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第53話 最初の一振り

個人空間。




新しく現れた鍛冶場。




炉の中では、赤く熾った炎が静かに揺れていた。




悠真は金床の前へ立つ。




その視線の先には、


青白く輝く魔力循環金属。




一年を費やして生み出した、


世界に一つしかない素材だった。




「ここからが、本番だ。」




悠真は炉へ金属を入れる。




「ポム。」




「ぷる!」




ホームスライムとなったポムは、


炉の横へぴょんと跳ねた。




小さな身体から、


淡い魔力が流れ出す。




すると、


炎の色が変わった。




赤だった炎が、


淡い蒼へと変化する。




「……温度が安定した。」




悠真は驚く。




「これもホームスライムの力なのか。」




ポムは得意そうに胸を張った。




「ぷる!」




悠真は笑う。




「頼りになるな。」




十分に熱した金属を取り出す。




真っ赤に輝く素材を、


金床へ置く。




金槌を握る。




その重みが、


手に伝わる。




鍛冶は初めてだ。




だが。




熟練度だけは、


一年間積み重ねてきた。




「いくぞ。」




カン――。




最初の一打。




重い音が、


鍛冶場いっぱいに響いた。




二打。




三打。




四打。




少しずつ。




金属が形を変えていく。




悠真は夢中だった。




何度も温め。




叩き。




冷やし。




また温める。




時間を忘れる。




ポムは、


そのたびに炉の炎を調整していた。




「ぷる!」




炎が強くなる。




「ありがとう。」




再び槌を振る。




何時間経っただろう。




ようやく、


一振りの短剣が姿を現した。




派手な装飾はない。




黒に近い銀色の刀身。




柄も質素。




見た目だけなら、


どこにでもある短剣だった。




しかし。




悠真が握ると、


刀身に淡い青い筋が走る。




「……!」




魔力が流れている。




悠真は小さく魔法を発動した。




《ライト》




掌に小さな光が灯る。




普通なら、


魔力は減る。




しかし。




数秒後。




短剣から、


ゆっくり魔力が戻ってきた。




「成功だ。」




思わず息を吐く。




「まだ少しだけど。」




「ちゃんと循環してる。」




ポムは飛び跳ねた。




「ぷるーー!」




悠真は短剣を見つめる。




「名前……。」




少し考える。




「まだ早いか。」




「もっと強くなってから。」




「その時に付けよう。」




ポムは嬉しそうに頷いた。




すると。




短剣の表面へ、


小さな文字が浮かび上がる。




製作者


神代悠真




悠真は目を見開く。




「……?」




さらに、


その下へ新しい文字が現れる。




適合者


神代悠真




そして最後に、


一瞬だけ文字が現れて、


すぐ消えた。




成長可能




悠真は気付かなかった。




だが、


その短剣は。




世界で初めて、


主人と共に成長する装備として産声を上げた。




鍛冶場の片隅で、


アーカスが静かに微笑む。




「やはり……。」




「レベルシステムの外側か。」




「面白い。」




そして、


その視線はダンジョンの彼方へ向けられた。




「ネメシス。」




「お前も、もう気付いているだろう。」




誰にも聞こえないその呟きは、


静かに闇へ溶けていった。


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