2・王都での生活は順調。センス以外は
私はバルディーニ家の、王都のタウンハウスで暮らすことになった。
国は、10歳になった子供すべての魔力検査を行い、該当した『訳あり』を、王都の学園に送って教育を施す。
まずは読み書き、常識、礼儀作法などの合間に、魔力の勉強である。魔力操作中心で勉強したいのは山々だけど、まずは常識から身につけないとね。
通常は『訳あり』の親がわからないことが多い。
私のように父親(貴族)がわかっている場合は、その本人または親族が後見人となることが義務付けられている。
学園には寮があり、ほとんどの『訳あり』は、そちらで暮らす。だが稀に、後見人の屋敷から通う子供もいる。
そう、心優しいバルディーニ家の皆さまは、私にお屋敷から学園へ通うことを勧めてくれたのだ。
正直ここより寮がよかった。すっごくそっちがよかった。でも、私は空気が読める子。言えなかった。こっそり泣いた。
学園は制服だったので、お貴族様の服のセンスを確認することは出来なかった。とりあえず、知らんぷり、気が付かないふりをしよう。センスは人それぞれ。私は私、人は人、侯爵家は侯爵家。うん。
とにかく私に出来ることは、真面目に勉強することだ。毎日努力し続けた。
魔力も順調に使えるようになっていった。
手から水が出た時は、感動したなあ。いつかこの力を使って、洗濯とかしてみたい。
少し大人になって、私も貴族の人と交流を始めてはというお話が出た。一応身元が確かなのだ。せっかくだから、自分を売り込んでみては、とのことだ。コネが出来れば、将来そこで雇ってもらえるかもしれないと。叔父様、優しすぎる。
どうも私の父は『ロクデナシ』の二つ名を持つほどの猛者だったようで、その娘なんだから、正直魔法を学んだ後はお別れでも仕方ないと思っていたのだが、本当に叔父様一家は優しい人達だった。
センス以外は……。
特に長女のソニア様はお優しくて、私を妹のように可愛がってくださった。私も調子に乗ってお姉様とお呼びしている。とてもとてもいい人で。
センス以外は……。
ある時、私にもデビュタントのお話を頂いた。もちろん、お断りした。申し訳なさすぎて。でも、優しい叔父様一家に丸め込まれ……。
ドレスは好きなデザインにしていいよと言われた。そこはすごくすごくありがたかった。
デビュタントのドレスの色は白。デザインは、とってもシンプルなものにしてほしいとお願いした。多少はレースとかつけてもらってそれで問題ないと言ったら、ドレス屋さんに呆れた顔をされた。
ぶっちゃけ私にわかるわけないじゃん。
貴族のセンスの見本があれだぞ?
今日も黄金カラーの羽を、叔父様一家全員で背負っているんだぞ?
そんなの真似できるかー!
「すみません、常識の範囲で、普通に無難に安全にお願いしたいのですが……」
「安全?」
ドレス屋さん、なんか引いてた。
*****
そして訪れたデビュタント。これで、貴族の常識がわかる。私の目的がそれになってた。
四人で会場である王城に入った。こんなに多くの貴族の皆さんに会うのは初めてだった。
皆さん、そのー……。私的には、普通ってこういう色だよね、な服装だった。
あと貴族の皆さんが、うちの侯爵家の方々と対面したときの様子なんだけどね。
まずは侯爵家の皆さんの顔を見る。全身を見る。うん、と納得する。空気を読む。それから「んまあ〜、侯爵様、お久しぶりですわ〜」と、挨拶をする。
よかった、私の感性は普通だった。違うのかとずっと悩んでいた。
皆さん、えって顔してた。
だよね、だよね。
今日の侯爵家の皆さんも、全員黄金の羽を背負ってた。服の色は叔父様が赤、あと頭にトサカが乗ってた。ニワトリのやつ。
叔母様が泥色に濃厚なピンクの大きな水玉。ソニアお姉様は、金と赤のストライプのドレスだった。線がぶっとい。
どうしよう。この中を一緒に歩くの、すんごく辛い。
叔父様が皆様に私を紹介してくださるけど、皆様の目が痛い。
お前もか?お前もそのセンス持ちなんか?デビュタント終わったら、お前も着るんかって、目が訴えている。
違います、着ません、って目で返しておいたけど、多分わかってない。そうか、お前もかーって顔してた。
違うのよおおおおお。
やがて舞踏会が始まって、国王陛下とそのご家族様がやってこられた。平民の自分が陛下にご挨拶って、すごいことだわ。いつか帰ったら、両親に自慢しよっと。
第一王子のリディオ・バルネヴェルト殿下は、王子妃様を募集中らしい。
ま、とは言っても候補者は数名おられる。うちのソニアお姉様も候補者らしい。子供の頃は仲良しだったそうで、ソニアお姉様がかなり有力って噂だったらしいけど、最近他のご令嬢が有力らしい。
だって、お姉様が王妃になると、トレンドが変化する。すごいドレスが流行ること間違いない。しかも、みんな血の涙を流しながら着こなすのよ。
王子も空気読んで、婚約者決定していないとのことらしい。知らんけど。
私も叔父様と一緒に踊って、今日の予定はおしまい。あとは美味しいものを沢山食べるのよ。こぼさないようにしないと、侍女頭に怒られる。白い服だし。
いそいそテーブルの方へ向かう途中で、三人組の怖そうなお姉様達を見かけた。
「ご覧になって、相変わらずのセンス」
「侯爵家でなければ、笑い物ですわね」
「あれで王妃候補だなんて。ファッションの見本となるべきお方に、なれるはずございませんわあ、おっほっほ」
豪快な笑いだな。なんか尊敬するわ。
確かバネッサ・モラレス侯爵令嬢だったか。覚えておこっと。




