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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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105/107

#105 マキューロの姿

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~#105のあらすじ~

和睦を歓迎する考えを示したガガーニムに対し、ロガーメーポ他国の動きや"ヤクノサニユが何を企んでいるか"が分からないとして慎重論を唱えた。

反発するシェリルとスウォルに"自身も騙されている可能性"を示唆し、問う。

「そやつ、本当にお前たちと血が繋がっておるのか?」

「…は?」


 一切想定していなかったロガーメーポの問いかけに、双子が僅かな思考停止の末に絞り出した声は、ピタリと重なった。


「ムータオヒカ卿!」

「お前たちは父親の何を知っておる?お前たちが産まれる前、父親は何をしておった?」

「くっ…お二人とも、どうか落ち着いて──」


 ガガーニムの制止を無視し、ロガーメーポは質問を続ける。

 次いで二人を、言外に"乗せられるな"と諌めたガガーニムだったが、残念ながら若く未熟な二人──特に、頭に血が登ったスウォルに対して、効果はなかった。


「兵士としてハリソノイアと戦ってた!それがなんだ!」

「そうです…!」

「…」

「ほぉ…?」


 スウォルの答え、そして隣で頷くシェリルに、そ(・)れ(・)が(・)嘘(・)だ(・)と(・)知(・)る(・)仲間たちは一瞬、視線を逸らす。


「ムータオヒカ卿〜、この子たちと面識あったんですねぇ〜」


 自身も既に全員と面識がある事を棚に上げ、クレンが口を挟んだ。


「招集を受け、ジスタム卿の塒(ねぐら)に伺った時、スウォル殿とリリニシア姫にはお会いしましてな」

「へぇ〜…。お父さんの名前もその時に?」

「そうですが。…話を戻しても?」

「…」


 リエネはこのまま、クレンが助けてくれる事を内心で期待していたが、クレンはその期待には応えなかった。


「えぇ、どうぞ〜?」

「くっ…!」


 "何故助けない?この話が、貴方の目的に繋がりうると見ているのか…?"

 リエネが小さく舌打ちする中、ロガーメーポは歪んだ笑みを浮かべ、向き直る。


「さて、彼らのお父君のこと…お間違いございませんかな?リリニシア姫」

「…!」


 名指しされたリリニシアの心臓が、大きく跳ねた。


「お仲間のお二人でも構いませんぞ?」


 続けてレピとリエネに、順番に視線を向けた。

 仲間たちの不審な態度を、ロガーメーポは見逃していなかった。


「な、なんでレピさん達に…!?」


 同郷であり、幼馴染であるリリニシアはともかく、旅を始めてから知り合った、付き合いの浅い二人に話を投げた事にシェリル、スウォルが困惑する中、リリニシアは瞬時に思考を巡らせる。



どう答えれば…!?

グラウム様から聞かされた"真実"、二人には話していない…。


けど、"そうだ"と言えば…相手は元老院。

嘘は通じない…。

そうなれば、二人にも"クーヤイ様が、ハリソノイアとの戦いに参加した経験がない"ことが明るみに…!



「リリニシア…?」

「恐れながら──」


 リリニシアが全力で脳を働かせている間、スウォルの呼びかけを遮り、レピが一歩前に出た。


「彼らのお父上の事、連合の話に"関連しない、別の事象"ではございませんでしょうか」

「あ…レピさん…」


 思考に集中し、状況の理解が一歩遅れたリリニシアを庇うように、レピはロガーメーポの言葉を引用し、そのまま返す。

 ロガーメーポはフン、と鼻を鳴らし、答えた。


「レピと言うたか。儂は今、ヤクノサニユからのお客人と話をしておる。貴様こそ、この場に関連しておらぬ部外者よ」

「いえ、それは違います。彼らと共にゼオラジム陛下に謁見し、同行を認めていただいております。つまりヤクノサニユ人でこそありませんが、正式に使者団の一人。部外者ではありません」


 怯むことなく堂々と答えるレピに、ロガーメーポは不快そうに眉根を寄せる。


「マキューロ人でありながら…他国の使者だと?」


 ロガーメーポが眉間のシワを深くしながら吐き捨てると、レピは涼しい顔で続けた。


「マキューロを出て以降も同行させていただくつもりです。ワユギシヘサイにも…もちろんティサンにも、笑顔で和睦を訴えに」

「貴様…」

「和睦を訴えに行って周囲を睨みつけていては、誰も話など聞いてくれないでしょう?」

「レピさん…」


 レピは力強く、清々しい表情で"笑顔でティサンに行く"と言い切った。

 シェリルから受けた"説教"を引用し答えを出したレピに、シェリルは思わず、小さく笑みを溢す。


「忘敬者め…!」

「僕自身はそんなつもりありませんが…ムータオヒカ卿の視点からなら、大半のマキューロ人はそう映るのでしょうね。──まぁ、どちらでも構いません。忘敬者と呼びたいのならお好きになさるがいいでしょう。僕の思想がどうであろうと、今すべき話は変わりませんので」


 刺すようなロガーメーポの視線に臆せず、レピは堂々と答え、切り返した。


「ムータオヒカ卿、僕からもご質問させていただきます。そこまで頑なに連合を拒絶し、"忘敬者"を拒絶する理由はなんでしょうか」

「なに…?」


 生意気にも質問を返すレピに、ロガーメーポは心底不快そうな表情を見せる。


「ここまでのお話を聞いていて、他の面々とも視座が違うように感じました。よもや殲滅を唱える程とは…。何故、そこまでに変化を拒絶なさるのですか」

「…」

「ひょっとしたら、ムータオヒカ卿だけが知る何(・)か(・)がそうさせるのでしょうか。例えば…"禁じられた魔法"」

「黙れ!!」


 レピがこの場で二度、口にしたその単語に、ロガーメーポはすかさず声を荒らげた。


「本来この場に立ち入る資格も持たぬ若造が…黙って聞いておれば偉そうな事を…!」

「お言葉ですが、過半数の"是"を頂き、元(・)老(・)院(・)から許しをいただいております」

「おのれ貴様、言わせておけば…!!」


 "元老院の一員と一国民"という立場の差を強調するロガーメーポに対しレピは、より上位である組(・)織(・)と(・)し(・)て(・)の(・)元(・)老(・)院(・)からの許可を振りかざす。


「見苦しいぞムータオヒカ。いちいち喚くな、そやつの言う通りだ」

「なっ…ディアモス卿…!」


 ボォンクレェドは思う所ある様子ではあるが、静かに首を左右に振る。


「"決"は絶対。ジスタムとメジャルカ…そしてマキュラ卿が"是"とした以上、彼等はこの場に留まる、正当な権利を有する客(・)だ。口を慎め」

「く…う…っ!!」


 その最中、ガガーニムとクレンは密かに視線を送り合い、頷き合った。

 ロガーメーポの過剰とも思える反応を受け、二人は彼の思想の根底に"禁じられた魔法"が関係している事を確信していた。

 ともすれば、"人造魔物"の製造にも…。


「ディアモス卿はどうお考えでしょう」


 二人が意思疎通を図っている事を察したレピは"スウォルくんを、みすみす利用させない"とでも言わんばかりに、敢えてロガーメーポから話の矛先を変えた。


「…レピ殿」

「へぇ…♪」


 クレンが意味ありげに吐息を漏らす中、僅かに表情を曇らせるガガーニムに対し、レピは無言で小さく会釈して見せた後、再びボォンクレェドに視線を移す。


 ロガーメーポから情報を引き出したいガガーニムだったが、強引に話を戻しては"ヤクノサニユからの和睦の打診に応じさせる"という表(・)の(・)目(・)的(・)には不自然だと考え、言葉を飲み込んだ。


「先程までのお話を鑑みるに、損益を重視するなら拒絶する理由は薄いように感じるのですが」


 ここまでの話で"実利"を重んじていると見たマベレムギリアにも聞かせるように"損益"という単語を用いたレピに、ボォンクレェドは重々しく口を開く。


「確かに、損益で言うのなら…応じるべきであろうな」

「でしたら──」


 先程のスウォルに続き、今度こそ過半数を得たと喜ぼうとするシェリルの前にレピが手をかざして制し、ボォンクレェドに尋ねた。


「断る理由が、損益とは他にある…と?」

「守るべきは古くから脈々と受け継がれた、偉大なる豊かな自然と…そこに生まれ、生きてきたマキューロ人としての矜持」

「矜持、ですか」

「…忘敬者共は、既に失っておるようだがな…」


 悲しみ、悔しさ、寂しさ…そのいずれともつかない、あるいは全てが複雑に混ざり合ってか、俯いて小さく呟くボォンクレェドに、レピは質問を重ねる。


「連合に応じる事が、すなわち自然や矜持を失う事になるとお考えですか」

「ヤクノサニユやティサンとの同盟に応じ、交わった事を契機に忘敬の思想が生まれ、広がり…マキューロは狂った。予測ではない、既に歴史が証明しているのだ」

「…」

「確かにあの時、三国同盟を受け入れた事でハリソノイアに抵抗する力を得て、マキューロは生き延びた。だがそれによりマキューロは…現在に至るまで、少しずつ時間を掛け、在るべき姿を失おうとしている…」


 ボォンクレェドは言葉を区切り、躊躇う様子を見せた後、絞り出す様に続けた。


「あの時、同盟を拒絶すべきだったのかもしれぬ。その結果、ハリソノイアに滅ぼされていたとしても…マキューロが姿を変えるくらいなら、マキューロのまま滅んでおくべきだったのかもしれぬ…」


 場の全員の視線がレピとボォンクレェドに集中する中、スウォルだけが横目でチラチラと、難しい表情で、リリニシアの横顔を盗み見ていた。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は10月26日19時頃にXでの先行公開を、27日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

悔恨を滲ませるボォンクレェドに食ってかかるガガーニムだが、ボォンクレェドはアッサリと受け流す。

"マキューロを元に戻す"という意味では有効と思われるロガーメーポの殲滅案に乗らなかった理由を尋ねられ──。


次回「人類に必要なモノ」

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