第67話 再突入
翌朝。
探索者学校。
まだホームルーム前だというのに、
鬼塚教官は教室へ入ってきた。
「神代。」
「藤堂。」
「白石。」
「職員室へ来い。」
突然の呼び出しに、
教室がざわつく。
三人は顔を見合わせ、
静かに席を立った。
◇ ◇ ◇
職員室。
鬼塚だけではなかった。
そこには、
黒崎レオンも立っていた。
漣が思わず姿勢を正す。
雪乃も軽く頭を下げる。
黒崎は軽く手を上げるだけだった。
鬼塚が切り出す。
「昨日。」
「調査隊が深緑の森へ入った。」
三人は黙って聞く。
「そして。」
「森の最奥で遺構を発見した。」
悠真の胸がわずかに高鳴る。
鬼塚は机の上へ一枚の写真を置いた。
石造りの壁。
そこに刻まれていたのは、
見覚えのある紋様だった。
零落の指輪。
その内側に刻まれているものと、
まったく同じ紋章。
悠真は思わず息を呑む。
鬼塚はその様子を見逃さなかった。
「知っているな。」
悠真は少しだけ迷う。
そして、
静かに頷いた。
「……はい。」
「この紋章は。」
「俺の指輪にもあります。」
部屋が静まり返る。
黒崎が写真を手に取る。
「偶然とは思えないな。」
鬼塚も腕を組む。
「だから呼んだ。」
「今回の調査。」
「神代、お前にも同行してもらう。」
悠真は目を見開いた。
「俺が……。」
鬼塚は力強く頷く。
「戦力としてじゃない。」
「この遺構は。」
「お前の指輪と関係している可能性が高い。」
「確認する価値がある。」
悠真は静かに拳を握る。
「分かりました。」
その返事を聞いた鬼塚は、
漣と雪乃へ視線を向けた。
「藤堂。」
「白石。」
「お前たちも同行だ。」
漣は驚く。
「俺たちもですか?」
「神代一人では帰って来られん。」
鬼塚は即答した。
「仲間だろ。」
短い言葉だった。
だが、
三人には十分だった。
「はい!」
三人の声が重なる。
黒崎が小さく笑う。
「いい返事だ。」
「だが勘違いするな。」
その笑みが消える。
「今回の目的は討伐じゃない。」
「調査だ。」
「俺が前に出る。」
「鬼塚教官が全体を指揮する。」
「お前たちは俺たちの後ろから離れるな。」
「分かったな。」
「はい!」
◇ ◇ ◇
その日の午後。
調査隊は協会前へ集結した。
現役探索者。
教官。
支援班。
総勢二十名。
その中央に、
悠真たち三人がいた。
鬼塚が最後の確認を行う。
「目的は遺構の調査。」
「未知の敵と遭遇した場合。」
「戦闘は黒崎へ任せろ。」
「勝手な行動は禁止。」
「全員、生きて帰る。」
「以上だ。」
調査隊は一斉に歩き始める。
深緑の森。
昨日とは違う。
森が、
何かを待っているようだった。
悠真の左手。
零落の指輪が、
静かに熱を帯び始める。
その熱は、
森の奥へ進むほど強くなっていった。




