけれどね」

「どれ、あたしに見せてみな」

「…ありがとうございます、お婆様!」


 大きく頭を下げるリリニシアに、老婆は笑いながら言う。


「ルヴィニケンプってんだよ、あたしは」

「!…確かに覚えましたわ、ルヴィニケンプ様」


 ラツンジパが水汲みから戻るまで、ルヴィニケンプの厳しい魔術指導は、一時の休みもなく続いた。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は4月20日19時にXでの先行公開を、21日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

水瓶を抱えて帰宅したラツンジパは、余所者を嫌うルヴィニケンプが名を教えていたこと、リリー──リリニシアに魔術の手解きをしていることに気付き、目を丸くした。

状況を掴もうとするラツンジパを躱し、2日後──。


次回「お目覚めと約束」

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