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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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104/107

#104 ヤクノサニユという国

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


noteにて、文字数を1/3以下に抑え、かつ「これだけ読めば話が追える」という情報量を目指して本作を要約したあらすじを公開しています。


初めての方はお試しとして、既にお読みいただいている方は復習などに、是非ご活用ください。


https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

特例を求めるガガーニムの主張を認め、マベレムギリアは部外者である使者団が議場に立ち入ることを"是"とし、ロガーメーポ、ボォンクレェドを退け可決された。

マベレムギリアは続けて、"ヤクノサニユからの提言についての審理に移る"と宣言する。

 マベレムギリアの宣言により、ヤクノサニユからの提言──本題である"ハリソノイアを含めた、すべての国での和睦"に話が移ると、静かな洞窟内の空気が一層張り詰めたように、勇者一行には感じられた。


「ジスタム卿」

「はい」


 そんな空気の中、マベレムギリアは改めてガガーニムを呼び、問い掛ける。


「汝はどう考える」

「伺うところ、この打診を行なったのはハリソノイアに続き、マキューロで二ヶ国目とのこと。ワユギシヘサイやティサンがどう出るかは不透明ですが…現時点における、私めの個人的な見解としては──歓迎すべきであろうと考えます」

「根拠を示せ」


 淡々と質問を重ねるマベレムギリアに、ガガーニムもまた、淡々と答え続けた。


「先程もお話がありましたが、マキューロとヤクノサニユ、そしてティサン…。三国はハリソノイアに対抗する為に手を結びました。ヤクノサニユの仲介があったとはいえ、古くから相容れなかったと聞くマキューロとティサンが結ばねばならぬ。──それだけハリソノイアの脅威が大きかったという証左に他なりません」

「ふむ」


 饒舌に語るガガーニムと対照的に、マベレムギリアはただ一度頷いて答えるだけ。

 しかしガガーニムは怯むことなく、言葉を紡ぐ。


「そのハリソノイアが変わろうというのなら、敢えて拒絶する理由が存在しません」

「マキュラ卿」

「…ムータオヒカ卿。申せ」


 ロガーメーポは騒ぎ立てず、静かに手を挙げた。


「先程の話によれば、彼等がハリソノイアを訪れた時点で、既にユミーナとやらは"和睦と平和"を掲げていたとの事。"ヤクノサニユからの提言"と"ハリソノイアの変化"は関連のない別の事象であり、提言を拒絶したとてハリソノイアの変化を拒絶する事にはなりませぬ」


 "場の空気と共に、ヤツの纏う空気も変わった"。

 政(まつりごと)に疎いスウォルやラツンジパでさえ感じ取ったその変化を、王族たるリリニシアは更に過敏に感じ取っていた。



あの方にとって、ワタクシたちがこの場にいる事が許しがたいのは事実でしょう。

ですが"今、目の前の本題と比べれば些事である"…というのも、おそらく事実なのでしょう。


"些事"において退けられた事で頭が冷え、より大きな"本題"で自らの主張を通す為の戦い方を選んだ…と言ったところでしょうか。


どこまで狙っていたかはともかくクレン様の助けもあり、先程までは与し易そうかとも思っておりましたが…そう簡単には行かなさそうですわね…。



「いえ、無関係ではありません」


 リリニシアの思考を遮り、ガガーニムは反撃に転じる。


「既に話が出た通り、ユミーナ大王の没後、ハリソノイアが従来の方針に立ち戻る事も十分に考えられます。その際…便宜上、今は"連合"と呼ぶ事にしますが、他国が連合に応じマキューロだけが拒否していた場合、ハリソノイアはどう動くと思われますか」

「…」

「我等(マキューロ)を叩き、吸収しようとするだろうな」


 ロガーメーポに代わり、ボォンクレェドがゆっくりと口を開いた。


「如何にもディアモス卿の仰られる通り、おそらくヤクノサニユ・ワユギシヘサイ・ティサンの三国を相手取るとなると、如何にハリソノイアと言えど心許ないでしょう」

「…国土で見ても、元より抑えている北に加え東(マキューロ)を獲得することで、ヤクノサニユに対し二方向から攻める選択肢が生まれる。ハリソノイアが連合と戦おうとするなら、マキューロの吸収は前提と言ってよい」


 苦々しい表情で言うボォンクレェドに、ガガーニムは大きく、ゆっくりと頷く。


「三国同盟を破棄・連合を拒否し、孤立する。…そうなれば、いざハリソノイアの牙が我らに向けられた時、連合はマキューロを救いはしないでしょう」

「…それどころか最悪、ハリソノイアに取り込まれるくらいなら、と──マキューロを滅ぼしに来る可能性すら考えられる…」

「な…そんなこと…!」


 ボォンクレェドの予測に声を揃えて反発しようとしたシェリル、スウォルの肩に、リリニシアが手を置いた。


「…リリニシア?」

「無事にワユギシヘサイやティサンと手を結ぶ事が出来たとしても、ハリソノイアの国土、兵力にマキューロの分が加われば、大きな脅威になる事は間違いありません。何としてでも、それを回避しようと動く事になると思いますわ」

「な…マキューロを滅ぼしてでもか!?」


 次いで口を挟んだラツンジパの問いに、リリニシアは静かに頷く。


「そうしなければ、こちらが滅ぶというのなら」

「はぁ!?」

「仮に連合がマキューロを攻めない場合を想定するなら、ハリソノイアがマキューロを攻め、抵抗している間に、連合が横や背後からハリソノイアを叩くでしょう」

「じゃあなんだよ…?その場合マキューロは…ハリソノイアをぶっ叩く為の餌ってことかよ!?」


 ラツンジパの発した"餌"という単語に、レピとリエネの眉がピクリと上がる。

 レピは推測として、ガガーニムが。

 リエネは本人から聞き、クレンが。


 それぞれ魔物化が進むスウォルを、人造魔物の製造者を釣り上げる為の"餌"として使うつもりだと知っているからだ。


「…そうなるでしょうね」


 リリニシアは二人の些細な表情の変化に気付くこともなく、ラツンジパに答え、続けた。


「連合側から見れば、応じなかった場合のマキューロは…ハリソノイアの隙を突く為の餌か、吸収され得る、排除すべき敵。…そのどちらかだと思いますわ」

「んだよ、それ…!」

「…国と国との政ですので」


 憤りを隠さないラツンジパに、リリニシアは申し訳なさそうに視線を伏せながら、それでもキッパリと言い切る。

 自らの言い付けを破り、勝手に会話を繰り広げる一行に対しガガーニムは、その内容が自身らに有利に働くと見て、咎めることはしなかった。


「であれば──」


 大人しく傾聴に徹していたロガーメーポが、再び口を開く。


「軽々に答えを出さず、他国の動きを見るべきであろう。──既にハリソノイアは、前向きな返答を出した…と言っておったな?」

「え…あ、は、はい」


 突如ロガーメーポに尋ねられ、シェリルは困惑し、言葉に詰まりながら、なんとか肯定した。


「だがワユギシヘサイとティサンへは、まだ伝達すら出来ておらぬ、と」

「…そうです」

「ハリソノイアが変わらず、従来に立ち戻る可能性を踏まえれば、実質どの国とも話が進んでおらぬと言って過言あるまい。ヤクノサニユが何を企んでおるかも分からぬ以上、慎重に検討を重ねねばなりませんぞ」


 ロガーメーポは途中から、マベレムギリアに向き直り弁舌を振るう。


「企みなんて何もねぇ…あ、ないですよ!」


 スウォルが辿々しく言うと、ロガーメーポは鼻で笑った。


「ふん…!企みがある者が、素直にそうは言うまいよ」

「…元老院(貴方たち)は俺たちが嘘ついてたら、分かるんじゃないんですか」

「分かるとも、"嘘"と意識しておればな。だがお主ら自身も騙されておれば話は別だ」


 "自分たちすら騙されている"可能性を示唆され、スウォルは不快感をそのまま表情に現した。


「…誰に騙されるんですか、俺たちが」


 スウォルの問い掛けは、自分に向けられたものではない。


 そう理解していても、レピ、リエネ、リリニシア──。

 謁見の際に感じ取った"王への不信"、ハリソノイアとの戦いに参加したという"父・クーヤイの嘘"、そしてスウォルの"魔物化"…。


 動機が悪意でないとはいえ、騙(・)し(・)て(・)い(・)る(・)心(・)当(・)た(・)り(・)が(・)あ(・)る(・)仲間たちの顔が強張った。


「誰も何も、決まっておろう。お前たちに命を下した張本人、ゼオラジム王よ」


 ロガーメーポは止まらない。

 ここに来て耐えきれず、シェリルも口を挟んだ。


「何を…陛下がそんなことを!」

「くかか…!お前たちが思うておる程、ヤクノサニユは綺麗な国ではないわ」

「…アンタがヤクノサニユの何を知ってんだ!」

「スウォル殿!」

「おい、やめとけ!」


 ここまで一人称が"俺"になる程度で堪えてきたスウォルだったが、とうとう感情に飲まれ、荒い口調で問い詰める。

 ラツンジパが羽交い締めにされたスウォルに、慌てて遮ったガガーニムを無視し、ロガーメーポは言葉を続けた。


「そういうお前たちはヤクノサニユの何を知っておる?」

「なに…?」

「例えばお前たちの父、"クーヤイ"とか言うておったか」

「あぁ、それが?」


 吐き捨てる様に答えたスウォル、そしてじっと自らを見つめるシェリルに、ロガーメーポは次なる質問を投げ付ける。


「そやつ、本当にお前たちと血が繋がっておるのか?」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は10月19日19時頃にXでの先行公開を、20日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

ロガーメーポの問いに、シェリルとスウォルは一瞬、言葉を失うが、すぐに「兵士としてハリソノイアと戦っていた」と切り返す。

だが仲間たちは──。


次回「マキューロの姿」

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