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第四十五話 目覚める才能

存在しないはずの第八階層。




三人と一匹は、慎重に進んでいた。




本来なら。




特別探索実習の範囲を超えている。




戻るべきだった。




しかし。




「……。」




悠真は前を見る。




この場所には何かある。




偶然ではない。




ダンジョンが変化した理由。




それを確かめる必要がある。




「危険なら、すぐ戻る。」




悠真が言う。




漣が頷く。




「分かってる。」




雪乃も頷く。




「無理はしません。」






以前なら。




悠真は一人で判断していた。




でも今は違う。




三人で決める。






しばらく進んだ先。




広い空間へ出る。






中央。




巨大な魔物がいた。






ゴーレム種。




しかし。




通常のものとは違う。




岩の身体。




濃密な魔力。




そして。




動くたびに地面が揺れる。






「……。」




漣が剣を握る。




「俺が行く。」






悠真が止める。




「待って。」






「何かある。」






ゴーレムを見る。






動きが遅い。




でも。




攻撃範囲が広い。






一撃でも受ければ危険。






「漣。」




「正面から受けないで。」






漣は少し笑う。




「分かってる。」






その返事に。




悠真は少し驚く。






以前の漣なら。




「大丈夫だ。」




そう言って突っ込んでいた。






しかし今は。




理解している。






自分が倒れることは、


仲間を危険にする。






「行く。」






漣が走る。






ゴーレムの拳。






巨大な攻撃。






しかし。






漣は避ける。






いや。






最小限の動きで流す。






拳が地面を砕く。






その隙。






漣は腕へ斬撃。






「硬い……!」






傷は浅い。






普通なら。




ここで力勝負になる。






しかし。






漣は違った。






攻撃する場所を変える。




関節。




魔力の流れ。




動きの起点。






「……。」






悠真は気づく。






漣は。




自分で相手を見ている。






指示を待っていない。








「漣!」






「分かってる!」






二度目の攻撃。






同じ場所。






今度は違う。






魔力の流れが乱れる。






ゴーレムの動きが止まる。






「今だ!」






雪乃が前へ出る。








以前の雪乃なら。




ここで大きな魔法を使った。






しかし。






今は違う。






魔力を一点へ集中。






小さな魔法陣。






複数展開。






「ファイアランス。」






一本。




二本。




三本。






炎の槍が同時に飛ぶ。






狙いは全て同じ。






漣が作った弱点。






轟音。






ゴーレムの身体に亀裂が走る。






「……!」






雪乃自身が驚く。






こんな精密な魔法。




以前の自分にはできなかった。






でも。






戦場を見る。




仲間を見る。




必要な場所へ魔力を使う。






それだけで。




魔法は変わった。






ゴーレムが動く。






最後の抵抗。






しかし。






「遅い。」






漣が踏み込む。






剣に魔力を込める。






一撃。






今までとは違う。






力任せではない。






全てを合わせた一撃。






ゴーレムが崩れる。








静寂。








「……勝った。」




雪乃が呟く。






漣は剣を見る。






「今の……。」






「俺の攻撃じゃないみたいだった。」






悠真が答える。






「漣が変わったからだと思う。」






「前は強い攻撃を探していた。」






「でも今は。」






「勝つための攻撃を選んでる。」






漣は少し笑う。






雪乃も自分の手を見る。






「私も。」






「魔法の威力ではなく。」






「どう使うかを考えられました。」








その時。






教官の探索端末に表示が出る。






【藤堂漣】


戦闘評価更新。




【白石雪乃】


魔法制御評価更新。






二人の成長。




それは数字にも表れていた。






しかし。






一人だけ。






変化がない者がいた。






【神代悠真】




レベル1。




職業レベル1。






表示は何も変わらない。






漣がそれを見る。






「……。」






「なあ、悠真。」






「お前、本当に成長してないのか?」






悠真は首を傾げる。






「たぶん。」






「ステータスは変わってない。」






漣は笑う。






「変なの。」






「一番変わってるの、お前なのにな。」






悠真は答えられなかった。






自分では分からない。






でも。






仲間が強くなったこと。






それは嬉しかった。


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