第四十一話 数字では測れない戦い
第五階層。
暗い通路の先。
現れた魔物は、通常の個体とは明らかに違っていた。
大型化した体。
鋭い爪。
そして。
何より異質なのは、その目だった。
ただ侵入者を襲う魔物の目ではない。
まるで。
こちらを観察している。
「……。」
悠真は無意識に息を止める。
「どうした?」
漣が聞く。
「分からない。」
悠真は魔物から視線を外さない。
「でも……普通じゃない。」
雪乃が小声で言う。
「鑑定では?」
悠真は端末を見る。
表示された情報。
【種族】
ハイゴブリン・変異種
【危険度】
C+
しかし。
それだけ。
「情報が少ない。」
悠真が呟く。
漣が剣を構える。
「なら、やることは一つだ。」
「いつも通り。」
三人は自然に配置につく。
前衛。
漣。
後衛。
雪乃。
中央。
悠真。
そして。
ポム。
「ぷる!」
魔物が動く。
速い。
漣が迎え撃つ。
剣と爪がぶつかる。
「重い……!」
一撃。
それだけで腕に衝撃が走る。
「漣!」
「大丈夫!」
漣は踏ん張る。
しかし。
押されている。
レベル差。
純粋な能力差。
それは簡単には覆せない。
雪乃が魔法を放つ。
火球。
命中。
しかし。
効きが浅い。
「硬い……!」
悠真は見る。
攻撃力では勝てない。
魔力量でも勝てない。
なら。
どこを見る?
相手の弱点。
動き。
癖。
魔物が腕を振る。
漣が避ける。
次の攻撃。
悠真は気づいた。
「漣、三歩下がって!」
「え?」
「今!」
漣が反射的に下がる。
直後。
魔物の爪が地面へ突き刺さる。
「……!」
動きが止まる。
ほんの一瞬。
しかし。
十分だった。
「雪乃さん!」
「はい!」
魔法発動。
火球ではない。
小さな炎の槍。
一点集中。
魔物の関節部分へ。
命中。
動きが鈍る。
漣が踏み込む。
「これで!」
剣撃。
魔物が後退する。
しかし。
まだ倒れない。
「硬い……。」
漣が息を整える。
悠真は考える。
正面からでは無理。
力比べでは勝てない。
なら。
「ポム。」
「ぷる?」
「できる?」
ポムが少し震える。
怖い。
でも。
悠真を見る。
「ぷる!」
走る。
魔物の足元へ。
小さな体。
大きな敵。
普通なら意味がない。
しかし。
ポムは知っている。
悠真のためなら。
動ける。
体を変化させる。
粘着性を高める。
一瞬。
魔物の足が止まる。
「今!」
三人が同時に動く。
漣の一撃。
雪乃の魔法。
悠真の補助。
連携した攻撃。
魔物が倒れる。
静寂。
「……勝った。」
雪乃が呟く。
漣は剣を収める。
「能力差はあった。」
「でも。」
「勝てたな。」
悠真は倒れた魔物を見る。
不思議な感覚。
ステータスでは。
自分たちは不利だった。
でも。
結果は違った。
理由は分かっている。
一人では勝てなかった。
仲間がいたから。
そして。
それぞれが、自分の役割を理解していたから。
「……。」
悠真は小さく笑う。
レベルでは測れないもの。
確かに存在する。
その時。
ダンジョンの奥。
何かが反応した。
魔物の情報。
戦闘記録。
侵入者データ。
本来なら消えるはずの記録。
しかし。
一つだけ残る。
【神代悠真】
【解析不能】




