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剣技を放て!  作者: 源平氏
剣の都イージン編
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第45話 ジーファン


 キャンプ地の片隅で爆炎が立ち昇り、マインの身を焼いた。間髪入れず撃ち込まれる投剣は光を放ちながら砕け散り、周囲に炎をまき散らす。


 服に殺気を纏わせ強度を高めているとはいえ、元々が火に弱い布は次第に熱で焦げ付き、爆風にあおられ炭の粉をボロボロとこぼしていた。マインは舌打ちをし煙から飛び出した。そしてジーファンへと距離を詰める。



「うーん、熱なら効くかと思ったのですが、予想以上の防御力ですね」


 ジーファンがコートを翻した。コートの裏地には、無数の投剣。その一本を手に取りマインへと投擲する。マインは体を傾けて射線から逃れるが、先ほど同様に投剣が爆発し炎に飲み込まれた。


「……一体どれだけの魔剣を使い捨てにすれば気が済むの」


 煙が晴れ、両手をクロスさせ防御するマインの姿が顕わになった。マインがジーファンに問い質す。


 ジーファンが先ほどから投擲しているのは全て魔剣。爆発はその魔剣の効果であった。


「僕だってもったいないと思ってるんですよ。なのでいい加減あきらめてくれませんか? 過去のことはお互い水に流しましょうよ。なんで僕を狙うんですか」


 理解できないと言いたげなジーファン。その一言一言がマインの逆鱗をかきむしった。


 ジーファンは魔剣をただの道具としか思っていない。いや、それどころかジーファンにとっては自分以外のすべてが道具なのだ。使えるか使えないか、それしかジーファンは見ていない。


「もったいない……? ふざけないで!」

「分かりませんね。マインさんはこうして無事生きている。なら過去の事は忘れて幸せに暮らせば良かったじゃないですか」


 マインは両足に殺気を巡らせ脚力を強化した。そしてダッシュ。投擲で狙われないよう回避行動をとりながらジーファンへと迫っていった。


 ため息をつきながら投剣を手に取るジーファン。そして自身の剣技を発動させた。



 剣技、オーバーブースト。他の剣技の威力を飛躍させる強化型剣技である。



 オーバーブーストを爆裂の魔剣にかけるジーファン。魔剣はその強化に耐え切れず崩壊を始めた。そして投擲。着弾と同時に剣技が暴走し大爆発を起こした。



「鉄を混ぜて水増しした量産品とはいえ、結構な威力でしょう? 僕の剣技が無ければ花火程度の威力しかないんですけどね。まあ、僕専用の魔剣という訳です」


「なんで! そんなに! 平気でそんな事が出来るの!?」

「せっかくの再会ですし、マインさんも有意義に使ってあげますよ。なにせ魔剣の材料はいつも不足していますから」


 ジーファンが腰の剣を抜いた。直線的な細い刃、レイピアである。透き通るような青みがかった刀身からはジジジ、と電流が迸っていた。それを見たマインが目を見開く。


「その剣……!」

「これですか? 便利なので愛用させてもらってます。これは混ぜ物をしてない一点ものなんですよ」


 ジーファンはそこまで言うと、ある事を思い出し手をポンと叩いた。


「そう言えば、お知り合いでしたね」

「貴様っ!」


 電撃を警戒しマインは身構えた。だが動きを止めたのは失敗であった。ジーファンが刺突を放つ。


「剣技、ショートカット」


 途端、レイピアが強烈な光を放った。放電による閃光、アーク光である。レイピアは雷のごとく空気を割って進み、そしてマインの胸に突き刺さった。



「――――っ!!?」


 幸いにも鋼化が展開してあった事で刺突自体は受け止められた。だが問題は電流。落雷に匹敵する電撃がマインを襲った。皮膚は焼け焦げ、筋肉は痙攣し、意識が遠のく。


「おや、倒れませんか」


 飛びそうになる意識を必死に保ち、マインはなんとか立ち続けていた。ジーファンが怪訝そうな顔を作る。


 マインが倒れずに済んだのは、鋼化が原因だった。体の表面に鋼化を展開していたため電流の大半は体の表面を通り、内臓へのダメージが少なかったのである。


「ジー…ファン!」


 マインが斬りかかる。先ほどの刺突で放電しきってしまったらしく、レイピアには電流が流れていなかった。


 レイピアを弾き、懐へと入り込むマイン。



 的は至近距離。


 右手を大きく引く。


 狙うは心臓。


 時間が引き延ばされる間隔。ジーファンが目を見開いている様子が、マインにはっきりと見えた。


 指をそろえ、鋼化を発動。


 渾身の貫手を放った。





 ガキィン!


 貫手はジーファンの胸に命中し、そして止まっていた。マインが目を見開く。


「チェーンメイル……!?」


 防具など百年前に滅んだ遺物である。剣士にとっては鎧も盾も紙切れ同然。むしろただの重りでしかない。剣技の威力が高すぎて、先に当てた方が勝つと言っても過言ではないという事実が防具を廃れさせていた。


 マインにとっては五体が剣。防具に防がれたという事自体が異常事態であった。


「ゲホゲホッ! ……さすがに衝撃までは防げませんね」


 数歩よろめくジーファン。しかしその結果に大満足といった顔であった。


「でもいい装備でしょう? 魔剣と同じ材料で作ってみたんです。何事も試してみるものですね」


 ジーファンがオーバーブーストをレイピアにかけた。暴走しない程度に強化を調整し、瞬時に電気を溜める。


「ショートカット」


 再度の刺突。そして電撃。それに耐えられず、マインは膝をついたのだった。



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