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第四十三話 それぞれの強さ

中級ダンジョン。


第六階層。




特別探索実習も後半に入っていた。




ここまでの探索で、三人は多くの魔物と戦ってきた。




初めは苦戦していた相手。




判断に迷った場面。




危険な状況。




それらを一つずつ乗り越えることで、三人の動きは少しずつ変わっていた。




悠真は気づいていた。




成長しているのは、自分だけではない。






「来る。」




藤堂漣が足を止める。




暗い通路の奥。




複数の気配。




「数は?」




雪乃が静かに聞く。




悠真は周囲を確認する。




足音。




魔力の流れ。




気配の位置。




「三体。」




「正面に二体。」




「右側から一体。」




漣が剣を抜く。




「分かった。」




そして、少し間を置いて続ける。




「俺が前に出る。」




「でも、無理に倒そうとはしない。」




悠真は少し驚いた。




以前の漣なら。




強い敵ほど正面から突破しようとしていた。




自分の力で押し切る。




それが漣の戦い方だった。




しかし今は違う。




「雪乃の魔法が届く位置まで引きつける。」




「悠真、危険なら指示を頼む。」




自然に仲間を信頼している。




それが大きな変化だった。




「来る。」




魔物が姿を現す。




漣が前へ出る。






剣と爪がぶつかる。




重い衝撃。




「……!」




漣の腕に負荷がかかる。




しかし、以前のように力で押し返そうとはしない。




受け流す。




位置を変える。




敵の動きを誘導する。






悠真は見ていた。




漣は強くなった。




でも、それだけではない。




戦い方が変わった。






「漣!」




「分かってる!」




魔物の攻撃を受けながら、漣は後ろへ下がる。




その場所。




雪乃の魔法範囲。






「今です!」




雪乃が魔法を放つ。






以前の雪乃なら、大きな火球を撃っていた。




威力で押し切る魔法。




しかし。




今は違う。




小さな魔法陣。




少ない魔力。




高い精度。






「ファイアランス。」




炎の槍が飛ぶ。




狙いは敵の足元。




倒すためではない。




動きを止めるため。






魔物の動きが一瞬止まる。






「今!」




漣が踏み込む。




一体撃破。






残りの魔物が雪乃へ向かう。




しかし。




「右へ!」




悠真の声。




雪乃は迷わず動く。




攻撃が空を切る。






「ありがとうございます。」




「ううん。」




悠真は首を振る。




「今の判断は雪乃さん自身だよ。」






雪乃は少し驚く。






以前なら。




自分は強い魔法を撃つことしか考えていなかった。




でも。




戦場では。




必要な力を必要な場所で使うことが大切。






最後の魔物へ。




ポムが動く。




「ぷる!」




小さな体で敵の注意を引く。






漣が攻撃。




雪乃が援護。




悠真が指示を出す。






三人と一匹の連携。






戦闘終了。






静かな空間。






「……。」






漣が剣を収める。




「前より戦いやすかったな。」






雪乃も頷く。




「はい。」






悠真を見る。




「悠真さんがいるから、というだけではなく。」




「私たち自身も変わってきた気がします。」






漣が笑う。




「俺もそう思う。」






「前は、強い敵なら倒すことだけ考えてた。」




「でも今は。」




「どうすれば全員で勝てるかを考えてる。」






悠真は頷く。




「それが強さだと思う。」






レベル。




ステータス。




数字で表される能力。






それだけではない。






戦い方。




経験。




仲間との信頼。






それらも強さになる。








その夜。






ダンジョン深部。






人間が決して訪れることのできない場所。






壁。




地面。




魔物。




すべてが繋がる場所。






そこには、一つの生命の意識が存在していた。






ダンジョン。






長い年月。




この世界を見続けてきた存在。






人間。






それは侵入するもの。




奪うもの。




破壊するもの。






そう記憶していた。






しかし。






今回の侵入者たちは違った。






魔物を倒す。




素材を集める。




それでも。




そこにあるものを理解しようとしている。






特に。




あの少年。






神代悠真。






弱い。




そう判断した。






しかし。






奇妙だった。






足りないものを嘆かない。




持たない力を求めるだけではない。






自分にないものを。




作ろうとしている。






ダンジョンには理解できなかった。






人間とは。




与えられた力で争う存在だったはず。






なのに。






この少年は。




不足を理由に諦めない。






その姿は。




長い年月見てきた人間とは違っていた。






ダンジョンの奥深く。




小さな変化が生まれる。






敵意ではない。






興味。






初めて感じる感覚。






なぜ。






なぜ、この存在は。




自分の中で変化している。






まだ答えはない。






しかし。






ダンジョンは覚えた。






神代悠真という存在を。








さらに深い場所。






その変化を感じ取る存在がいた。






「……始まったか。」






世界管理者アーカスとは対になる存在。






ネメシス。






まだ姿を現すことはない。






しかし。






ダンジョンに生まれた小さな変化を。




確かに感じ取っていた。


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