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第八話 初めての実技授業

朝日が演習場を照らしていた。


探索者育成学園には、実際のダンジョンを再現した広大な訓練施設がある。


一年A組の生徒たちは、木剣や訓練用の盾を手に、緊張した面持ちで整列していた。


鬼塚剛教官は腕を組み、生徒たちを見渡す。


「今日から実技だ。」


「だが安心しろ。本物の魔物とは戦わせん。」


教官が指を鳴らすと、奥のゲートがゆっくりと開いた。


中から現れたのは、人型の訓練用ゴーレムだった。


「こいつらは訓練専用だ。」


「壊されても修復できる。」


「遠慮なく叩き潰せ。」


教室では明るかった生徒たちも、一気に緊張する。


「まずは一人ずつだ。」


最初の生徒が前へ出る。


剣士Lv6。


勢いよく斬り込み、見事にゴーレムを倒した。


「いいぞ。」


鬼塚が短く評価する。


続く生徒たちも、それぞれの実力を見せていく。


「次。」


「神代悠真。」


悠真は静かに前へ出た。


鬼塚が手元の端末を確認する。


その瞬間、眉がわずかに動いた。


「……珍しいな。」


「どうしたんだ?」


前列の生徒が尋ねる。


鬼塚は隠すことなく答えた。


「神代。」


「個人レベル……1。」


その一言で、演習場が静まり返った。


「え?」


「レベル1?」


「嘘だろ?」


「入学できるのか?」


ざわめきが広がる。


悠真は何も言わない。


慣れていた。


これから先も、何度も同じ反応をされるだろう。


鬼塚だけは冷静だった。


「静かにしろ。」


その一声で空気が引き締まる。


「レベルは参考記録だ。」


「戦ってみなければ分からん。」


鬼塚は木剣を悠真へ投げた。


「始めろ。」


悠真は剣を受け取る。


深呼吸。


相手は訓練用ゴーレム。


ゆっくりと構える。


(本で読んだ通り……。)


右足を半歩引く。


肩の力を抜く。


呼吸を整える。


ゴーレムが突進してくる。


悠真は慌てない。


最小限の動きで身体をかわし、木剣を振る。


「……!」


ゴーレムの腕を正確に叩く。


バランスを崩したところへ、もう一撃。


ゴーレムは大きくよろめき、その場に膝をついた。


完全に倒すことはできなかった。


しかし。


「ほぅ……。」


鬼塚が初めて興味深そうな表情を見せる。


「今の動き。」


「誰に習った?」


悠真は首を振る。


「独学です。」


鬼塚の目が細くなる。


「独学、か。」


周囲の生徒たちもざわついていた。


派手ではない。


強くもない。


だが、無駄がなかった。


「今日はここまで。」


鬼塚が訓練を終える。


生徒たちが演習場を後にする中、一人だけ悠真へ近付く人物がいた。


長い黒髪を後ろで束ねた少女。


図書館で悠真を見ていた人物だった。


彼女は少し考えるように悠真を見つめ、静かに口を開く。


「……あの。」


「剣、すごく丁寧でした。」


それだけ言うと、少し恥ずかしそうに頭を下げて去っていった。


悠真はその背中を見送りながら、小さく首をかしげた。


「……誰だろう。」


その小さな出会いが、未来を大きく変えることになるとは、まだ誰も知らなかった


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