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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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65/75

#65 老婆の古き友

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


4月以降の更新につきまして、これまで毎週、月曜20時にXにて冒頭の先行公開、火曜20時に本編の公開、金曜20時に要約あらすじを公開しておりましたが、すべて曜日は変わらず19時に変更いたします。

今後もお付き合いいただければ幸いです。


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

問答の末、理想とする"強要されず、我慢せず、納得の上での団結"を老婆に否定され、動揺するシェリルだったが、自らがラツンジパに掛けた"時間を掛けて考えればいい"をそのまま返され、落ち着きを取り戻す。

"リリニシアからの伝言"をラツンジパに聞かされ、すぐに追いかけようとするシェリルを制し、レピは老婆に"禁じられた魔法"のことを尋ねた。

「ふむ…。"禁じられた魔法"、か…」

「あぁ、兄ちゃんはそれを探してるって話だったな」


 リエネに"いつもの"と称されたレピの質問、"禁じられた魔法について"を聞き、ラツンジパはリリニシアの言葉を思い出す。

 レピは頷き、自分の口から、改めて目的を語った。


「うん。僕はそれを探して旅を始めたんだ。ラツンジパは知らないんだよね?」

「リリニシア…姫から聞いたのが初めてだ。祖母ちゃん、知ってる?」

「そうさねぇ…」


 ラツンジパに話を振られ、老婆は値踏みするように目を細め、レピに問う。


「それに辿り着いて…あんたはどうするつもりだい?」

「何か目的があって、その手段として探している訳ではありません。見つけること自体が目的です」

「それじゃ単なる自己満足じゃないか」

「仰る通りです」


 老婆の嫌味な物言いに、レピは些かも動ずることなく、臆面もなく肯定した。


「"魔術"ではなく、元より魔力を持たない人間(僕たち)には禁じるまでもなく扱えない"魔法を、敢えて禁ずる不可解…!それが僕を、どうしようもなく惹きつけるんです」


 レピは心底楽しそうに、恍惚とした表情さえ見せながら語る。


「…この若造、新手の変態かい?」

「そうかも知れません…」


 呆れ顔の老婆に尋ねられ、シェリルは"違います"とは言えなかった。

 口には出さずとも引いている様子のラツンジパ、慣れたものとばかりにため息を吐くリエネに臆することなく、レピは"自己満足"の探求を続ける。


「些細なことでも構いません、ご存知のことがあれば教えてくださいませんか」

「…あんたは今、何をどこまで知ってるんだい」


 老婆は"知らぬ"とは答えない。


「かつての勇者ルベスが作り出し、自ら封じた物である…というくらいです」

「…あんた、言っていておかしいと思わないのかい?」


 若干の興味を唆られ、シェリルが老婆に尋ねた。


「え…どういうことですか?」

「簡単な話さ。さっきコイツが言ったろう?"魔力を使えないから、人間に魔法は使えない"。それをルベスが作ったんじゃ、おかしな話じゃないか」

「あ…そっか。ルベスが魔法を使えないと成立しないですもんね。つまり…どういうことですか?」

「考えうる選択肢は二つだね」


 老婆が指を二本立てて見せると、レピは頷きながら引き継ぐ。


「"魔法と言う表現が単なる比喩"か、"ルベスが人間ではなかった"か…でしょうか」

「え…!?に、人間じゃなかった…!?」


 レピの挙げた仮説に衝撃を受けるシェリルに、老婆は追い討ちを掛けた。


「…より正確に言うなら、魔法を使ってたとするなら、"ルベスが魔物だった"だね」

「ま、魔物!?勇者ですよ!?」

「誰も会ったことがないんだ、魔物じゃなかった保証なんてないよ」


 老婆に、動揺を楽しむようにからかわれるシェリルに、レピは助け船を出す。


「あまり遊ばないであげてください。…とはいえ、仮に比喩ではなく、魔力に由来する本物の"魔法"であったとするならば…現在、魔物として定義出来る唯一の条件が、"魔力を有すること"ですから。その定義に依るなら、ルベスは…ということになります」

「そんな…」


 受け止めきれない様子のシェリルに、レピは穏やかに微笑みかけた。


「流石に考えづらい可能性だとは、僕も思っています。"魔物"とまでは表現せずとも、魔力を有していたのなら、それらしい伝承が残っていてもおかしくはありませんから。それがない以上、有力なのはやはり"魔法は比喩"の説でしょう」

「そ、そうですか…」


 頷きはしつつも動揺が消えないシェリルを他所に、老婆は口を開く。


「さて、話を戻すが…詳しいことは知らないよ」

「!…では、多少はご存知なんですね」

(たもと)を分かって久しいが…古い知り合いに、あんたと同じで"禁じられた魔法"に魅入られたヤツがいてね。興味がないって言ってんのに長々と講釈を垂れてくれたモンさ」


 懐かしそうに語る老婆だったが、ふと表情を曇らせた。


「そいつはあんたと違って、ルベスが魔物…"魔力を持つ人間"だった可能性を信じていたがね」

「…」

「"解き明かせば、人間(自分たち)にも魔法が使えるようになるかもしれない"なんてバカな野望(ゆめ)に取り憑かれて…。本当に、くだらない男さ」


 そう語る老婆の表情は、共に暮らす孫ですら初めて見るものだった。


「祖母ちゃん…」

「魔術がヘタクソなヤツでねぇ…。近くにあたしみたいな天才がいたのも悪かったんだろうが、どんどん拗らせて…"禁じられた魔法"に傾倒しちまった」

「…その彼は、今は…?」


 恐る恐ると言った様子で尋ねるレピに、老婆はふと口元を緩める。


「よかったね、生きてるよ」

「本当ですか!お話を伺いたいのですが、現在の所在なんかは…?」

「知ってる。…あんた、ツイてるね」

「は…?ツイてる、というと?」

「これから会いに行くんだろう?」

「…もしかして、元老院に?」


 老婆の言葉の意味を思案し、レピは一つの回答に辿り着いた。


「あぁ。ロガーメーポ・ムータオヒカ。それがそいつの名さ」

「…!」


 辿り着いた回答を超える正解を提示され、レピは目を見開く。

 その動揺は、ラツンジパにとっても同じだった。


「元老院って…魔術ヘタクソだったんじゃ…!?」

「昔はね。大方どこかで諦めて、その熱意を魔術に傾けたんだろうよ。…まったく、ハナからそうしておけばねぇ…」


 悔いるように、老婆は小さく首を横に振る。


「過去はどうあれ…元老院に名を連ねている以上、現在における最上の魔術師の一人…ということですね…」

「さてね。案外、あたしみたいに蹴ってるヤツも多いかも知れないよ」

「いねぇよ祖母ちゃん、そんなヤツ…」


 戸惑いながら、やっとの思いでラツンジパがツッコむと、老婆は再び笑顔を見せた。


「くっくっく…!教えてくれるかは分からないが、後はそっちに聞くんだね」

「はい…!ありがとうございます!」

「それで?"いくつか質問したい"って言ったね。後はなんだい」

「次は魔術のことですが…他者の意識や認識に、魔術で介入し、影響を及ぼすことは可能ですか」


 次なるレピの問いに、老婆は僅かに顔をしかめる。


「…意識に介入とは穏やかじゃないね。どういうことだい」

「ヤクノサニユとハリソノイアの国境にある村が滅んでしまった事件をご存知でしょうか」

「レピさん…?」

「お前…」


 シェリルは予想だにしない質問に驚き、リエネはおおよその意図を察した。


「あぁ…また古い話を持ち出したね。いつの話だったか」

「ラツンジパは分かるかい?」

「今からだと…15年前か」


 指折り数えた末にラツンジパが出した答えに、三人は目を見開いた。

 レピは冷静に、ラツンジパに尋ねる。


「数え間違いはないかい?」

「え?ないだろ?…うん、15年前だ」

「マキューロでもそう教えているのか」


 ハリソノイア人というだけではなく、腕を組み、顎に手を当てながら呟くリエネの意味深な態度に、ラツンジパはやや苛立った様子を見せた。


「教えてる?…何が言いてぇんだ」

「…頼む」


 これ以上は喋らない方が賢明と見て、リエネはレピに託す。


「はい。リリニシア様もそう教わっていたんだけど、実際に事件が起きたのは16年前。…1年のズレが生じているんだ」

「…そ、そうなの?」

「そりゃおかしな話だね」


 レピの説明に、老婆は首を捻った。


「おかしいって…たった1年じゃねぇか」

「阿呆…。16年前ったら、とっくにヤクノサニユの王位には、ゼオラジム王が就いてた時期だ。なにかしらの理由で末端には15年前って教えることがあったとしても、次の王位継承者であるリリニシアには真実と、嘘を教える理由を伝えるはずさ」

「そ、そういうもんか…?」

「…ゼオラジム王は健在なんだろう?」

「は、はい!お元気です」


 真剣な表情で問う老婆に、シェリルは思わず背筋を伸ばし、答える。


「解せないね…」

「加えてもう一つ、それ以上に気になることがありまして」


 考え込む様子を見せる老婆に、レピは続けた。


「その村の滅亡が、魔物によるものだと言うことは?」

「…教わってるかい?」

「あぁ、そう教わった。…まさか、それも違うのか?」


 信じていた歴史が揺らぎ、不安そうなラツンジパに、レピは首を横に振る。


「いや、それは間違いなさそうだ。…それが問題なんだ」

「…どういうことだよ?会ってるなら何が問題なんだ…?」

「まず、魔物が北から南下する形で現れることは知ってるね?」

「あぁ。それをハリソノイアが北端で食い止めてんだろ?…おかげで、とは言いたかねぇけど」


 ラツンジパは、一瞬リエネに視線を送りながら、吐き捨てるように言った。


「じゃあ、滅んだ村の場所は?」

「さっき自分で言ってたじゃねぇか。ヤクノサニユとの国境、国の南端だ」

「その通り。にも関わらず──」


 レピは深刻そうに頷き、険しい表情で続けた。


「ハリソノイア人にもそれとなく聞き込んでみたんだけど…リエネ(彼女)も含め誰一人、"魔物が現れる北ではなく、国の南端にある村だけが襲われた"という不自然な状況に、疑問を持っていなかったんだ」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は4月6日19時にXでの先行公開を、7日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

"違和感を持てないよう、魔術で操作されていたのでは"とのレピの問いに、老婆は答える。

"理論上は不可能じゃないね"。


次回「マキューロとハリソノイア」

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