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第七話 探索者育成学園

四月。


桜の花びらが風に舞う。


東京都探索者育成学園。


全国から探索者候補生が集まる、日本最大の養成機関。


巨大な正門を見上げながら、悠真は静かに息を吐いた。


「……大きいな。」


校舎というより、一つの街だった。


訓練場。


演習場。


鍛冶工房。


錬金研究棟。


図書館。


模擬ダンジョン。


探索者を育てるための施設が、すべて揃っている。


『ここで三年間学ぶことになる。』


アーカスの声が、頭の中に響く。


「……少し緊張します。」


『それが普通さ。』


悠真は受付を済ませ、教室へ向かった。


一年A組。


教室の中はすでに賑やかだった。


「俺、Lv8だった!」


「すげぇ!」


「将来はS級探索者だな!」


「私は回復系スキルだったよ。」


笑い声が飛び交う。


悠真は静かに一番後ろの窓際へ座った。


その方が落ち着く。


やがて担任らしき男性が入ってくる。


四十代くらいだろうか。


短く刈り込んだ髪。


引き締まった体。


歴戦の探索者だと、一目で分かった。


「静かに。」


教室が一瞬で静まり返る。


「俺は一年A組担任。」


「元A級探索者。」


鬼塚おにづか ごうだ。」


教室がざわつく。


「本物のA級……。」


鬼塚は腕を組み、生徒たちを見回した。


「お前たちは、自分が特別だと思ってここへ来た。」


「だが。」


「この学校では、レベルなんて何の保証にもならん。」


その一言に、悠真は少しだけ顔を上げた。


鬼塚は続ける。


「才能だけで生き残れるほど、ダンジョンは甘くない。」


「仲間。」


「判断力。」


「経験。」


「全部必要だ。」


「勘違いするな。」


「お前たちは全員。」


「まだ新人だ。」


教室が静まり返る。


鬼塚は満足そうに頷いた。


「よし。」


「まずは自己紹介だ。」


前の席から順番に始まる。


「佐藤です!」


「目標はS級探索者!」


拍手。


「田中です!」


「剣士です!」


笑顔。


次々に終わっていく。


やがて。


「神代。」


悠真の番になった。


静かに立ち上がる。


教室中の視線が集まる。


「神代悠真です。」


「よろしくお願いします。」


……終わりだった。


数秒。


沈黙。


「終わり?」


誰かが小さく笑う。


悠真は少しだけ困った顔をした。


話すのが苦手だった。


鬼塚だけは何も言わなかった。


「座れ。」


短く言う。


その視線だけが、少しだけ優しかった。


(無理をしなくていい。)


そんな風に言われた気がした。


その日の放課後。


悠真は誰よりも早く図書館へ向かっていた。


「すごい……。」


数十万冊の専門書。


魔物図鑑。


魔法理論。


鍛冶。


薬草。


歴史。


思わず目を輝かせる。


「ここなら……。」


時間を忘れて学べる。


自然と笑みがこぼれる。


その様子を、本棚の陰から誰かが見つめていたことに。


悠真は、まだ気付いていなかった。


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